ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコの映画専門家レビュー一覧

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ

19世紀末から20世紀にかけてイギリスで活躍したネコ画家ルイス・ウェインの人生を辿る伝記映画。イラストレーターのルイスは妹の家庭教師エミリーと結婚するが、彼女は末期ガンを宣告される。ルイスは彼女のために、庭に迷い込んだ子猫の絵を描き始める。出演は、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のベネディクト・カンバーバッチ、「ファースト・マン」のクレア・フォイ、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のアンドレア・ライズボロー。ナレーションは、「女王陛下のお気に入り」のオリヴィア・コールマン。監督は、俳優としても活躍するウィル・シャープ。
  • 映画評論家

    上島春彦

    主人公の画家の絵は、精神疾患の進行につれて画風が変貌する典型的な例として昔から有名だが、最近は不用意にそういうことを言うと怒られる。学者が推測で制作年代を勝手に特定した疑惑が浮上している。映画を見るとそっちのギザギザした抽象的なタッチの画風は一瞬しか出てこない。元祖キモカワイイ系の前半生の絵はたっぷりフィーチャー。ところで映画では主人公の名前は「ルイ」とあえてフランス風に発音されているようだ。意図的な処理だろうが。撮影がベラボーに美しい。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    シリアスな題材をあたたかみのある映像で美しく仕上げている。しかし3日間に焦点を絞った伝記映画であるパブロ・ララインの「スペンサー ダイアナの決意」の直後に観ると、より長いスパンでその人物の生涯を描く手法をとる本作はひとつひとつの挿話が薄味で、ウェルメイドではあるもののどうしても物足りなさを禁じ得ない。「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」など、風変わりな役柄を演じさせたらベネディクト・カンバーバッチは言うまでもなく巧いのだが。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    作者が正気を失うにつれてサイケ調になっていったとされる一連の猫の絵で有名なルイス・ウェインの自伝。こだわりの映像技法を用いてスタンダードサイズいっぱいにおさめられたカーニバリッシュな世界が良いときのテリー・ギリアムを想起させる。ベネディクト・カンバーバッチはいつも通り素晴らしく、脇を支えるひとくせもふたくせもある女優たちがことごとく魅力的なので、女系家族が一堂に会するシーンはいずれも見どころだ。当然ながら狂気は我々の外側でなく内側に存在する。

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