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世界を熱狂させる「ジョン・ウィック:コンセクエンス」は、大胆な挑戦と名作へのリスペクトを併せ持つアクション映画のマスターピースだ!

Keanu Reeves as John Wick in John Wick 4. Photo Credit: Murray Close

本編169分間、人間離れしたバトルが続く。まるでeスポーツ国際大会の試合画面を見るようだ。が、演じている多くは生身の人間、斬新なアクロバットに挑戦する超人的情熱が観客を圧倒する。世界中の人々が熱狂したキアヌ・リーブスの新たなフランチャイズ4作目『ジョン・ウィック:コンセクエンス』はその集大成として限界を突破。アクション映画の新しいマスターピースがここに完成した。いよいよ日本でも9月22日から公開される本作の凄さを、いち早くお届けする。

前半・大阪の死闘はブルース・リーvs座頭市

Ian McShane as Winston and Laurence Fishburne as Bowery King in John Wick: Chapter 4. Photo Credit: Murray Close

「ジョン・ウィック」シリーズは純粋な連続活劇だ。新作は常に、前作の結末を踏襲する。前作『ジョン・ウィック:パラベラム』(第3作)でニューヨーク・コンチネンタルホテルのオーナー、ウィンストン(イアン・マクシェーン)と手を組み裏社会を統治する組織・主席連合に痛手を与えたものの、最後の最後に裏切られる。瀕死になったジョン(キアヌ・リーブス)はホームレスを束ねる地下組織の盟主バワリー・キング(ローレンス・フィッシュバーン)に救われ物語を終える。
 
本作はジョンが回復し、キングから新調したスーツを与えられ連合への復讐に向かうシーンから始まる。ファンにとってはお約束、防弾スーツの新調はジョンの再生と戦闘開始を意味する象徴的なシーンだ。

前半の舞台は日本の大阪。主席連合の拠点、大阪コンチネンタルホテルにジョン・ウィックが現れ、問答無用にバトルが始まる。そこではホテルのオーナー役、サムライ風の真田広之と、若武者風のリナ・サワヤマが日本刀片手にジョンと共闘、手裏剣や弓矢を放つニンジャ風刺客軍団と壮絶な死闘をくりひろげる。洋画にありがちな“誤解されたJAPAN”もひたすらスタイリッシュかつエレガントに描かれ、現代美術のような圧巻の美を示した。

Rina Sawayama as Akira Shimazu and Hiroyuki Sanada as Shimazu in John Wick: Chapter 4. Photo Credit: Murray Close

本作の注目は主要人物のひとり、ジョンの旧友にして暗殺者のケイン(ドニー・イェン)が盲目で仕込み杖を手に闘う点だ。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』でも盲目の戦士を演じたドニーだが、本作で披露する超絶な逆手居合斬りは明らかに勝新太郎の『座頭市』のオマージュだ。そして鎧兜が並ぶショーケース・ラウンジでケインと相対するジョンが手にするのはなんとヌンチャク! ブルース・リーのシンボルのヌンチャクで仕込杖のケインと激闘する絵は“ドラゴン対座頭市”の戦いを彷彿させ、思わず鼻息が荒くなる。

中盤、ニューヨークへの寄り道を経て舞台はベルリン、そしてパリへ移る。ベルリンの巨大ディスコでの手斧を使った接近戦や天井から俯瞰した重火器戦はアクション映画の歴史に新たなルックを誕生させた。さらに銃器マニアにはたまらない新型ハンドガンTTIピット・ヴァイパーの採用、マッスルカーを使ったカーアクション、犬の活躍(!)、シリーズのファンが待ち望むすべてが、本作にはもれなく投入されている。
 
「ジョン・ウィック」シリーズは単純にバトルアクションの量とスピード感を積み上げただけではなく、常に斬新で画期的な演出法を模索し、提示した。だからこそ新作が公開されるたびファンが増え、観客を爆発的興奮に導いたのだ。

見逃せない名作映画へのオマージュの数々

Keanu Reeves as John Wick in John Wick 4. Photo Credit: Murray Close

ただし、それだけではない。
前作までもそうだったが、本作でもたびたび顔を出すいにしえの名作アクション映画の再現、そのリスペクトとの遭遇があるからこそ、若者だけでなく、年配の映画ファンにも支持された。
 
たとえばパリ市街でのカーアクション、バイクアクションシーンではジョンの移動をラジオDJが刻々と放送するが、それはウォルター・ヒルの名作『ウォリアーズ』(79年)にまったく同じシチュエーションが登場する。同じパリでバトルにあわせローリング・ストーンズの名曲「黒くぬれ!」のカヴァーが流れるオールディズ・ロックと激しい殺戮の協奏は間違いなくQ・タランティーノ監督を意識している。
 
そして映画ファンの心を打ち、瞳を潤ませるのは、ジョンとケインの二人が対決を前に教会で語りあう場面だ。ジョン・ウー監督『狼/男たちの挽歌・最終章』(89年)へのオマージュでもあるが、ともにアクション映画のアップデートを模索し続けた二人がしみじみ過去を振り返り、「呪われてるんだ、俺もお前も」と漏らす。キアヌ・リーブス59歳、ドニー・イェン60歳、同世代にして盟友の二人の、長いキャリアとアクション映画への愛憎を重ね合わせた感動的なシーンだ。

Donnie Yen as Caine and Keanu Reeves as John Wick in John Wick: Chapter 4. Photo Credit: Murray Close

鳩が飛び、夜明けが来る──。

最後の対決はセルジオ・レオーネ監督『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』(66年)からゆったりとした流れ、緊迫感、音楽など戦い荘厳さを強調する演出を拝借している。おそらく監督のチャド・スタエルスキはこのシーンのために映画をレオーネのサイズ、169分の長尺にしたのではないか。そして、やがて訪れる神聖な決闘と衝撃的な結末に涙が止まらなくなる。

第1作から続いたジョンの戦いは本作で一応、決着をみる。だが世界はなお続編を待っている。ジョン・ウィックは必ず戻ってくると。たとえキアヌ・リーブスが60歳をいくつ過ぎようとも。

文=藤木TDC 制作=キネマ旬報社

 

 

『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

9月22日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス、ドニー・イェン、ビル・スカルスガルド、ローレンス・フィッシュバーン、真田広之、シャミア・アンダーソン、ランス・レディック、リナ・サワヤマ、スコット・アドキンス、イアン・マクシェーン
配給:ポニーキャニオン 原題:JOHN WICK:CHAPTER4
2023/アメリカ/169分 R15
Ⓡ, TM & © 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
公式HP:http://johnwick.jp/

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