TVドラマ発「劇場版」のヒットの軌跡を振り返りつつ、いま“イッキ観”したい傑作3選

  • 2022年05月17日

TVドラマ発「劇場版」のヒットの軌跡を振り返りつつ、いま“イッキ観”したい傑作3選

昨年末から今年の頭に劇場公開されて大ヒットしたTVドラマの劇場版、「コンフィデンスマンJP 英雄編」「あなたの番です 劇場版」「99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE」の3作が、続けてソフト化。近年のTVドラマの劇場版の代表作ともいえるこれらのリリースにあわせ、TVドラマの劇場版の歴史や傾向を簡単に振り返りつつ、3作を紹介していこう。

日本映画活性化の起爆剤となったTVドラマの劇場版

日本映画の歴代興行収入ランキングのベスト30(2022年4月時点)は、アニメーション映画が16本を占めるが、残り14本の実写映画のうち、半数の7本がTVドラマの劇場版(映画からTVドラマ化を経由して再映画化された「海猿」シリーズを含む)。TVドラマでの人気を背景にしたその劇場版は、日本映画界においてもヒットジャンルのひとつとして定着しているが、そのターニングポイントとなったのは「踊る大捜査線」シリーズ。1997年にドラマが放送された後、スペシャル版を経て翌年に劇場版第1作が公開。同作は興行収入101億円の大ヒットを記録し、2003年のシリーズ第2作では実写日本映画トップの興収173.5億円を稼ぎ出した。

同シリーズ以降、様々なTVドラマの劇場版製作が激増し、多くのヒット作が生まれた。それが現在にも繋がる日本映画の活性化に貢献した一方、内容・興行共に失敗作ともいえる安易な劇場版も多数生み出された。その結果、現在のTVドラマの劇場版は、ドラマ版の視聴率よりも、有料の映画館に足を運ばせる独自の魅力があるのか、作品を愛するファンがどれだけいるのかを精査した上で、市場規模に合う厳選された作品が製作されるようになってきている。

また、一括りにTVドラマの劇場版といっても、その内容は様々。リメイク、番外編、スピンオフなどもあるが、最もポピュラーでヒットの実績も多いのが、やはりファンを直接引き継ぐことができる、ドラマ版と同じキャストやスタッフによる続編や完結編。近年の実例としては、「劇場版コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」(18年/興収93億円)、「劇場版 おっさんずラブ 〜LOVEor DEAD 〜」(19年/興収26.5億円)、「今日から俺は!!劇場版」(20年/ 興収53.7億円)、「劇場版 奥様は、取り扱い注意」(21年/興収11.9億円)、「劇場版 きのう何食べた?」(21年/興収13.9億円※1月時点)などがある。

さらには、TV版と映画版を同時に企画・撮影した作品、地方局製作のドラマと映画の連動作品、劇場公開とほぼ同時に放送や配信を行う作品、評価の高いTV版を劇場版に再編集した作品などもあり、小規模公開の作品も含めると多様化している。

騙し合いが痛快な劇場版シリーズ第3作「コンフィデンスマンJP 英雄編」

(C)2022「コンフィデンスマンJP」製作委員会

そして、近年のTVドラマの劇場版の筆頭ともいえるのが、「コンフィデンスマンJP」シリーズ。長澤まさみ、東出昌大、小日向文世らが扮するコンフィデンスマン(信用詐欺師)たちが、欲まみれの人間から大金を騙し取る、古沢良太脚本の痛快な大人気コメディで、2018年に連ドラを放送した後、TVスペシャルやスピンオフも挟みつつ劇場版を公開してきた同シリーズは、劇場版第1作「コンフィデンスマンJP ロマンス編」(19)が興収29.7億円、第2作「コンフィデンスマンJP プリンセス編」(20)が興収38.4億円を上げ、日本映画界でも貴重な大ヒットシリーズとなっている。5月18日にブルーレイとDVDをリリース(超豪華版のみ7月6日発売)する最新作「コンフィデンスマンJP 英雄編」も、興収28億円超えを記録した。

これまでの同シリーズは、海外では香港、シンガポールなどを舞台にしてきたが、今回はヨーロッパに初進出。奇想天外な計画を立案・成功させるダー子(長澤まさみ)、真面目で小心者のボクちゃん(東出昌大)、百戦錬磨のリチャード(小日向文世)という、今までチームを組んできた3人のコンフィデンスマン同士が、世界中のセレブが集まる世界遺産のマルタ島ヴァレッタで、何でもありの騙し合いバトルを繰り広げることとなる。お祭り感のある豪華なエンタメ大作で、シリーズファンが楽しめるのはもちろんだが、単体の独立した作品として初見でも楽しめる痛快な作品となっているのが、同シリーズの大きな魅力でもある。

考察ブームを巻き起こしたドラマの新たな物語「あなたの番です 劇場版」

(C)2021『あなたの番です 劇場版』製作委員会

2019年に日本テレビ系で放送され、Twitter世界トレンド1位を5度獲得した他、最終回の総合視聴率が25%を突破。「あな番」の略称で愛され、全編に散りばめられた伏線から誰が黒幕かを探る“考察ブーム”を日本中に巻き起こした大人気ドラマを映画化した「あなたの番です 劇場版」も、興収19億円を超える大ヒットを記録。(ブルーレイとDVDが5月25日リリース)

TVドラマの劇場版は続編的な物語が圧倒的に多い中、本作はドラマ版のパラレルワールドとなるユニークな異色作。ドラマ版では原田知世と田中圭が演じた年の差カップルが、引越し先のマンションで幸せな新婚生活を始めるはずが、住民たちの“交換殺人ゲーム”に巻き込まれてしまう。しかし、今回の劇場版は、「もしも交換殺人ゲームが始まらなかったら?」という、第1話の住民会から分岐した新たな物語。引越しから2年後、主人公カップルの船上結婚パーティーに個性的なマンションの住人たちが招待されるが、その逃げ場のないクルーズ船の中で連続殺人が発生する。最初から遡り、全く異なる展開で新たな結末を描くため、シリーズ未見の方も含め誰もが楽しめるのはもちろんだが、基本的なキャラ設定は同じなので、ドラマ版を観ていると登場人物の行動が理解しやすく、より深い考察ができるようになっている。ドラマ版を越える衝撃展開の連続を、濃密な1本の作品として楽しめる。

超型破りな弁護士が逆転不可能な難事件に挑む「99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE」

[caption id="attachment_11901" align="alignnone" width="1024"] (C)2021『99.9-THE MOVIE』製作委員会[/caption]

2016年と2018年に連ドラを放送して高視聴率を獲得し、昨年末にTVスペシャルも放送した松本潤主演の大人気シリーズの最新作となるのが、初の映画化で興収29億円を超える大ヒットを記録した「99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE」。(ブルーレイとDVDが6月8日リリース)

日本の刑事事件は、起訴された際の裁判での有罪確率が99.9%とも言われ、世界一の有罪率を誇る。そんな中、本作では超個性的な刑事専門弁護士たちが、最後の0.1%まで諦めずに事実を追い求め、逆転不可能と思われる刑事事件に立ち向かう新感覚の痛快リーガル・エンタテインメント。型破りで風変わりな弁護士・深山に松本潤、彼とチームを組む弁護士やパラリーガルに香川照之、杉咲花、片桐仁らが扮する他、榮倉奈々、木村文乃、青木崇高、奥田瑛二、笑福亭鶴瓶、岸部一徳らのシリーズキャストも総登場する一方、本作の事件の鍵を握る謎の弁護士とその娘に、西島秀俊と蒔田彩珠、事件の舞台となる村の青年に、なにわ男子の道枝駿佑が扮し物語を彩る。シリーズ史上最大の難事件に挑んだ本作は、TVでは難しい領域にも踏み込んだ作品ともなっている。もちろん「TRICK」「ATARU」シリーズなどの木村ひさし監督らしく、このシリーズならではのユーモアも満載。何度も観返してゆる~い小ネタを発見するのも楽しい作品だ。

これら3作は、いずれもエンタメ業界自体を大きく賑わせた、大ヒットシリーズ。全国のゲオの店舗や一部レンタル店では、これらの「TVドラマから劇場版までイッキ観特集!」キャンペーンも行われているので、気になっていたものの見逃していたという方には、ヒット作を総まくりするいい機会ともいえるだろう。

文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社

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コンフィデンスマンJP 英雄編
・リリース日:5月18日(セル 超豪華版のみ7月6日)
・発売・販売:フジテレビジョン/ポニーキャニオン

・TVシリーズ: Vol.1~ 5/運勢編(リリース中)
・劇場版:ロマンス編/プリンセス編(リリース中)


あなたの番です 劇場版
・リリース日:5月25日
・発売・販売:バップ

・TVシリーズ:Vol.1 ~ 8(リリース中)

99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE
・リリース日:6月8日
・発売・販売:TBS/TCエンタテインメント

・TVシリーズ:Vol.1~5(リリース中)/SEASONⅡ Vol.1~5(リリース中)/完全新作SP 新たな出会い篇(リリース中)