見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界の映画専門家レビュー一覧

見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界

スウェーデン出身の画家ヒルマ・アフ・クリントを巡るドキュメンタリー。19世紀後半から20世紀前半にかけて抽象的絵画の先駆者として活躍しながらも、自らの死後20年間、作品の公表を禁じ、最近にわかに注目を集めるようになったその素性を解き明かす。監督のハリナ・ディルシュカは、これが長編デビュー作となる。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    ヒルマ・アフ・クリントって変な女の人だったんだと思う。結婚とか家族とか関係なくて、ひたすら絵を描くことに没頭して、他のことはどうでもいい。残された抽象画は、変なユーモアがあって面白い。女性だからその頃の美術史には残らなかったとか知らなかったことを知る。想像するしかないが、変な女の人で、おもろい人だったのではないか。写真の彼女を見てそう思う。家族とか世間から変人と言われ続け、それでもそうするしかない芸術家の寂しさみたいなものに触れた気がする。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    映画を見るまでヒルマ・アフ・クリントの世界を知らなかった。数多くの彼女の作品が映画の中にも登場し、見れば見るほど魅了されていく。色使い、繊細で大胆な一本一本の線が織りなすカーヴの美しさ。いまはぜひ、目の前で彼女の画を浴びるように見てみたいという欲求が止まらない。ヒルマの存在はこれまでの美術史の根底を揺るがすものだ。この映画はこれまでの歴史を覆そうとする挑戦的な試みをしている。ヒルマだけでなくハリナ・ディルシュカ監督のことも追ってみたい。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    ヒルマ・アフ・クリフトは、カンディンスキーに先駆けて抽象画の可能性を開いた。美術史家や親族らの発言に導かれるように彼女の絵画を見ていくと、既存の美術史が男性優位の虚構でしかないことにも気付かされる。さて、本作はあたかも抽象画を模すかのように、風景や植物やカタツムリなどを映したショットを織り交ぜていくが、その際の特徴は明確にフォーカス送りである。要は、ここでの提案は視点を変えることではないのだ。視点はそのままに、焦点を合わせる箇所を変えること。

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