神田川のふたりの映画専門家レビュー一覧

神田川のふたり

「れいこいるか」のいまおかしんじ監督が贈るハートフル青春ロードムービー。互いに好意をもっていながら伝えきれずに別々の高校に進学した舞と智樹は、中学時代のクラスメイトの葬儀で再会する。亡き友を偲びながら「神田川」の水辺を行く二人のかけがえのない一日が描かれる。舞と智樹を演じるのは「スパゲティコード・ラブ」(21年)の上大迫祐希、「アルプススタンドのはしの方」の(20年)の平井亜門。「渡ると幸福が訪れる」という杉並区の「幸福橋」から始まり、「別れの名所」といわれる武蔵野市の「井の頭恩賜公園」までを行く。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    開始10分、全篇ワンカットでいく気だと震える。ただスタイルは所詮スタイルだよな、細かい話や感情は拾えないよな、無理してワンカットでいかなくてもとも思う。しかし、40分で終わる。話はそこから面白くなる。というか動く。でも、これならこのままワンカットで最後までいったら、どれだけ感動的だっただろうと残念に思う。ないものねだり。主役ふたりが素晴らしい。しかし、AFFに通ったから作らなきゃいけない映画って、一体なんだ? 本当に必要なところに届いているのか。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    開巻からタイトルまでの約40分の長回しがやっぱり面白い。高校生の男女が川べりの道を延々と自転車で走りながら、しゃべっているだけなのに見飽きない。走り続ける自転車と過ぎ去っていく風景。その絶え間ない運動感。いったい次に何が起こるんだろうというワクワク感。そしてまたコロコロと変わり続けてとどまることがない上大迫祐希の表情。好きなんだけど、好きと言わない、好きと認めない、でも気になる。そんなごく平凡な感情が生々しく豊かに伝わる。これが映画だ。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    神田川に沿って途方もなく続く、冒頭からの超長廻し。道幅も狭く制約だらけの無茶ぶりを、個々に自転車まで乗りつつ、ともに乗り切ろうと助け合うさまが、相思相愛のくせに友情ごっこに逃げてきた彼らの関係性とも重なり、じれったさが痛いほど伝わるため、じゃれ続けるふたりを俄然応援したくなる。怪しげなおっさんから軟派な兄ちゃんまで、適材適所でよい仕事をする人物すべての登場も、想いを告げることなく急逝した幼なじみの計らいに見えてくる、切なくも幸福な味わいの逸品。

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