新生ロシア1991の映画専門家レビュー一覧

新生ロシア1991

1991年モスクワで発生した「ソ連8月クーデター」に揺れるレニングラードのアーカイブ映像から、新生ロシア誕生の瞬間に迫るドキュメンタリー。ペレストロイカに反対する共産党保守派がゴルバチョフ大統領を軟禁。レニングラードの宮殿広場には8万人が集まった。レニングラード・ドキュメンタリー映画スタジオの8名のカメラマンが混乱する市中に紛れ撮影した映像を「バビ・ヤール」のセルゲイ・ロズニツァが手にし、3日間で終わったクーデターに揺れながらもロシアの自由のため立ち上がったレニングラードを再構成。
  • 映画評論家

    上島春彦

    まず書いておくがプーチン治世“極悪”ロシアのルーツがここにある、という映画ではない。背景はもうちょっと複雑、ただし若き日のプーチンの姿は見られる。ソ連崩壊前後の混乱の一時期を8人のプロキャメラマンが街路に繰り出し記録したもの。価値は極めて高く必見作であるが、解説を読んでから鑑賞しないと意味が分からないというのは困るよ。この監督の映画を一本で判断するのは辛い。ご免なさい。日本には大内田圭弥「地下広場」という傑作“街路”ドキュメンタリーがある。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    映画でくどくどしく何度も挿入される「白鳥の湖」は、8月クーデターの最中テレビ局がニュースを報じる代わりにこのバレエを繰り返し流し続けていたことに由来するという。ドキュメンタリーは民主化に傾く市民たちが共産党保守によるクーデタに抵抗する様を物語る。ベンチと木箱のバリケード、カメラを訝しむ人々、雨のレニングラード、拳を突き上げる大衆、空に靡く新たな国旗。これらの精彩を湛える生々しいまでの現実に、そこに確かに存在した歴史に、目を見張らずにはいられない。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    セルゲイ・ロズニツァによる匿名のアーカイヴ映像をカットアップして歴史的な事象を再現するシリーズ。ペレストロイカや昭和天皇崩御など、現代にも劣らぬ激動の時代の中、1991年にロシアでクーデターが起きたという報道は当時それほどなされなかった印象がある。興味深いのは、およそ30年前に撮影されたこれらの白黒映像を見ていると、これがプーチンが国民を欺き、自由を制限し、ウクライナに侵攻をつづけている現在のロシアの行く末を予見した映像のように見えてくることだ。

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