全編に張り巡らされた伏線と巧みな構成。何度も見返したくなる菅田将暉主演の『ミステリと言う勿れ』　

菅田将暉主演で、田村由美原作の人気コミック『ミステリと言う勿れ』を映像化した話題のドラマ。2022年1～3月にフジテレビ系の月9枠で全12話を放送し、各配信サイトでの1クール内の見逃し配信総再生数が、民放ドラマ史上歴代最高記録となる快挙を達成した同作のBlu-ray BOXとDVD BOXが、8月3日にリリースされる。

卓越した洞察力を持つ大学生が、巻き込まれた事件の謎も人の心も解きほぐす　

菅田が演じる主人公の久能整（くのうととのう）は、天然パーマが特徴的な、友達も彼女もいない大学生。感情の起伏が少なく淡々としていながら、当たり前とされていることに疑問を持ち、気になることはとことん考え、持論を喋らずにはいられない。それは膨大な知識とひと並外れた洞察力から導き出されたもので、隠された事実を明らかにしたり、人の本質を言い当ててしまうため、うざがられることも多い。物語はそんなクセの強い主人公・整が、ある事件の容疑者となって警察の取り調べを受けたことから始まる。警察も舌を巻く推理力を披露した整が、その後も捜査協力を依頼されたり、巻き込まれたりしながら、様々な事件を解決に導くことになる新感覚ミステリーだ。

描かれるエピソードは基本的には1～2話ごとに完結するが、少しずつ他のエピソードとも繋がり、10話目でFinal episodeを迎える。しかし、本作は全12話。最後の11～12話は、謎を残して終わっていたepisode.2の続きを描くepisode.2.5となる。このepisode.2.5は全話に張り巡らされていた伏線を回収する物語ともなっており、その巧みな構成に感心させられる。最終回を見た上で、初回から、またはepisode.2から見直すと、新たな発見や伏線の上手さに唸らされることだろう。1～2話で完結する見やすさと、全話を通して物語が繋がる巧みな構成が共存し、連ドラならではの醍醐味を存分に味わえる。また、描かれる事件や整が語る言葉には、現代社会への様々な問題提起が反映されており、深みのある物語を楽しむことができる。

豪華キャストが競演する会話劇

カレーが大好きで、自分が気になったことを喋っているうちに、結果的に事件の謎も人の心も解きほぐしてしまう主人公・久能整を演じるのは菅田将暉。本作への出演依頼を受けた当時、“この原作だけは絶対にやりたい”と出演オファーを快諾。原作通りのポップコーンパーマの髪型にした菅田は、試行錯誤の末に徹底的に役作りを行い、漫画だからこそ成立していたような淡々と膨大なセリフを喋り続けるキャラクターにリアリティを与え、面倒くさい性格ではあるもののどこか可愛げのある、原作者も納得の主人公を作り上げた。

他に、刑事役で伊藤沙莉、尾上松也、筒井道隆らがレギュラー出演。伊藤は一人前の刑事になるため、悩み、葛藤しながら成長していくヒロイン的な役回りを担い、その先輩刑事役の尾上はコミカルさ、二人の上司役の筒井は渋さを見せて、それぞれが好演。さらに、セミレギュラーや各エピソードのゲストにも、永山瑛太、門脇麦、遠藤憲一、柄本佑、小日向文世、佐々木蔵之介、岡山天音、早乙女太一、鈴木浩介、水川あさみ、志田未来、北村匠海、松本若菜、高畑淳子、船越英一郎など、豪華キャストが揃う。従来のイメージにない金髪姿で驚かせた瑛太を始め、それぞれが意外性のある役柄で持ち前の演技力を存分に発揮しており、役者同士の台詞の応酬も見応えがあるドラマとなっている。

「喋りすぎて口内炎ができた」菅田将暉らが裏話を明かす貴重な特典映像

8月3日にリリースされるBlu-ray BOXとDVD BOXには、貴重な特典映像も収録。キャストたちのクランクイン&クランクアップの様子をまとめた映像集、撮影中に誕生日を迎えた菅田・尾上・永山をお祝いする各バースデー映像、放送直前の完成披露試写イベント、最終回前後にFODで配信された緊急座談会などを収録。

完成披露試写イベントと緊急座談会では、菅田、伊藤、尾上、筒井らレギュラー4人が、放送の約1年前に時間をかけて撮影されたという本作を振り返り、撮影秘話や本作に込めた思いを明かしている。菅田は、全体的に今までで最も台詞量があるドラマで喋りすぎて口内炎ができたこと、撮影見学に訪れていた原作者と何度も相談しながら役を作り上げたこと、自身が主人公の先生役を演じた『3年A組 ―今から皆さんは、人質です』で生徒役を演じていた今井悠貴と第7話で再共演できた感慨などの裏話を披露。他にも緊急座談会では、作品の反響、印象的なシーンやセリフ、好きな回、常々思っていることなどを明かす他、好きなキャラクターの似顔絵を描くコーナーなども収録。レギュラー4人が仲良く語り合い、笑いの絶えない現場だったことが窺える。

菅田も自身のクランクアップの際に続編をやりたいと語っていたが、続きの見たくなるドラマであり、原作も連載中のため、ぜひともドラマの第2シーズンなどの続編を期待したい。その続編実現までは、まずはリリースされたBlu-ray やDVDで、何度でも楽しんでほしい。

制作＝キネマ旬報社