シノノメ色の週末の映画専門家レビュー一覧

シノノメ色の週末

元・乃木坂46の桜井玲香を主演に迎え、「月極オトコトモダチ」の穐山茉由監督が大人になりきれない20代女性たちを等身大に描く人間ドラマ。母校・篠の目女子高校の校舎が取り壊されることになり、元・放送クラブの3人が思い出を辿るために数年ぶりに集まる。「月極オトコトモダチ」でMOOSIC LAB2018長編部門グランプリを獲得するなど国内外から高い評価を得てきた穐山茉由監督の商業長編初作品。映画初主演の桜井玲香は高校時代はイケてるグループの中にいた大月美玲を、「mellow」の岡崎紗絵があまり目立たない生徒だった岡崎紗絵を、モデル・歌手で「ロックンロール・ストリップ」など俳優としても活動する三戸なつめが二人を呼び出す廃虚オタクの安東雅美を演じる。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    生徒数減少による経営困難で廃校となった良妻賢母が校訓の女子校、雑誌モデル、ギャルブランド、MDプレーヤーとMDディスクなどなど。この10年間に「失われたもの」をただ否定するのではなく、愛着を込めて弔うかのような監督自身による脚本が秀逸。同窓生3人だけの内輪の物語に閉じずに、中井友望演じる現役女子高生、工藤阿須加演じる広告会社の上司ら、実在感のあるキャラクターによる外部からの視点の導入も効いている。ニーチェのくだりは少々すべっていると思ったが。

  • 映画評論家

    北川れい子

    女子高の卒業時に3人でどこかに埋めたか隠したはずのタイムカプセル。その場所を、10年後に再会した3人は、誰も覚えていない。そんなもん? で闇雲に校庭のあちこちを勝手に掘り返し。廃校となり、近々取り壊される女子高。それぞれにいまの自分に自信をなくしている彼女たちは、週末になると無人の校舎に忍びこみ、持参した女子高の制服に着替え、ハシャいだり。20代後半、希望は過去にしかないのか。スケッチふうな場面が多く、大したことは起こらないが、終わりはスッキリ。

  • 映画文筆系フリーライター退役映写技師

    千浦僚

    だいたいここ二十年で数千本の新作日本映画を観ているが、そこでは延々とひたすらに若者たちが人生を模索し、学校生活や働くなかでの悲喜交々と自己実現の困難が表され、人生八十年、百年時代としてはまだ若者の部類にある人物らが手に入れた短い過去に対してやたら回顧的になるという印象がある。別に悪いとは思わないがこの方向性の不滅は何なんだろう。そこには時代論のようなものと個人的な物語の二種があるが、後者が特に劣るわけではないことは本作を観ると感じられる。

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