時代と格闘する新たな“木村拓哉”像に挑んだ学園スポーツドラマ『未来への10カウント』特典映像も必見!

木村拓哉が生きる希望を失っていた高校ボクシング部のコーチ役という新境地の役どころで、学園スポーツドラマに初挑戦した『未来への10カウント』のBlu-ray BOXとDVD-BOXが、11月23日にリリースされる。

木村拓哉史上、最も腐ったどん底からスタートする主人公

ドラマ『未来への10カウント』は、テレビ朝日系列で2022年4月14日~6月9日まで全9話を放送。実質的な本編の総計時間は10話分に相当するドラマとなっている。

脚本は『HERO』シリーズ(01~15)や『CHANGE』(08)でも木村とタッグを組んだ福田靖、主題歌は木村主演ドラマとしては『Beautiful Life~ふたりでいた日々~』(00)『A LIFE~愛しき人~』(17)に続いて3度目となるB'zが手掛けている。共に木村の魅力を知り尽くした者ならではの脚本と楽曲を提供しているが、初の学園スポーツドラマの指導者役、初の本格的なボクシング経験者役、そして、これまで演じてきた役柄の中で最も精神的に腐ったどん底からスタートする主人公役という、木村がこれまで演じたことのない役柄に挑戦させている。

木村演じる主人公の桐沢祥吾は、高校時代にボクシングで4冠を達成しオリンピックも目指せる逸材だったが、その後は度重なる不運に見舞われたことから、今では「いつ死んでもいい」と口にするほど生きる希望を失ってしまい、なんとかピザの配達アルバイトで食いつなぐ日々を送っていた。そんな桐沢を心配した親友・甲斐誠一郎(安田顕)は、母校・松葉台高校ボクシング部の前監督・芦屋賢三(柄本明)に相談し、桐沢を芦屋の後任に抜擢しようとする。全くやる気のない桐沢だったが、恩師の頼みは断り切れず、臨時コーチとして母校に舞い戻る。

しかし、母校は昔と違って東大合格者も出す進学校となっており、芦屋が監督を退いて以来ボクシング部は弱体化もしているため、芦屋の娘で桐沢の後輩でもある校長の大場麻琴(内田有紀)は、ボクシング部を潰そうと画策。ボクシングに対する思い入れや知識がまるでない国語教諭の折原葵(満島ひかり)が顧問に任命され、ボクシング部の部員たちはやる気のない新コーチと新顧問を前に、複雑な思いに駆られる。しかし、桐沢がかつて輝かしい成績を残した先輩だと知った唯一の3年生の部長・伊庭海斗(髙橋海人)は、新入生勧誘のため、桐沢に無謀な公開スパーリングを申し込む。次第に生徒たちの熱心さに折原は応援したいと思い始め、桐沢も心を動かされるようになっていく……。

新鮮かつ皆が満足する木村拓哉像

できる人物やポジティブな人物がハマる木村だが、今回は人生に絶望した徹底的にネガティブな主人公としてスタート。ファッション的にもホームセンターで売っている雨風をしのぐ実用性重視のような飾り気がない服装で、髪の毛もボサボサに近い。それを過剰すぎず、自然に演じているため、木村といえど、暗くて冴えない中年男に見える。日本最高峰のトップスターで、数々のハマリ役がある木村には、常に固有のイメージがつきまとい、求められるものも多い。ネガティブで冴えない主人公は皆が求める姿ではないかもしれないが、今回はどん底から這い上がろうとする姿を描いており、最終話まで見終ると、この年代だからこそ演じられる役柄と、皆が見たい木村拓哉像を融合させた、今の木村拓哉にしかできない新鮮なドラマとなっている。

物語の序盤では、ネガティブで冴えない姿を見せるが、次第に桐沢がそうなった理由が明かされ、ボクシング部の生徒たちとの出会いによって内にくすぶっていたものに火がつき始めると、木村拓哉節とでもいうような、周囲を巻き込んだ理屈抜きの熱量が生み出されていく。ただ、今回の木村は主人公ではあるが、ボクシング部の学生たちを輝かせることで、自らも輝くというような人物。常識に捉われない独自のやり方で自分自身が問題を解決していく太陽のような主人公役も多かった木村だが、今回は指導者役ということからも、自らが頑張るだけではどうにもならず、いかに生徒たちを育てるかが描かれ、月のような主人公といえる。

時代性としても、熱血指導で乗り切るのはリアリティがないし、劇中では契約上の職域や立場の問題などで、桐沢が現代的な学校運営の中で様々な制約を受ける姿も描かれる。しかし、桐沢はそこに無理に抗うようなことはしない。それは、破天荒さや常識をぶち破ることで痛快さを見せるのではなく、現代的なリアリティを保った中でいかに木村拓哉らしい痛快さも見せるかといった、時代と格闘する現在進行形の新たな木村拓哉像に制作陣も木村自身も挑んでいたのではないだろうか。結果的に、時代にあった新鮮な姿を見せながらも、皆が見たい木村拓哉像というものも満足させるドラマとなっているように思う。

髙橋海人ら期待の若手俳優が好演する王道の学園青春スポーツドラマ

本作は桐沢の再生の物語ではあるのだが、その心を動かす原動力となるのはボクシング部の学生たちであり、彼らも主人公といえる。King & Princeの髙橋海人、山田杏奈、村上虹郎、坂東龍汰、佐久本宝といった魅力的な若手俳優たちが好演し、学生たちの様々なドラマも楽しめる。半年以上もボクシングのトレーニングをした上で参加している者もいて、試合のシーンなどは本気で打ち合っている姿を見せている。ひたむきにボクシングに打ち込む姿は素直に感動させられるし、応援したくなってしまう。王道の学園青春スポーツドラマであることも、本作の大きな魅力の一つだ。

また、その他の共演陣も豪華。真面目で真っ直ぐなボクシング部顧問役を満島ひかりがチャーミングに演じ、ボクシングジムを経営する桐沢の親友役の安田顕は軽快かつ頼もしい。さらに、木村と約30年ぶりに共演した校長役の内田有紀の他、滝沢カレン、八嶋智人、市毛良枝、波瑠、富田靖子、生瀬勝久、柄本明ら多彩な俳優たちが出演し、時にコミカルに、時に感動的な物語を紡いでいる。

木村のナチュラルな演技力の秘密の一端が垣間見える特典映像

11月23日にリリースされるBlu-ray BOXとDVD-BOXには、総計約2時間近い特典映像も収録。

メイキングでは、木村のナチュラルさに長けた演技力の秘密の一端を垣間見ることができる。例えば、第1話で桐沢が学校の校門から自転車で出てくる際、校門前で遊んでいた子供のサッカーボールに驚くシーンで、自転車の前にボールが横切るのを前輪にぶつけるよう提案したり、第4話で部員同士が女性マネージャーを巡って争うシーンで、部員の二人を制止するのにメガホンを使うことを提案したりなど。それが実際にどう生きているかは本編とメイキングをみていただきたいし、些細なことではあるものの、そういったあくまで作品を良くするための提案を随所に行い、その積み重ねが自然な芝居の流れやリアルなリアクションを自身にも周囲にも生んでいるように思えた。木村の芝居の上手さは、細かなニュアンスの上手さでもあると思っていたが、それを生み出す瞬間の一つを垣間見たような気がする。また、髙橋海人演じる部長が、第4話で試合のあとにリング上であることを決行するシーンでも、木村がその芝居に相手役との目線やその後の流れも意識した効果的なアドバイスを与える姿なども収められている。

主要キャストのクランクアップの模様をまとめた映像では、試合会場で迎えたオールアップのシーンで、生徒役の若手俳優たちが一人ずつリングに上げられ、木村から花束を渡されて抱き合う姿がみられる。髙橋をはじめ皆が本作に参加できた喜びと感謝を涙ながらに挨拶する姿には、劇中と同じようにこの撮影現場自体にも彼らの青春があったことが感じられ、感動せずにはいられない。

他にも、制作発表記者会見やキャストインタビューなどで、番組タイトルロゴを生徒役の出演者に書かせることを提案した木村の想いなどが明かされており(誰が書いたか伏せた上で木村が選び、髙橋の直筆ロゴが採用された)、貴重な映像特典が豊富に収録されている。

文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社

 

『未来への10カウント』

●11月23日(水)Blu-ray BOX&DVD-BOXリリース(全9話)※レンタル同日リリース
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら

●Blu-ray BOX:32,340円(税込)、DVD-BOX:26,400円(税込)
【特典映像】
・メイキング
・クランクアップ
・制作発表記者会見
・キャストインタビュー(by『グッド!モーニング』)

【初回生産限定】
不撓不屈ステッカー

【封入特典】
ブックレット

●2022年/日本
●出演:木村拓哉 満島ひかり 安田 顕 髙橋海人(King & Prince) 山田杏奈 村上虹郎 馬場 徹 オラキオ
滝沢カレン ・ 八嶋智人 ・ 市毛良枝 波瑠 富田靖子 内田有紀 生瀬勝久 柄本 明
●脚本:福田 靖
●音楽:林 ゆうき
●主題歌:B'z『COMEBACK -愛しき破片-』(VERMILLION RECORDS)
●ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
●チーフプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
●プロデューサー:川島誠史(テレビ朝日) 都築 歩(テレビ朝日) 菊池 誠(アズバーズ) 岡 美鶴(アズバーズ)
●監督:河合勇人 星野和成
●制作協力:アズバーズ
●制作著作:テレビ朝日
●発売元:株式会社テレビ朝日 販売元:TCエンタテインメント株式会社
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