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「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」をより楽しむために【後編】 世界観ごとに映像が細かく変貌する、美しいアート!

大人から子供まで誰もが知るヒーローの“スパイダーマン”。最新作「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」のBlu-ray&DVDが10月4日にリリース(レンタル同日)されたのに合わせ、どのような歴史を経て今の人気まで辿りついたのか。その歴史と最新作の魅力を探る【後編】をお届けする。

▶【前編】:「コミック、実写、アニメ、それぞれの特性を生かしたスパイダーマンたち」はこちら


貪欲に、“スパイダーマン”と呼べるものはすべて取り込む!

スパイダーマン史上初めての劇場長篇アニメーション・シリーズの第2作となる「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」。今やマーベルの実写映画でも当たり前となったマルチバースというアイデアを本格的に導入した前作に続き、さらに拡張した世界を見せてくれる。ライバルのDC「ザ・フラッシュ」でも導入されたアイデアだが、「スパイダーバース」シリーズが突出しているのは、その世界観の映像表現の凄さである。

アニメーションということも関係しているだろうが、そのヴィジュアルはまさにアート。実写映画「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」でトビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールド、トム・ホランドが奇跡のスパイダーマン共演を果たしたときにも感動を覚えたが、ぶっちゃけその比ではない。「スパイダーバース」の世界においては、それぞれのスパイダーマンのキャラクターごとにそれぞれの色彩・デザインをベースにし、世界観ごとに映像が細かく変貌する。まるでさまざまなスタイルのアニメーション表現が同時に存在しているかのような目まぐるしさ。そのワンカット、ワンカットがとても美しく、アートとしての見応えを備えている。アメリカン・コミックスではひとつのキャラクターをいろんなアーティストが手がけているように、タッチもカラーも違うスパイダーマンたちがひとつの画面の中で同時に活躍する。

特に、本作ではマルチバースの世界を守るための“スパイダー・ソサエティ”なるスパイダーマンたちによる組織が登場する。だから、顔を見せるスパイダーマンの数もただごとではない。スパイダー・グウェンやスパイダーマン・インディア、スパイダー・パンクといったメイン・キャラクターはもちろん、猫、馬、恐竜までスパイダーマン化させているだけでなく、おもちゃのブロック、あのレゴのスパイダーマンまで顔を見せる。スパイダーマンと呼べるものはすべて作品に取り込んでしまおうという貪欲さ。しかも、そのすべてが個性的な絵柄なのだ。


次回作への期待が高まる衝撃のラスト

そして何より素晴らしいのは、本作で展開されるのが、そんなスパイダーマンだらけの“スパイダー・ソサエティ”を敵に回して戦う決意の物語になっているところ。前作はスパイダーマンになる運命を背負った少年マイルス・モラレスの成長ストーリーだった。今回のオープニングは、前作でマイルスと友人になったグウェン・ステイシーの孤独な心情の描写からスタート。まるで主人公がマイルスからグウェンへと移ったかのような感覚。そんなグウェンが引き込まれたのが“スパイダー・ソサエティ”なのだ。

マイルスはグウェンを追うように“スパイダー・ソサエティ”を訪れるが、そこに待ち受けていたのはマルチバースの世界を維持するための必須条件、これから観る人のためにあえてネタバレは伏せるが、ある人物の死だったのだ。マイルスは、そんな勝手に決められた運命に反発しつつ、すべての世界を守るために“スパイダー・ソサエティ”に反旗を翻す。僕らに馴染みのあるスパイダーマンことピーター・パーカーは自分の力に責任を持つために運命を受け入れていた。前述の「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」でもトム・ホランド扮するピーターはマルチバースを守るために自分を犠牲にしたが、本作のマイルスはスパイダーマン軍団を敵に回してまでも、そのすべてを守ろうとするのである。 

そんなドラマが極上のアニメーションで描かれる本作は、今さら言うまでもなく2部作の前篇。かつてハン・ソロが囚われて終わった「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」のように、最近の、とんでもない敵の居場所を開けるのに必要な鍵だけ手に入れて何も解決しなかった「ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE」のように、衝撃とともに、次回作「スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース」へのワクワク感に繋がるラストを迎える。次回作ではどんな冒険と戦いが繰り広げられるのか。

なにしろ、本作には実写「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールドや、実写「ヴェノム」のコンビニエンスストアのおばさんが出ていたり、「スパイダーマン:ホームカミング」のコソ泥役のドナルド・グローヴァーがプロウラー(マイルスの叔父に当たる)姿になっていたりと実写映画の世界までもが本作に登場してきた。次回作でどこまで世界を引っ掻き回すのか。東映の特撮シリーズの『スパイダーマン』、そしてレオパルドンもついに活躍を見せるかも。本作を何度も繰り返し観て、完結となる後篇に備えてもらいたい。

文=永野寿彦 制作=キネマ旬報社(キネマ旬報10月号より転載)

 

 

『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』

※写真はプレミアム・スチールブック・エディションのものです

●10月4日(水)Blu-ray&DVDリリース(レンタル同日リリース)  
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2023年/アメリカ/本篇140分
監督:ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン
製作:アヴィ・アラド 
製作・脚本:フィル・ロード、クリストファー・ミラー 
声:シャメイク・ムーア(小野賢章)、ヘイリー・スタインフェルド(悠木碧)、ジェイク・ジョンソン(宮野真守)、オスカー・アイザック(関智一)、イッサ・レイ(田村睦心)ほか 

発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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