恋のいばらの映画専門家レビュー一覧

恋のいばら

「愛なのに」の監督、「猫は逃げた」の脚本を手がけるなど監督・脚本家として活躍する城定秀夫が、パン・ホーチョン監督作「ビヨンド・アワ・ケン」をリメイク。桃はインスタグラムから元カレ・健太朗の今の恋人・莉子を特定し接近、あることを持ちかける。地味な桃を「みをつくし料理帖」の松本穂香が、今どきの洗練された雰囲気を持つ莉子を「地獄少女」の玉城ティナが、すぐに女性に手を出す健太朗を「鋼の錬金術師」シリーズの渡邊圭祐が演じ、いびつな三角関係を織り成す。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    前々号で本作を面白いと書いたが、批評前提で観返して、評価を改めたい。元カノと今カノが共闘して彼氏をやっつける話なのだが、なぜ共闘するかが描かれていない。しかも元が今に近づいたのは、あなたみたいになりたかったからだとキスをするに至っては意味不明。もちろん人間は多面的だし、理に適った行動だけをするワケではないが、それに甘えてドラマを作ってはいけないと思う。城定の演出力と役者の魅力に一度は騙されたが、基本は脚本だと改めて。映画は作るのも観るのも難しい。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    前カノと今カノがひそかに協力して、女性関係にだらしない彼氏をやっつける。物語の面白さはオリジナルのパン・ホーチョン監督「ビヨンド・アワ・ケン」の面白さにほぼ尽きる。ただ松本穂香と玉城ティナという対照的なキャラクターが際立っていて、飽きずに楽しめる。松本のストーカーぶりは恐怖さえ感じさせるし、玉城はドキッとするほど妖艶。城定秀夫の演出が冴えている。シスターフッドに目覚めた二人の女性の来し方行く末が「恋のいばら」というのも塩が効いている。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    SNSの浸透などで、何でも曖昧なまま既成事実化されてしまう昨今の世情の異様さを、ひねったラブコメディのかたちで、ブラックユーモア満載に炙り出す意欲作とは思う。いびつな共闘関係を育むシスターフッドものとしての妙味は光るものの、ふたりを結ぶ彼氏にまつわる描写が、狙いとは思いつつあまりに表面的であるがゆえに、カタルシスが期待値を下回る。相変わらず絶妙に薄っぺらい中島歩と、衰え知らずの乙女心を軽妙かつリアルに体現する白川和子が、チャーミングに場をさらう。

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