直視できない超残酷ホラー『テリファー 終わらない惨劇』がレンタルリリース! 新たなホラーアイコンとなった理由とは?

「全米が吐いた!?」という強烈すぎるキャッチコピーで話題になり、超残酷描写の連続からR18+(18歳未満入場・鑑賞禁止)に指定されたにもかかわらず、劇場にはホラー映画マニアだけでなく、一部、若い女性やカップルまでが怖いもの見たさでやって来た問題作『テリファー 終わらない惨劇』のBlu-ray&DVDが10月13日にレンタル・セル同時リリース。忌み嫌われてもおかしくないアンチモラルでグロテスクな殺人鬼が新たなホラーアイコンになった理由とは──。

脳天串刺し、内蔵引き出し、目玉えぐり……

ひたすらグロいシーンが続く。直視できな人体破壊でスクリーンは鮮血色に染まりっぱなしだ。『テリファー 終わらない惨劇』は今年公開されたホラー映画の中でも残酷度では群を抜く。百戦錬磨のホラー映画通さえ、「これはやりすぎでは」という声もあった。しかし多くのホラー映画ファンが、この極度にむごたらしい映画を観るために劇場に並んだ。

ある年のハロウィンの夜、9人の市民が殺される凶悪事件が起きる。前作「テリファー」で描かれた“マイルズ郡大虐殺“と呼ばれた事件だ。本作はその直後から始まる。ピエロの姿をした殺人鬼は死亡したが、その遺体が忽然と消える。

それから1年後のハロウィンの夜、死んだはずのピエロが再び街に現れ、はしゃぐ人々を無差別に殺し始める。前作と同様、ピエロは神出鬼没、おどけた仕草を見せながら出会った市民を無差別に惨殺する。ある女性は生きたまま頭の皮を剥がれ、手足も無惨に折られて人間生け花のようになる。ある者は釘を打ち込んだバットでズガーンとノックされ、顔面が穴だらけに。お決まりのディスコ抜け出しカップルの男性は、大事な場所をスッパリと……。脳天を串刺しにする、皮膚を燃やす、内蔵を引き出す、目玉をえぐる。生殺しにされて血糊にまみれる被害者たち。痛い、熱い、苦しい……、とても見ていられない最低最悪の殺人ショー。

だが、この映画は不思議とホラー映画ファン以外の観客にも受け入れられた。そればかりでなく、主役の残虐な殺人ピエロ、アート・ザ・クラウンは新時代のホラーアイコンとして注目され、フィギュアまで発売された。映画サイトのユーザーレビューには「アート・ザ・クラウンかわいい!」といった投稿も見られた。実に不思議な現象だ。殺人ピエロはなぜ人気者になれたのだろう。

アート・ザ・クラウンはなぜ人気アイコンになったのか

いわゆるモダンホラーと呼ばれる1970年代以降の恐怖映画から人気アイコンになったキャラは数多い。『悪魔のいけにえ』のレザーフェイス、『13日の金曜日』のジェイソン、『ハロウィン』のブギーマン、『エルム街の悪夢』のフレディ……多くのキャラクターがホラー人気を盛り上げたが、彼らには共通するものがある。

1)見た目がグロテスクすぎない。シンプルな怖さを感じる外見
2)適度にコミカルな仕草。時に「可愛さ」さえも見せる残酷とのコントラスト
3)大げさで、やり過ぎさえ感じる暴力、残酷行為。
 
以上の3点を兼ね備えた時、キャラクターは人気アイコンになれるのだ。アート・ザ・クラウンはこの3つの要素を持っている。トランプに描かれたシンプルなジョーカーのような外見。かぎ鼻や白黒ツートンの地味な衣装。それらは懐かしさすら感じさせるルックだ。また演じる俳優が徹底的に訓練したというピエロのしぐさも重要だ。サーカスや大道芸で見かける一瞬で人の心をつかむアクションは、残酷殺人との落差を際立たせつつ、観客をクスリとさせる。そして特殊メイクアーティストでもある監督ダミアン・レオーネの凝りに凝った被害者たちの死体造形や大量の血糊。それらはグロテクスでありながらもリアルすぎない。映像の質感も70~80年代のフィルムに近づけ、レトロ感を強調する。そのせいで観客は「これは映画だ」と割り切って見ていられる。フィクションとしてのテイストが強調されているからこそ、本作はマニア以外にも受け入れられたのではないか。見ていて嫌な気持ちになる実録犯罪映画などとの決定的な違いがそこにある。

続編は?「テリファー」シリーズが大化けする可能性

加えて本作は映画にファンタジー的な要素を加えたことも効果的だった。ファイナル・ガール(最後まで生き残るヒロイン)シエナの美しく勇敢な姿、最終局面で立ち直る意外性はファンタジーRPGに慣れた若者の指向にフィットした。さらにアート・ザ・クラウンの妹的キャラ、リトル・ペイル・ガールの登場などはホラー一色ではない、別次元の楽しさを映画に加えている。リトル・ペイル・ガールは不気味ないでたちでありながら、現実のハロウイン・イベントでコスプレできそうなキュートさと親近感がある。  

前作「テリファー」は予算が35000ドル(約520万円)の自主映画で、日本では当初、DVDストレートだった。しかし口コミで人気になり、2作目の本作はクラウド・ファンディングに25万ドル(約3700万円)もの資金が集まり、全米で劇場公開され1500万ドルの興収をあげた。日本でもダミアン・レオーネ監督作品の劇場初公開となり、続けて前作「テリファー」もスクリーン上映されている。
 
本作を最後まで観れば、監督が続編に意欲満々とわかるだろう。3作目は、さらに大きな予算で製作され、メジャースタジオが関与するシリーズとして大化けする可能性もある。ホラーはマニアックなジャンルでもあるが、自主制作から下剋上するポテンシャルも秘めていると本作は教える。映画はどうすれば成功するのか、その秘訣を探るためBlu-rayなどのメディアで繰り返し鑑賞、研究してほしい“テキスト”でもある。

文=藤木TDC 制作=キネマ旬報社

 



『テリファー 終わらない惨劇』

●10月13日(金)レンタルリリース(セルも同日)

●2022年/アメリカ/本編138分
●監督・脚本・VFX・特殊効果:ダミアン・レオーネ
●撮影:ジョージ・ステューバー
●プロデューサー:フィル・ファルコーン
●出演:ジェナ・カネル、ローラン・ラベラ、デイヴィッド・ハワード・ソーントン

●レンタル 発売・販売元:プル―ク 
●セル 発売元:プルーク/販売元:アメイジングD.C.
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