この子は邪悪の映画専門家レビュー一覧

この子は邪悪

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の南沙良主演のサスペンス。家族で交通事故に遭った花は心に傷を負い、母・繭子は植物状態に、妹は顔に火傷を負う。ある日、心理療法室を営む父・司朗が5年振りに目を覚ました繭子を連れて帰るが、花は違和感を覚える。出演は、ドラマ『彼女、お借りします』の大西流星、「コンフィデンスマンJP ロマンス編」の桜井ユキ、「極主夫道 ザ・シネマ」の玉木宏。監督・脚本は、「ノイズ」脚本の片岡翔。オリジナル作品の企画コンテスト・TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2017の準グランプリ作品。第42回ポルト国際映画祭審査員スペシャルメンション。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    呆れた。商品以前のモノを見せられている感じ。ノンジャンル映画というのは、ホラーも青春もサスペンスも中途半端でいいということではない。主舞台の精神科医の家。ただ撮らないで黒沢清や鶴田法男を観て勉強すればいいのに。虐待児童を助ける解放者が家族のために略奪者に変わるという発想はいいのに。兎と脳内記憶の交換って、荒唐無稽をやるにも最低限のルールがある。結局それは人間描写にも敷衍する。これを準グランプリにし映画化する不見識から変えないと映画は変わらない。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    交通事故で傷ついた家族の再生をホラーにするという発想が面白い。「幸せになろう」という強迫観念を具体的に表現したラストも鮮やか。怨霊とは無縁の明るいトーンは北欧ホラーのようで新鮮だ。新鋭監督にオリジナル脚本で撮らせるTSUTAYAのプロジェクトならではの作品だと思う。ただ設定のユニークさに比べて、いささか物足りないのがドラマの緩急と映像の強度。父親役の玉木宏が最初から怪しく、映画の半ばでこの男の企みはほとんど露呈してしまい、緊迫感に欠ける。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    虐待やネグレクトも、独善的で過剰な愛情も、親が身勝手に子どもの自我や尊厳を無視している点では、確かに紙一重かもしれない。ただ、何とも薄っぺらな正義や倫理観をかざして裏テーマらしきものを叫ばれても、幸せだった頃まで時間を巻き戻したいという、誰の身にも覚えのある切実な感情が発端のはずなのに、心に響くどころか、憤りすら覚えてしまう。意外性に欠ける真相が明かされるにつれ、恐怖や高揚感よりも、嫌な予感が的中する倦怠感ばかりが募る、奇怪なサイコスリラー。

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