様々な“Avalanche=雪崩”の起点を目指した野心的な連ドラ『アバランチ』

様々な“Avalanche=雪崩”の起点を目指した野心的な連ドラ『アバランチ』

カンテレ・フジテレビ系“月10ドラマ”の第1弾として昨秋に放送された綾野剛主演の連続ドラマ『アバランチ』。謎のアウトロー集団“アバランチ”の過激かつ痛快な活躍を描いて話題となったこのピカレスク・アクション・ドラマのブルーレイとDVDが、5月18日にリリースされた。

綾野剛×藤井道人が連ドラで再タッグ 

骨太な作品作りでも知られるカンテレが制作した連続ドラマ『アバランチ』は、新設されたフジテレビ系の月曜22時のドラマ枠の第1弾として、2021年10月18日から12月20日までに全10話を放送。主演の綾野剛と映画「ヤクザと家族 The Family」(21)でも組み、現在引っ張りだこで『情熱大陸』でも特集された藤井道人がチーフ監督を務め、映画的な撮影方式でこだわりの画作りが行われた。綾野と藤井監督が企画から参加して作り上げたオリジナル作品で、放送前までは謎に満ちた宣伝ビジュアルなど最低限の情報しか明かさず、サプライズ感を演出。放送中にもYoutubeとの連動を行うなど、様々な野心的取り組みが行われ、SNSでも大きな話題となった。

“Avalanche”の日本語訳は、第1話のエピソードタイトルでもある“雪崩”。劇中に登場するアウトロー集団が“アバランチ”を名乗ることになるが、この言葉を選んだのは藤井監督で、巨悪と闘うアバランチの活躍が人々の間に雪崩のように伝播し、最後にそれが大きな力となって巨悪を倒すという壮大な思いが込められた言葉であるそうだ。

第1話の冒頭は、主人公の羽生(綾野剛)が警視庁公安部を辞めることになった、ある爆破事件の回想が描かれるが、この事件の詳細はここでは明かされず、後にアバランチ誕生のきっかけとして語られる。物語は、正義感の強さゆえに上司を殴ってしまった西城(福士蒼汰)が、警視庁の捜査一課から日陰部署の特別犯罪対策企画室に左遷されてきたところから始まる。室長の山守(木村佳乃)の運転手を務める中、彼女が独自の考えで秘密裏に指揮するアバランチの存在を知った西城は、巻き込まれるような形で非合法な活動に足を踏み入れていく。

山守率いるアバランチのメンバーは、それぞれに強い動機や意思を持って参加しており、元警視庁公安部の羽生の他、凄腕のハッカー&トレーダーの牧原(千葉雄大)、元警視庁爆弾処理班の打本(田中要次)、元自衛隊特殊工作部隊員の明石(高橋メアリージュン)ら精鋭たち。警視庁の閑職にいる山守も、以前は内閣情報調査室のエリートだった。彼らは、警察では対処しきれない悪人や権力を傘に不正を働く政治家などに、現代的な方法で独自の制裁を執行。次第にその活動は世間を賑わせていくが、日本の将来を憂う支援者の協力を得て山守が独断で行っているため、警察から追われる存在ともなっていく。

深いテーマ性とアクションものとしての魅力

アバランチのリーダーは山守だが、その誕生には羽生も大きく関わっており、この二人が中心となる。物語が進むうちに各キャラクターの素性や参加の理由、そしてアバランチの真の目的が明かされていく。全編に功名な伏線が張り巡らされ、二転三転する驚きの展開が待ち受ける。また、明確な参加動機のない西城は、視聴者に近い目線の役回りだが、陰の主人公ともいえる存在。それは綾野自身も語っており、表の主人公はアバランチの誕生と目的に深く関わる羽生だが、西城の心に芽生えていくものや成長が、この作品のテーマにも深く関わっていく。

巨悪や権力に立ち向かい独自の鉄槌を下す痛快さは、ダークヒーロ―を描くエンタメ作品としての本作の大きな魅力だが、この作品は正義の力や人の強さを信じることを訴えかける作品でもある。その熱量は大きな魅力である一方、青臭く見える部分もあるだろう。もちろんそれは作り手側もわかった上でのことで、現代に足りない“熱狂”を呼び覚まそうとしている。また、正義を追い求める話ながら、正義と悪の境界線が曖昧な物語ともなっている。それぞれに捉え方が違う“正義”というものの怖さ、それをふりかざす危険性も描いており、アバランチの制裁自体も国民に委ねるという行動をとるのだが、この作品で描かれていることの判断や受け取り方も視聴者に託されている。

そんな現在の連ドラでは難しいテーマに踏み込んだ作品だが、あくまでエンタメ作品として描かれており、チームプレイや、アクションものとしての面白さも大きな魅力。一匹狼のような個性的メンバーが、それぞれの長所や得意分野を活かし、共に作戦を成功させていくのが痛快だ。そこでは、武闘派の羽生と明石によるアクションシーンが特に見所。二人が無双状態で多数の相手をなぎ倒していくハイレベルな格闘シーンを見ることができる。綾野の身体能力の高さが遺憾なく発揮され、高橋メアリージュンもキレのあるハイキックなどを見せている。連ドラとは思えないこだわりのアクション描写もぜひ見逃してほしくないポイントだ。

綾野剛の熱い思いが伝わる映像特典

5月18日にリリースされたブルーレイとDVDには、本作に込められた熱い思いが伝わる貴重な特典映像も収録。撮影風景や撮影中の出演者たちのコメントを見ることができる『Document of AVALANCHE』、出演者登壇の放送直前記者会見、綾野の依頼で主題歌を担当したUVERworldのLIVEに綾野がゲストで登壇した際の模様、レギュラーキャストのクランクアップ時の様子などの映像集『Memories of AVALANCHE』が収められている。これらの映像からは、いかにこの作品が規格外の作品だったかが窺える。

通常の撮影現場では、芝居や動きなどの段取り確認が行われたあと、テスト撮影を経てから、本番撮影を行うことが多いが、本作では入念な準備が必要なアクションシーンなどを除いてテストを行わず、カットを割らずにシーンの一連を撮影。OKがでると、アングルを変えて、同じシーンを一連でまた撮影する。スタッフ編成や撮影機材も含め、映画的な手法がとられており、そのこだわりの強さは、攻めた作品内容自体も含め、こんなテレビドラマは初めてだと語る出演者も多く、いい緊張感と刺激をもらえる現場だったようだ。

▶『アバランチ』の特典映像「Document of AVALANCHE」が一部公開中

また、キャストの皆が、いかに綾野がこの作品に情熱を注ぎ、その視野の広さと細やかさで皆を牽引したかを語っている他、綾野自身も共演者やスタッフへの感謝、作品に込めた思いなどを明かしており、本作への深い愛情が伝わるものとなっている。綾野は、熱狂のあるこの作品のような作り方が当たり前になっていく起点になって欲しいという願いや、エンタメ業界を盛り上げていきたいということも語っている。もちろんキャスト、スタッフ皆の思いが詰まった作品だが、特に現在の綾野の熱い思いが込められた、様々な“雪崩”を発生させる起点を目指した作品であることが伝わり、非常に興味深い映像特典となっている。

文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社

『アバランチ』

●5月18日(水)Blu-ray BOXDVD-BOX リリース(全10話)※レンタル同日リリース
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら

●Blu-ray BOX:25,850円(税込) DVD-BOX:20,900円(税込)
【映像特典】
・Document of AVALANCHE
・Memories of AVALANCHE
・オールアップ集

【封入特典】
・スペシャルブックレット

【外付け特典情報】
・カンテレショッピング:番宣クリアファイル(A4)
・Amazon:L判ビジュアルシート10枚セット付き
・研音公式ショップK-SHOP:福士蒼汰 特典写真
※特典はなくなり次第終了となります。

●2021年/日本
●出演:綾野剛、福士蒼汰、千葉雄大、高橋メアリージュン、田中要次、渡部篤郎(特別出演)、木村佳乃
●監督:藤井道人、三宅喜重、山口健人
●発売元:カンテレ 販売元:ポニーキャニオン
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