人知れず深夜に働くすべての人々へ応援歌となるドラマ『ナイト・ドクター』

人知れず深夜に働くすべての人々へ応援歌となるドラマ『ナイト・ドクター』

医療モノのドラマや映画は数あれど、夜の病院が舞台という異色の医療ドラマ『ナイト・ドクター』。夜間勤務専門の若き救命医たちの青春群像を描いた本作のBlu-rayとDVDが、2月16日にリリースされる。

スーパードクターが登場しない等身大の医療ドラマ

365日24時間、どんな患者も断らない医療と同時に、所属スタッフの働き方改革も目指す、横浜の柏桜会あさひ海浜病院は、夜間勤務専門の救命医チーム“ナイト・ドクター”を試験導入。そこに集まってきたのが、強い信念で自ら望んでやってきた医師6年目の朝倉美月(波瑠)、院長の勧めで渋々異動してきた深澤新(岸優太)と救命医に憧れを持つ桜庭瞬(北村匠海)という二人の研修医あがりの新米医師、仕事とプライベートの双方を充実させようとする高岡幸保(岡崎紗絵)、そして美月と同じ救急に勤めていたこともある経験豊富な成瀬暁人(田中圭)という5人の医師。次第に明かされていくそれぞれの個人的事情を抱えた訳ありの彼らは、指導医の本郷亨(沢村一樹)の下で、時にぶつかり、時に励まし合いながら、命に真摯に向き合い、医師としても人間としても成長していくことになる。

本作の大きな魅力は、崩壊寸前の現代日本の救急医療の厳しい現実に光をあて、それを打開するための新たな取り組みを提示する社会派医療ドラマであると共に、若き医師たちの葛藤や成長を描く青春群像ともなっていることだ。

本作に登場するのは、等身大のリアルな人間ばかり。失敗もするし、難病を華麗に治療するスーパードクターはいない。難病そのものや治療過程を描くよりも、緊急性の高い医療現場の最前線で何が起きているのかを描くことに重きを置いた医療ドラマであるため、救えない命についての描写もある。すべての患者を救えるわけではないという厳しい現実に直面しながらも奮闘する若き医師たちの等身大の姿が、それぞれの抱えた個人的事情や日々の日常生活を交えて綴られていく。そのため、医師という専門性の高い職業を描きながらも、様々な葛藤や経験を経て成長していく姿には、誰もが身近な普通の人間として共感できる。

個性の違う人間くさいキャラクターたち

個性の違う中心人物の5人の医師を好演する役者陣も魅力的だ。主人公の朝倉は、負けず嫌いで行動力があり、夜間救急医という仕事には自らが医師を目指したことに関わる強い使命感を持つが、完璧ではなく弱さもある。そんな彼女を主演の波瑠は、その凛とした佇まいと持ち前のチャーミングさで人間味溢れる人物として表現。

朝倉の先輩の成瀬は、頼りがいがある優秀な医師だが、自分にも他人にも厳しくドライな面を持つため、嫌味にも見える時がある。「いかに性格を悪く見せるのか」を意識したという田中圭は、クールなカッコいい医師に見えすぎないよう絶妙なバランスで演じている。研修医あがりの元内科医の深澤は、主要キャストの中では最もドラマ出演経験の少ないKing  Princeの岸優太が演じているが、本人自身のフレッシュさや真面目さ、芝居に真摯に取り組む姿勢が、医師として未熟ながらも強い信念や優しさを持つ役柄と見事にマッチ。劇中もそうだが、実際の撮影現場でも、岸自身の人柄の良さと相まって愛されキャラ的役回りを担っていたようだ。高岡は、仕事にもプライベートにもこだわりを持ち、一見、強さと美しさを併せ持つように見えるが、実は多くの現代女性と同じような葛藤を抱えている。医師の時と普段の時では見せる顔も全く違い、ふり幅も大きい難しい役柄だが、岡崎紗絵は繊細に演じて見せている。桜庭は5人の潤滑油的なムードメーカーだが、生まれつき心臓が弱く、医師としては深澤同様に未熟。北村匠海は、明るくふるまう中にも内に秘めたものを感じさせ、最年少とは思えない豊かな表現力を見せる。

そんな人間くさい5人個々のドラマと成長、そしてバラバラだった5人が目の前の命に向き合い続けることで、次第に一つのチームとなっていく過程は大きな見どころ。また、5人は新設部署の同期ということで、基本的には名前を呼び捨てし、タメ口で接しあう。年齢も経験も異なるキャラクターが対等にふるまうその関係性も、本作特有のチーム感を生み出すエッセンスとなっているのが面白い。

人知れず深夜に働くすべての人々への応援歌

そして、現代社会を背景にした“ナイト・ドクター”という設定自体も、もちろん本作最大の特徴。夜間救急は、慢性的な医師不足、救急車難民、コンビニ受診など問題が山積みだが、昼も夜も救うべき命があることに変わりはない。しかし、2024年度から施行される医師の働き方改革は、勤務医に「原則960時間」までの時間外労働の上限が適用され、日本の救急医療はより深刻な人手不足が叫ばれている。その対応策が定かでない中、本作では舞台となる病院に、昼夜完全交代制勤務を試験導入。きちんと医師としての経験のある夜間勤務専門医を配置することで、過度な長時間勤務や夜間の医療体制の低下をなくすという新たな試みを描いている。これはあくまでフィクションではあるものの、ドラマ『コード・ブルー』シリーズが、ドクターヘリの普及に多大な貢献を果たしたという例もあり、本作が崩壊寸前の現代の救急医療を救う一筋の光となる可能性もあるかもしれない。

また、現代の便利な生活インフラなどの安全性が保たれ、毎日当たり前のように同じ朝を迎えることができるのは、多くの人々が眠りにつく深夜にも働いてくれている人々がいるからこそ享受できているということにも、改めて気づかされる。社会の安全を守るため、多くの人々が快適な生活を送るため、様々な場所で人知れず深夜に働くすべての人々への応援歌ともなっている。ただの医療モノではなく、今を描いた連続ドラマとしての独自の多面的な魅力を持つ作品だ。

現場の充実ぶりや雰囲気の良さが窺える特典映像

2月16日にリリースされるBlu-ray BOXとDVD BOXには、豊富な特典映像も収録。リモート記者発表会やクランクイン&オールアップ映像などでは、主要キャストたちが本作にこめた思いや、現場の様子を明かしている。その真摯な姿勢で座長として引っ張る波瑠、明るく現場を盛り上げる田中、その田中にいじられたり天然発言で皆を和ませるムードメーカーの岸など、現場の充実ぶりや雰囲気の良さが窺える。他にも公式SNSで配信された映像集、ポスター撮影の模様など各種の貴重な映像が満載。さらには、特製ブロマイドや、56頁に及ぶ特製フォトブックも封入。メインキャラの特写カットと共に名場面のスチールがふんだんに収められており、貴重なコレクターズアイテムとなっている。

文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社

※写真はBlu-ray BOXになります。
『ナイト・ドクター』

●2月16日(水)Blu-ray BOXDVD-BOX リリース(全11話)※レンタル同日リリース
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら

●Blu-ray BOX:31,680円(税込) DVD-BOX:25,080円(税込)
【映像特典(105分)】
・リモート記者発表会
・クランクイン&オールアップ
・公式SNS映像集 
・予告集
【封入特典】
・特製ブロマイド
・特製フォトブック(56P)

●2021年/日本
●出演:波瑠、田中 圭、岸 優太(King Prince)、岡崎紗絵、北村匠海、沢村一樹
●脚本:大北はるか(『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』『グッド・ドクター』)
●発売元:株式会社フジテレビジョン 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
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