おもいで写眞の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
ナント町役場が、おもいで写真という名目で遺影写真の斡旋!? 映画の軸は、年配者相手にその写真を撮ることになった結子の成長ものだが、29歳、東京で目指した仕事に不向きと言われ、故郷にUターンしてきた結子の無神経、かつ未熟な言動がいちいち不愉快で、いくらその理由に触れていても、あっちへ行ってよ。オリジナル脚本は、記憶と思い出、思い込みについても言及しているが、とにかくこの主人公が手に余る。年配者たちのせっかくの笑顔写真が結子のサシミのツマに見えたりも。
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編集者、ライター
佐野亨
深川麻衣は、横顔が語る女優である。熊澤尚人監督と撮影の月永雄太は明らかにそのことを意識していて、彼女の横顔が次の展開を予期させたりさせなかったり、そのスリリングな振幅で物語を運んでいく。この映画の最大の見どころである。一方で彼女以外の俳優陣、むしろベテラン勢はというと、それぞれの役柄を達者にこなしているという感じで、ありうべき「おもいで」がいまひとつ身体化されてこない。写真に語らせようとするまえに、映画の語りにもう少し工夫がほしかった。
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詩人、映画監督
福間健二
コンスタントに作品を放ちつづける熊澤監督。本作のストーリーは九年前に書き、推敲を重ねてきたそうだ。題材への肩入れは納得できる。遺影のための写真を、その人の思い出の場所で撮り、よろこんでもらう。最初はふてくされ気味だった深川麻衣のヒロインがその仕事をやりながらポジティブに変化する。障がいと老いや地方の問題も視野に入れ、堅実に、そしてわかりやすく、ということだろうが、人物の性格や行為の動機づけの、いちいち作っている理由が浅く、底割れするのが惜しい。
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