映倫 次世代への映画推薦委員会推薦作品 — 「駒田蒸留所へようこそ」—

ウイスキーも家族の絆も年月をかけて熟成されていく

「花咲くいろは」や「SHIROBAKO」など、〝働くこと〞をテーマに、日々奮闘するキャラクターを描いてきたP.A. WORKSによる〝お仕事シリーズ〞最新作。普段、あまり触れられることのないジャパニーズ・ウイスキーの蒸留所を舞台に、四代目女性社長・駒田琉生と彼女を取り巻く人々の成長を描き出す。 監督は「有頂天家族」シリーズの吉原正行。声優には早見沙織や小野賢章、内田真礼ら人気キャストが揃った。

若くして社長となり、自ら開発した『わかば』をヒットさせた琉生。ウイスキーに対する並々ならぬ情熱も知識もあり、彼女にとってこの仕事は天職のように見えた̶̶いつまで経っても〝やりたいこと〞が見つからない新人記者・高橋にとっては。「なんで俺がこんなこと……」と文句を垂れながらしぶしぶ取材を続ける高橋だが、琉生の知られざる過去が判明したことで、彼の心にも変化が訪れる。

劇中、琉生の兄は言う。「どうありたいかさえ見えていれば、どこから始めても辿り着ける」と。今の仕事は望んでいたものと違うかもしれない。でも、それを悲観するのではなく、そこでどう生きるか。何をすべきか。誰もが悩み、考えながら生きている。ウイスキーの蒸留所の物語ではあるが、それはきっと働く誰もの心に響くメッセージではないだろうか。

また、本作には〝家族の再生〞というテーマもある。父の死と震災を機に途切れてしまった家族の絆。琉生たちが、代々伝わる家族のお酒=『KOMA』をもう一度造ろうと奮闘する姿は非常に感動的である。人と人とのつながりや想いの大切さ、そして、社会人として自分はどうありたいのかを改めて考えさせる。自分のやるべきことを探している人はもちろん、今そこで働いている人にも観てほしい一作だ。


文=原真利子 制作=キネマ旬報社
(「キネマ旬報」2023年11月号より転載)


 


「駒田蒸留所へようこそ」

【あらすじ】
先代である父亡き後、家業の「駒田蒸留所」を継ぎ、日々ウイスキー造りに奮闘する若き社長・駒田琉生。経営難に陥った蒸留所の立て直しと共に、バラバラになった家族と、幻のウイスキー『KOMA』の復活を目指していた。一方、やりたいことを見出せないニュースサイトの記者・高橋光太郎は、琉生からの依頼で、ウイスキーに関する連載を始めることになり……。

【STAFF & CAST】
監督:吉原正行
声:早見沙織、小野賢章、内田真礼、細谷佳正

配給:ギャガ
日本/2023年/91分/区分G

11月10日(金)全国順次公開

▶公式HPはこちら

©2023 KOMA復活を願う会/DMM.com

 

最新映画カテゴリの最新記事

今日は映画何の日?

注目記事