日の丸 寺山修司40年目の挑発の映画専門家レビュー一覧

日の丸 寺山修司40年目の挑発

街ゆく人々に挑発的な質問を投げかけるインタビューを記録したドキュメンタリー。劇作家の寺山修司が構成を担当した1967年放送の『日の丸』と同じ質問で2022年に街頭インタビューを敢行。ふたつの時代を対比させ“日本”や“日本人”の姿を浮き彫りにしてゆく。監督は、本作が初のドキュメンタリーかつ劇場公開作品となる佐井大紀。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    建国記念日が制定された1967年、寺山修司は日の丸についてインタビューのみの番組を制作し問題になる。今それと同じ質問をぶつけたら。55年前の闘いの拡大再生産。日の丸君が代天皇国家戦争安倍晋三自分自身脳内リスクで身動きとれない表現、そのすべてに対して向けられる刃。よくこんな企画を通したものだ。テレビ局もやれば出来るじゃん。クレジットが終わっても席を立たないで。「ゆきゆきて神軍」以来の危険な大傑作。TBS、深夜でいいからテレビでやってほしい。やるべき。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    「日の丸といったらまず何を思い浮かべますか」。1967年と同じ質問を2022年に街頭で投げかける。何より違うのは回答者の視線だ。67年は多くの人が戸惑いながらも、聞き手と正対し、聞き手の目を見て、それぞれに自分の言葉で語ろうとする。22年はほとんどの人がカメラを意識し、どう報じられるのかを気にしている。そんな時代に街頭インタビューは成立するか? 答えはイエス。この反応、この態度が今の日本人の姿であり、この映画はそんな群衆を映し出す鏡なのだ。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    あまりにも状況の異なる放送当時と現在とのあいだに無理やり共通項を見出す新人監督が、信奉する寺山修司の実験的かつ確信犯的な試みを闇雲に再現しようとする、思いつきにも似た発想に疑問を覚える。さすがに途中で限界に気づいたと見え、寺山を知る関係者たちの裏話へと切り替わるが、期せず批判の矢面に立たされ、音信不通となった女性インタビュアーの不在が、寺山の挑戦の負の側面を曖昧にし、番組の功罪を再検証する上でも、重要なピースが欠落しているように思えた。

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