GUNDA/グンダの映画専門家レビュー一覧

GUNDA/グンダ

ホアキン・フェニックスがエグゼクティブプロデューサーを務めたドキュメンタリー。ある農場で暮らす母豚グンダと子豚たちを始めとした動物たちの深淵なる世界を、ナレーションや音楽を排したモノクロ映像で捉えたアート作品。世界の映画祭で高評価を得た。監督は、「アクアレラ」で第92回アカデミー賞ドキュメンタリー部門ショートリスト入りを果たしたヴィクトル・コサコフスキー。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    冒頭から何が始まるのか、不安でいっぱいだった。何も起きない、カットが変わらない。どうしたんだと思っていたら、いきなり凄いことが起きてる。動物をあんなに近くで撮って、なんであそこまで自然体なのか?CGかと思ってしまった。ブタ、鳥、牛って、全部人間が食料にしてるんだよなと思い当たる。家畜を人間みたいに撮る映画。感情があるように撮れてるのが、本当に不思議だった。ラストの母ブタ、ウロウロの長回しに涙する。ブタが意外と子煩悩なのを知った。

  • 文筆家/女優

    睡蓮みどり

    潔くて美しくてもの悲しい。それにしてもどうしてこの映画はこんなに面白いのか考えていた。母豚グンダとその小さな生まれたばかりの子豚たち、片足のニワトリ、顔に虫がたくさんついた牛たちの“顔”を撮っているからかもしれない。顔に人生が刻まれるのは何も人間だけではない。じっと顔がこちらを見ている。何度もドキッとさせられる。モノクロの世界に自然界の音が響く。映像だけでなく音の編集も非常に凝っている。凝っているけどシンプル。このシンプルさに見習うことは多い。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    豚に続いて映される鶏を見て、ふと若冲のことが念頭をよぎった。時代も国も美学も感性も無視したありえない連想であり、この母豚のポートレートを《動植綵絵》の1幅に加えたくなるなどとはいうまい。だがカメラによる描写は細密であり、細密であるがゆえに幻想の世界へとつらなり、動物がその環境と組み合わされる。基本的には豚でも子豚でも鶏でも牛でも、撮影対象の視線の高さにカメラを据える、その描写の方針がいい。前作「アクアレラ」の反省からか、音楽を排して正解だろう。

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