シンガポール初のクリーチャー長編映画! 地下鉄が舞台のモンスター・サバイバルアクション「グアイウ 地下鉄の怪物」

シンガポールの大都市の地下空間に、血管のように複雑に張り巡らされた広大な地下鉄網。その迷宮のような閉鎖された地下空間の鉄道路線構内で、未知の怪物に襲われる恐怖を描いたモンスター・サバイバルアクション「グアイウ 地下鉄の怪物」のレンタルが10月13日より先行リリース(セル・11月8日)。日本でも日々の利用者が数多くいる地下鉄を舞台にした本作の見どころを紹介する。


シンガポールの地下鉄に巣食う怪物が乗客を襲う!

「グアイウ 地下鉄の怪物」は、新宿のミニシアターの新宿シネマカリテが、厳選した世界の新作映画を7月14日~8月10日に上映した映画フェス“カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2023”(カリコレ2023)内で日本初公開された、最新のシンガポール映画。

ある日、多くの帰宅客を乗せていつも通りに運行していたはずのシンガポールの地下鉄の終電車が、突如制御不能となり、コースを外れて大暴走。現在は使用されていない廃墟と化したトンネルに突き進んでしまう。線路の終端が迫る中、列車はようやく急停車。けが人は出たものの、脱線や衝突などの最悪の事態は避けられたと思ったのも束の間、一人で車外に出て線路沿いに歩いて戻ろうとした乗客が、何かに襲われる。そこは未知の怪物の巣窟となっていたのだった。

地下鉄指令室が暴走車両の行方を見失う中、携帯も繋がらず、場所もわからない地下に取り残された乗客たちは、地下鉄車内にまで侵入してきた謎の怪物と遭遇し、次々と襲われていく。そして、取り残された乗客の中には、母親に預けていた幼い息子のルーカスを仕事帰りに迎えに行った後、一緒に帰宅中だったシングルマザーのイー・リンもいた。彼女はルーカスを連れて、他の二人の乗客と共になんとか車外に逃げ出すものの、必死の抵抗もむなしく、追い詰められる。しかし、次々と人間を無残に襲ってきた怪物は、なぜかルーカスにだけ特異な反応を示し、彼を連れ去ってしまう。果たして、彼女は愛する息子を連れ戻し、怪物が巣食う地下空間から脱出することができるのか……?

様々なジャンルの娯楽要素を詰め込んだエンタメ作

大都市の生活に欠かすことのできない身近な交通インフラの一つである地下鉄が、恐怖と惨劇の舞台となる本作。劇中では、開通直前に計画中止となって途中放棄された、一般的には知られていない未開通路線の工事現場や、システムの老朽化および新路線開発を優先する会社の方針などによりトラブルが多発している地下鉄路線が登場。その過密かつ複雑な地下鉄網は、都心に暮らす人々なら誰でも身近に感じることだろう。東京でも地下鉄の旧新橋駅ホームなどが有名だが、現在は使用されていない駅や諸事情で未開業となった路線工事跡などは、どこにあってもおかしくない。そんな場所に迷いこんでしまっただけでも怖いが、そこで未知の怪物に襲われるというのは、想像を絶する恐怖を感じる。

列車事故により閉鎖空間に取り残された乗客たちが、怪物に襲われる恐怖と戦いながら生き残ろうとする脱出劇に、愛する我が子を命がけで守ろうとする親子愛も絡めて描かれる本作。地下の下水道に巣くう両生類のような未知の怪物に襲われる2006年の韓国映画「グエムル 漢江の怪物」と、高速鉄道車内が恐怖の舞台となる2016年の韓国映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」を融合させたような作品ともいえ、モンスター、サバイバル、パニック、アクション、ホラーなど、様々なジャンルの娯楽要素を詰め込んだ作品ともなっている。

心を揺さぶられる二組の親子愛と極限状態の人間模様

親子愛の物語については、シングルマザーの主人公とその息子だけでなく、もう一組のある父と娘の物語も綴られる。シングルマザーの主人公が、息子を救うために過去のトラウマを乗り越えて命がけで怪物に挑む姿と、会社のしがらみに囚われていた父親が、娘のために何もかも投げうつ姿は、心を揺さぶられるだろう。また、クライマックスでは、冒頭で語られていることなどが物語の鍵を握る伏線回収もあるし、極限状態や危機的状況に追い込まれた乗客と地下鉄運営会社の社員たちの人間模様も、見どころとなっている。

監督のJ.D.チュアは、「ヒート」(1995)「インサイダー」(1999)「コラテラル」(2004)などの巨匠マイケル・マン監督に師事していたという。そんなJ.D.チュアによるハリウッド仕込みの洗練された視覚効果やデザインも活かされ、シンガポール映画としては初の本格的な長編クリーチャー映画を生み出した。そのクリーチャー造形も、この作品の大きな見どころの一つだ。また、オリジナル言語は中国語だが、吹替版で見ると日本の地下鉄で撮ったかのような臨場感を味わえそう。80分ノンストップで駆け抜け、見る者を釘付けにするエンタメ作となっている。

文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社

 



『グアイウ 地下鉄の怪物』

●10月13日(金)レンタルリリース(セル:11月8日)

●2023年/シンガポール/本編80分
●監督:J.D.チュア
●出演:ジェセカ・リウ、ピーター・ユー、アンディ・チェン、パトリック・ペイシュー・リー

●発売・販売元:ツイン
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