テロ組織が支配する島から脱出せよ! リアルを徹底重視した映画「ロスト・フライト」

「エンド・オブ・ホワイトハウス」や「グリーンランド―地球最後の2日間—」など、数多くの映画でピンチに陥った人々を腕力と抜群の機転で救い、いざという時に頼りになる男を演じたらNo.1と言っても過言ではない俳優ジェラルド・バトラー。そんな彼が、最新作『ロスト・フライト』(11月23日全国公開)では、反政府組織が支配する島に飛行機を不時着させてしまうパイロット、ブロディ・トランスを演じている。トランスは、飛行機については隅々まで熟知しているが、戦闘に関するスキルはない普通の男…。「ああ、いつもの感じか」と思った人はちょっと待ってほしい。本作がいかに凄いのかをご紹介しよう。

ジェラルド・バトラーが無法地帯で大奮闘する敏腕パイロットに!

まずはキャスト・スタッフから。主演のジェラルド・バトラーは製作も兼任し、並々ならぬ想いを本作に注いでいる。不時着する飛行機の同乗者であり、トランスとタッグを組むことになる元軍人の犯罪者ルイス・ガスパール役には、マーベルのNetflixドラマシリーズ『ルーク・ケイジ』でお馴染みのマイク・コルター。監督は、「アサルト13 要塞警察」や「ブラッド・ファーザー」など、硬派な作品を得意とするジャン=フランソワ・リシェが務めている。

かなり期待がアガる布陣だが、脚本を手掛けたチャールズ・カミングも忘れてはならない。そもそも本作は、元MI6のベストセラー作家である彼が家族旅行中に「自分たちが乗った飛行機が、テロリストの支配する地域に行き先変更になったら…」という思い付きから始まっている。“経験者”にしかわからない現場のリアルを盛り込み、秀逸なプロットを完成させた。


フライトパニック→脱出サバイバルへの鮮やかな転換

次に、肝心のストーリーについて触れよう。冒頭、トランスが会社からの指示で悪天候のなかフライトに臨むシーンから不穏な空気がプンプン。彼を含む乗客17名を乗せたトレイルブレイザー119便は、案の定、激しい嵐に遭遇し電気系統が全てストップしてしまう。やむを得ず不時着した先は、凶暴な反政府ゲリラが支配する無法地帯・ホロ島。残されたのは疲弊しきった乗員乗客と、護送中の殺人犯ガスパール。舞台は揃った。ここからトランスはどう動くのか。

飛行機の仕組みやコックピットのことを熟知したというバトラーが見せる、機長としての鮮やかな手さばきや立ち居振る舞い、緊迫感あふれる不時着シーンなど、フライトパニックとしての説得力は十分。しかし、それは序の口。本作をより面白くさせているのは、そこからトランス(&ガスパール)VSゲリラ組織の脱出サバイバルになだれ込む点だ。

「まずは外部に電話!」ということで、右も左も分からないホロ島を探索するトランス&ガスパール。この時点で彼らはまだ、島に凶悪なゲリラ組織がいることに気付いていない。しかし、徐々に2人の脳裏をある想いがよぎる「この島は何かがおかしい…」と。そうこうしている間に、不時着地点に残してきた乗員乗客がゲリラの人質にとられ、トランスたちは四面楚歌のなか救出へ向かうのだが…。物語の序盤と終盤で全く違うジャンルになる、逆に言うと1作品で2つのジャンルを楽しめる、「ロスト・フライト」はそんな映画だ。


リアルを最優先しドキュメンタリーのような臨場感を実現

正義、勇気、友情、絆、贖罪…あらゆるテーマがこれでもかと盛り込まれ、観客としては既にお得感がいっぱいなのだが、本作をすごいと断言する最大の理由は「リアリティを追求した描写」にある。劇中で登場する傭兵チームには元ネイビーシールズ(米国海軍の特殊部隊)の俳優たちを起用し、激しい戦闘が始まるや彼らの鮮やかな身のこなしを堪能できるキラーショットが満載。また、ワンテイクで撮られたトランスとゲリラの2分にも及ぶ一騎打ちのシーンは、観ている側も自然と体に力が入ってしまう異常なまでの熱気に包まれている。これぞまさに、まるで自分もその現場に放り込まれたような臨場感と言えるだろう。

さらに、だ。物語の舞台となっているフィリピンのホロ島は実在する。脚本のチャールズ・カミングらは特殊部隊の工作員に「足止めを食らったら困る場所」についてリサーチを重ね、最終的にこの場所に決定したという。ホロ島にはイスラム過激派アブ・サヤフの拠点が存在し、外国人を狙った身代金目的の誘拐事件も横行している。

今度ばかりは不死身の男ジェラルド・バトラーも死亡フラグ不可避なのでは⁈ と少しでも思ったのなら、その結果をぜひ映画館の大スクリーンで確かめてみてほしい。今回のジェラルド・バトラーの“漢っぷり”も絶品だから。

 

文=原真利子 制作=キネマ旬報社


「ロスト・フライト」
11月23日(木・祝)より全国公開
2022年/アメリカ/107分  

監督:ジャン・フランソワ・リシェ 
脚本:チャールズ・カミング 
出演:ジェラルド・バトラー、マイク・コルター、トニー・ゴールドウィン

配給:ポニーキャニオン
© 2022 Plane Film Holdings, LLC. All Rights Reserved.
公式HP:https://lostflight.jp

 

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