ほから始まるものでの検索結果

作品情報
条件「ほから始まるもの」の作品 2295件)

人物
「ほから始まるもの」を人物名に含む検索結果 3884件)

記事
「ほから始まるもの」の検索結果 50件)

  • 太平洋戦争下の広島県呉市に慎ましく生きる人々を描いた名作漫画『この世界の片隅に』。評判を呼んだアニメ映画や実写ドラマに続き、このたびミュージカルとなる。5月9日(木)の日生劇場での開幕を前に、主人公の浦野すずをダブルキャストで演じる昆夏美と大原櫻子、音楽を手掛けたアンジェラ・アキ、原作者のこうの史代が稽古場で対面。作品を語り合った。   [caption id="attachment_37838" align="aligncenter" width="850"] 左から大原櫻子、こうの史代、アンジェラ・アキ、昆夏美。それぞれ手にしているのは原作コミック【新装版】上巻、CD「アンジェラ・アキ sings『この世界の片隅に』」、ミュージカル台本、原作コミック【新装版】下巻[/caption]   大原 今日はお忙しいなか、稽古場までいらしていただきありがとうございます。 昆 お会いできて本当に嬉しいです。緊張していて、うまくお話できるか分かりませんが(笑)。 こうの いえいえ、私こそ嬉しいです。お二人とも、キラキラキラキラされていて。 アンジェラ そうなんですよ。それに二人とも、もうすずさんそのもの。今日は昆ちゃんの稽古を見ていただきますが、どちらも魅力的なので、本番はぜひ両方見ていただきたいですね。 ●原作者に聞く「すず」誕生秘話 昆 私が最初に原作を読んだ時に心打たれたのは、戦争を扱っていながら、常に温かい空気が流れているところでした。「戦争はいけません!」と声高に訴えるのではなく、今の私たちとも変わらない“人の心”に焦点が当たっていて、だからこそ、すずさんの喪失感がより迫ってきたのだと思います。その後も読む度に色々な発見があって、今、特に気になっているのはすずさんの表情。分かりやすく笑ったり怒ったりしている時もあれば、もっと奥深い表情をしている時もあることに気付いて、どう自分の中に落とし込んだらいいかを考えながらお稽古しています。 こうの 確かに、そこは演じる方の解釈によってくるところですよね。すずの個性に昆さんと大原さんの個性が重なった時にどうなるのか、すごく楽しみです。 大原 すずちゃんの個性というところでぜひお聞きしたいのですが、主人公を「ボーっとした」キャラクターに設定したのはどうしてなんですか? こうの そのほうが、この時代と場所に馴染みのない読者でも、物語に入り込みやすいと思ったんです。主人公が最初から呉でチャキチャキ頑張っている人だと、会話の中で状況を説明する隙がないですよね。でもよそから来たボーっとした人が主人公なら、主人公が周りの人たちに色々と質問をして、それに答える形で状況の説明ができるんです。 アンジェラ ああ、なるほど。私もそこはぜひお聞きしたかったのですが、すごくしっくり来るお答えです。 ●ノンフィクションのようなリアリティ アンジェラ すずさんや周りのキャラクターに、モデルはいるんですか? こうの 周作の職業だけは私の親戚をモデルにしていますが、あとは全部創作ですね。 アンジェラ そうなんですね! 初めて原作を読んだ時、私にはまるでノンフィクションのように感じられて、先生ご自身やご家族の体験談なのかと思ったほどでした。 大原 分かります、それくらいみんなリアルなんですよね。私はすずとリンさんの関係性にも惹かれているのですが、リンさんはどんな思いから生まれたキャラクターなのでしょうか? こうの すずに家族とはまた違う、同世代の友達との世界を作ることで、もうひとつの“世界の片隅”を表現したかったというのがひとつ。それから、当時の呉には実際に遊郭があったので、そういう過酷な境遇の人たちをいなかったことにはできない、というのもありました。 大原 ありがとうございます。やはり史実に基づいているからリアルなのですね。 昆 少し話が逸れてしまうのですが、すずもリンも、元素名から名前が取られているんですよね。調べてみたら全員そうで鳥肌が立ったのですが、それはなぜなんですか? こうの キャラクターの名前って、自分の思いつきだと似通ってしまうから、系統立てて考えることが多いんです。最初は呉の地名にしようかと思ったのですが、呉には硬い地名が多いんですね。悩んでいた時、たまたま近くに周期表があったので、これを使おうと(笑)。たくさんある元素の中で「すず」を主人公にしたことには、私が飼っていたインコの「すずしろ」が関係しています。ある時いなくなってしまったのですが、どこかでずっと元気にしていてほしくて、新天地で頑張る主人公にその思いを込めたんです。 昆 そんな大切な思いが込められていたんですね! お聞きできて良かったです。 アンジェラ 本当に。貴重なお話ばかりで、なんだか得した気分です(笑)。 ●オリジナル作品ならではの苦労と喜び こうの 私はディズニーのミュージカルアニメが大好きなので、自分の漫画がミュージカルになるなんて夢のようで、アンジェラさんの歌われたデモテープも感動しながら聞かせていただきました。ミュージカルが出来上がっていく過程を垣間見られるのも刺激的で、これから見学できるのも本当に楽しみなんですが、お稽古で特に苦労されているのはどんなことですか? アンジェラ 今回が初演のオリジナル作品なので、最終形が見えていない難しさはやはりありますね。でもだからこそ、キャストの皆さんと一緒に作れている感覚があって楽しいです。特にすずの二人は、「すずはこういう言い方はしないと思う」といったフィードバックをくれる頼もしい存在で、それを受けて歌詞を変えたりもしているんです。私はこの作品が長く続いていくことを願っているのですが、最初のすずがこの二人で本当に良かったです。 大原 そんな、こちらこそ。アンジーさんが音楽や歌詞を変える相談もさせてくださるので、オリジナルならではの生みの苦しみはありますが、私も楽しくお稽古させていただいています。 昆 アンジェラさんは、強い思いを持って楽曲を作られたはずなのに、私たちの思いを汲んで柔軟に変更してくださるんです。こうの先生の生み出された温かい原作のもと、温かい人たちが集まって、温かい作品を作っている感じがすごくある稽古場です。 こうの 素敵ですね。漫画は基本的にひとりで作るもので、編集さんたちとの縦の関わりはありますが、ミュージカルのようにたくさんの人がいっぺんに、横に関わることがないんです。でも漫画にも、見えていないだけで本当はたくさんの方が関わっていることを、こうしてミュージカルになったことで実感できた気がします。 アンジェラ ミュージカルは、総合芸術なんですよね。私も自分のアルバムを作る時は基本的にひとりですが、今回はみんなとキャッチボールをしながら作っているから、大変ではあっても決して孤独ではない。それがミュージカルの醍醐味なのかもしれません。 昆 もうひとつ苦労しているのは、やはり原作の雰囲気を損なわないようにすること。原作ではどの話にも必ずオチがあって、そこも私の大好きなところなのですが、ミュージカルは2時間半ほどにまとまっているので、クスっとできるエピソードのすべては入っていないんですね。削られている分、温かい雰囲気をベースに置いておく、ということを意識しています。 こうの ああ、なるほど。そこはミュージカルならではの見どころになりそうですね。 ●ミュージカルの見どころ聞きどころ 大原 私から先生に見どころを紹介させていただくなら、すずと周作のデートのシーン。特に《醒めない夢》という楽曲が、二人の可愛らしさがギュっと詰まっていてすごく素敵なんです。演じていて楽しいですし、あのキラッとした空気感を先生にもぜひ味わっていただきたいです。 昆 私は、二度出てくる《この世界のあちこちに》に注目していただけたら嬉しいです。これからどんな物語が広がっていくのか、お客様がまだ知らない状態で一度歌われた曲が、すずさんが自分の在り方を見つけた時に再び歌われる、という構成が大好きなんです。二度目に歌う時には、涙をこらえるのに必死になってしまう楽曲です。 大原 聞くだけで涙が止まらなくなる楽曲が、本当にたくさんあるよね。アンジーさんおひとりから、どうしてこんなにも色々なメロディーや言葉が生まれるのだろうと感動してしまいます。どれも大好きなのですが、特に聞きどころだと思うのは、径子さんの歌う《自由の色》。すずの生き方や考え方が変わるきっかけの曲ですし、お客様一人ひとりが自分の《自由の色》を発見し、救われたような気持ちになれるのではないかと思います。 こうの 《自由の色》は、私もアンジェラさんのデモで聞いた時からジーンと来ていました。 アンジェラ ありがとうございます。今日はキャストの声で聞けますので、ぜひ楽しみになさっていてください。私が注目していただきたいのは、機銃掃射のシーンです。 こうの 漫画では顔のアップで進んでいくシーンだから、どう演じるんだろうと思っていました。 大原 そうですよね。漫画と同じようにはできない分、ミュージカルならではの表現になっていると思います。 アンジェラ 加えて、二人の演技がとにかく素晴らしいんですよ。このシーンあたりから、すずの感情がクレッシェンドしていき、最後には優しくデクレッシェンドしていくのですが、そのすべてが見どころですね。すずの熱量を表現するのは本当に大変だと思うのですが、二人とももう、「圧倒的」「ヤバい」といった言葉しか出ないくらいすごいパワーなんです(笑)。今日の通し稽古は昆ちゃんの回の予定ですが、実際に先生に見ていただけるのが私も楽しみです。 昆 あの、お手柔らかにお願いします(笑)。 こうの 「ハイやり直し!」なんて言いませんから安心してください(笑)。漫画が私の子どもなら、映画化や舞台化作品は孫のようなもの。私には可愛いばかりなんですよ。今日お話して、お二人ともそれぞれにすずだと感じましたので、お稽古も本番も本当に楽しみにしています。     ※通し稽古を見たこうのは「お疲れ様でした。素晴らしい舞台でした。ちょっとジーンときました。ちょっとというか、大分ジーンときました。すごくすずが可愛くて、十数年前にこれを書いていた私に『グッジョブ!』と言いたいです(笑)本当に有難うございました。感動しました」と伝え、カンパニー全員を勇気づけた。   【クリエイティブ&キャスト】 原作:こうの史代『この世界の片隅に』(ゼノンコミックス/コアミックス) 音楽:アンジェラ・アキ 脚本・演出:上田一豪 浦野すず:昆夏美/大原櫻子(Wキャスト) 北條周作:海宝直人/村井良大(Wキャスト) 白木リン:平野綾/桜井玲香(Wキャスト) 水原哲:小野塚勇人/小林唯(Wキャスト) 浦野すみ:小向なる 黒村径子:音月桂 白木美貴子、川口竜也、加藤潤一 飯野めぐみ、家塚敦子、伽藍琳、小林遼介、鈴木結加里、高瀬雄史、丹宗立峰 中山昇、般若愛実、東倫太朗、舩山智香子、古川隼大、麦嶋真帆 桑原広佳、澤田杏菜、嶋瀬晴 大村つばき、鞆琉那、増田梨沙 【東京公演】 5月9日(木)初日〜5月30日(木)千穐楽 日生劇場 【全国ツアー公演】 6月北海道公演 札幌文化芸術劇場 hitaru 6月岩手公演 トーサイクラシックホール岩手大ホール(岩手県民会館) 6月新潟公演 新潟県民会館大ホール 6月愛知公演 御園座 7月長野公演 まつもと市民芸術館 7月茨城公演 水戸市民会館グロービスホール 7月大阪公演 SkyシアターMBS 7月広島公演 呉信用金庫ホール ©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝
  •   「君の名前で僕を呼んで」「ボーンズ アンド オール」のルカ・グァダニーノが監督を務め、「スパイダーマン」シリーズや「デューン 砂の惑星」シリーズのゼンデイヤが主演。テニス界のスター選手だった女性と、その虜になった親友同士の男性選手2人による10年以上の愛の軌跡を描いた「チャレンジャーズ」が、6月7日(金)より全国公開される。ゼンデイヤ演じる主人公タシ・ダンカンを紹介する映像が到着した。   https://www.youtube.com/watch?v=rQQ-_K9Op7w   試合中の怪我で引退を余儀なくされたタシ。若き選手のパトリック(ジョシュ・オコナー)およびアート(マイク・フェイスト)と同時に恋に落ち、自身を“再定義”していく。 北米では4月26日(金)に封切られ、初登場第1位を獲得。日本でも話題を呼ぶはずだ。     © 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.© 2024 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. All Rights Reserved. 配給:ワーナー・ブラザース映画 ▶︎ ルカ・グァダニーノ監督×ゼンデイヤ主演。テニス界の衝撃的な愛の物語「チャレンジャーズ」
  • 必死でもがく女子高生たちの普遍的で生々しい心の叫び たとえスクールカースト一軍に属していようが、水泳部の部長だろうが、思春期真っ只中に身を置く女子高校生たちの心の奥底に堆積する不安や悩みは、決して尽きることがない。それはまるで、水のないプールの底一面に積もり、掃いても掃いても一向になくならない、グラウンドの砂の粒のようでもある。練習に打ち込む野球部員たちの掛け声と、蟬の鳴き声が響き渡る夏の青空の下、浮き彫りになるのは、第二次性徴を経た男女の性差に対する戸惑いや、「女は可愛くなければ認めてもらえない」との思い込みがもたらす、メイクへの過度な依存心。そして、理不尽な社会のルールを押し付けてくる大人への反発心だ。生理の日に教師から水泳を強要された経験に傷つき、「私たちは、どんなに頑張ったって女やん。女としか評価されんよ」と、人生に投げやりになっていた主人公が、無力感に苛まれながらも、必死でもがく仲間を目の当たりにし、自らも「JKなめんな!」と宣戦布告する。そんな彼女たちに、恵みの雨が降り注ぐ——。   「カラオケ行こ!」「リンダ リンダリンダ」の山下敦弘監督が、2019年に開催された第44回四国地区高等学校演劇研究大会で文部科学大臣賞(最優秀賞)を受賞した徳島市立高等学校の同名舞台劇を、原作者・中田夢花の脚本で映画化した青春群像劇「水深ゼロメートル から」は、2022年に公開されスマッシュヒットを記録した「アルプススタンドのはしの方」に続く、高校演劇 リブートプロジェクト第2弾。原作執筆当時は高校3年生だった中田が、「滋賀県で実際にあった事件を下敷きに、スマホで書き、顧問の先生と相談しながら何度も何度も練り直した」というシナリオには、普遍的で生々しい女子高校生たちのアツい心の叫びが収載されている。 文=渡邊玲子 制作=キネマ旬報社(「キネマ旬報」2024年5月号より転載) https://www.youtube.com/watch?v=kq00HHoooQ4 「水深ゼロメートル から」 【あらすじ】 高校2年生のココロとミクは、体育教師の山本から、夏休みに特別補習としてプール掃除を指示される。水のないプールには、野球部のグラウンドから飛んできた砂が堆積している。水泳部のチヅルや、水泳部を引退した3年生のユイも加わり、学校生活や恋愛、メイクなど、とりとめなく会話を交わすうち、それぞれの悩みが溢れ出し、思いが交差していく。 【STAFF & CAST】 監督:山下敦弘 出演:濵尾咲綺、仲吉玲亜、清田みくり、花岡すみれ、三浦理奈、さとうほなみ ほか 配給:SPOTTED PRODUCTIONS 日本/2024年/87分/G 5月3日より新宿シネマカリテほか全国にて順次公開 公式HPはこちら ©『水深ゼロメートルから』製作委員会   
  •   孤高の監督ニナ・メンケスの初期2作「マグダレーナ・ヴィラガ」(1986)「クイーン・オブ・ダイヤモンド」(1991)、ならびに現時点での最新作「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」(2022)が、〈ニナ・メンケスの世界〉と題して5月10日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次公開される。著名人のコメントが到着した。   [caption id="attachment_37785" align="aligncenter" width="850"] 「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」 © BRAINWASHEDMOVIE LLC[/caption]   〈コメント〉 「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」によせて 石川慶(映画監督) ニナ・メンケスは映画史を丹念に紐解くことにより、いかに映画言語の中に“男性のまなざし”が潜在的に組み込まれているかを突きつけてくる。映画を作る者すべてが(たとえ女性であっても!)、無意識に性差別的な言語を使ってしまっているということだ。まるで呪いだな、とゾッとしながら今準備中の映画のショットの総点検をはじめている。 伊藤さとり(映画パーソナリティ) 主人公の眼差しだけで紡がれるショット。 それは彼女が性的搾取されることでの虚無と怒り。 この視点を撮り続けたニナ・メンケスのドキュメンタリーは賞賛された映画達に潜む監督の性的視点がもたらす影響。 全世界の男性製作陣、映画ファンに観て欲しい。 これは映像社会への問題提起であり、未来への改善提案。 「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」によせて 伊藤詩織(映像ジャーナリスト) 巨匠と呼ばれる監督達による数々の映画作品を垣間見ながら、私は何度も、何人もの俳優たちを搾取してきたのだと気付かされた。これまで違和感に感じていた、言語化できなかったもやもやを、ニナ・メンケスは多くのエビデンスと共に可視化してくれた。カメラによって切り取られてきた女性の体、それは映されている者をモノ化して見る、支配的な目線を観客に与えるのだと多くの監督は強く認識しなくてはいけない。これからの映画体験を永遠に変えてくれたことに感謝する。 「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」によせて 上野千鶴子(社会学者) 映画の観客は男の視線によって「洗脳」されている。1975年にフェミニスト映画批評家、ローラ・マルヴィが歴史的な論文で理論化した、「男のまなざし」が、半世紀後に#MeToo運動を経て、ニナ・メンケスの手によって過去の映像作品の引用の織物としてみごとに視覚化された。ジェンダー化された視覚言語と映画界の雇用の性差別と性暴力は互いに結びついていることが、100本の論文を読むよりよくわかる。 「マグダレーナ・ヴィラガ」によせて オートモアイ(アーティスト) ニナは不可視化される暴力を決してなかったことにせず、真っ直ぐと見据えながら美しく鮮烈に切り取る。現実世界と心象世界が交差するマグダレーナ・ヴィラガ。主人公アイダは深い闇へ堕ちていきながらも孤独ではない。誰にも触ることのできない心の中の海には常に姉妹がいるから。祈りのような言葉が響く「ここには誰も来れないって覚えておいて」。私達は時代を超えて呼応する。物語の魂に、プールサイドのシスターフッドに。 「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」 呉美保(映画監督) 「巨匠」の「名画」で築き上げられてきた歪な価値観。誰も疑うことなく継承してきた不平等な性の映像表現。ニナ・メンケス監督は、錚々たる映画を次々と喝破する。この時代、この日本で、この映画が公開されることに、大喝采を送りたい! 北原みのり(作家・ラブピースクラブ代表) 女たちが無意識に従っているもの。それは法律などではなく、「男の眼差し」である。「男の眼差し」を徹底的に分析し批評し抗い闘い、その上で新しい希望を創造していこうとするフェミニズムの原点がここにある。苦しみの原点に向き合うことは自分への信頼、女への信頼を取り戻すことなのだと知る力強い映画。 「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」によせて 鴻巣友季子(翻訳家・文芸評論家) ヒッチコック、ゴダール、デ・パルマ、タランティーノ。映画とは未知の広い世界を見せてくれるものだと無邪気にも思っていた。ところが、スクリーンのむこうにあるのは「世界」ではなく、視覚言語を駆使した男性のまなざしの再現だった。メンケスの映画を観れば、フィクションの見方が変わる。 「クイーン・オブ・ダイヤモンド」によせて 五所純子(文筆家) 灼ける光。褪せる砂。観音開きでひらかれるギャンブルとウェディング。いかにも興奮/鎮静、成功/失敗、幸/不幸と結ばれそうなものたちが、徹底して結ばれない。まるで麻酔でも打たれたみたいに、単純労働のリズムで広がっていく、微温的な地獄。うっすら流れる「イパネマの娘」がボサノヴァは暗い音楽だということを、だらりと続く結婚式がハッピーエンドは死だということを、思い出させてくれた。ラストシーンの爽快さ、あの車は家畜から野生化した馬のマスタングだろうと見なしつつ、ヒッチハイクが女を楽園に導くことはあっただろうかと映画史ごと走り去る。干からびた西部劇。夢のように退屈なアメリカ。喉が乾いた。 古谷田奈月(小説家) 女の虚無、男の空虚さ、社会の上に広がる虚空—──ニナ・メンケスのまなざしを通すと、“無”にこそ血や肉が備わっているように見える。独自のサーモグラフィーでそれらを感知し、メスを入れるべきはここだと示しているように。そのようにして暴き出されるのは、事実、すでに深く血肉化している私たちの病理だ。病巣は膿んでいる。ひどくいやな臭いもする。でも、だからこそ幸運だ、メンケスに見つめられたところから私たちは変わっていけるのだから。 「マグダレーナ・ヴィラガ」によせて スズキエイミ(現代美術家) 心を蝕み慰め合う娼婦達の空虚な日々、1人の男が殺された。 “マグダレーナ・ヴィラガ”で描かれる青色は憂鬱であり、聖なるもの、そして忌まわしきもの。 それらの青は、血の赤色を引きたてて、アイダの精神の形を表象していく。 監督が、主演を務める自身の妹と心を通わせていることが手に取るように伝わってくる。 その呼応がこの映画の大きな基盤となって息づき作品をより深いところへ導いているのだろう。 日本初公開、彼女達の呼応に触れてみて。 「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」によせて 岨手由貴子(映画監督) 映画史における「男性のまなざし」について、映画制作者として身につまされる思いで鑑賞しました。 女性やマイノリティに対して、どんな風にカメラを向けているか? 都合よく客体化していないか? 美化された犠牲の物語を描こうとしていないか? 私たちは立ち止まって考えてみる必要があると思います。 この明快かつ痛快な語り口に、笑っている場合ではないのです。 「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」によせて 田嶋陽子(英文学・女性学研究者 元参議院議員) 「夢のハリウッド」はレイプ・カルチャー発祥の地。日本にも「イヤよ、イヤよは、いいのうち」というレイプ・カルチャーはあるけれど、ハリウッドは興業収入シェア80%を占めるだけに、その影響力は世界的な規模で、罪深い。映画の中でレイプされた若い女性が「あなた、いい人。ハンサムね」とまで言わせられている。それだけに、アメリカのフェミニストたちの怒りは半端ではない。今、ハリウッドは変わる時期に来ている。 「クイーン・オブ・ダイヤモンド」によせて 玉田健太(国立映画アーカイブ研究員) 77分の壮大な時間体験── 「クイーン・オブ・ダイヤモンド」は、日常に永遠を映し出す 「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」によせて 鳥飼茜(漫画家) 何重にも仕掛けられた呪い、罠、それらはこれまで私達に「見られる」という甘い夢すら与えてきた。そして当然ながら、怒りと気まずさという屈辱を与えた。その支配関係を描く時にさえ、「男の目で」女を描いてしまった事に愕然とした経験が私にはある。「もはや自由だ」と思うだけでは自由は表現できない。彼女達が真摯に挑戦したように、足元に結ばれた幾つもの結び目を一つずつ解くことからしか自由は描けない。年を取り「男に見られる女」ではなくなっても、それでもまだ尚、女の私達は自由を求めている。 「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」によせて 野中モモ(翻訳者・ライター) 映画は罪深い。 ニナ・メンケスはその罪と魅惑の豊かな歴史を、たくさんの事例と証言をもって解き明かしてみせる。 もし彼女の視点が極端だと感じてしまうのなら、それこそ私たちの生きる社会がいかに男性による選別と承認を土台に設計されてきたかの証拠かもしれない。 「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」によせて 秦早穗子(映画評論家) ニナ・メンケス最新作「ブレインウオッシュ セックス-カメラ-パワー」は、彼女が物語に寄せて、映像で表現してきた意図をより鮮明にする最新のドキュメンタリー・レクチャーだ。男の視線だけで創り上げられた論理、光と陰のトリックの中で浮上する女の像を逆転させる。歴史の道のりの中で、征服者たらんとした一方的驕り。何より、女が思い込んできた観念を破壊する。 樋口泰人(boid主宰・映画評論家) ニナ・メンケスの映画は差別と抑圧と搾取の中で生まれた知性とともにある。 その論理は強固だ。始まりと終わりが確実にあるその始まりに向けて、彼女はゆるぎないショットを放つ。 それはわれわれの脳を直撃し埋め込まれていた無意識を爆破するだろう。脳は洗われ、映画とそれが示す世界の見え方が確実に変わる。 そんな場所からケリー・ライカートやグレタ・ガーウィクが生まれたのだ。 森直人(映画評論家) 正直、ぐうの音も出ない。我々はもはやニナ・メンケスの“反・洗脳”を通過せずには現代映画も映画史も語ることはできないだろう。極北的傑作「クイーン・オブ・ダイヤモンド」をいままで未見だったことも恥ずかしい! 山﨑博子(映画監督) ニナとはカリフォルニア大学ロサンジェルス校大学院でお互いに映画製作に切磋琢磨した仲である。常になんらかのヒョウ柄の衣服をまとっていた彼女の集中力の高さはひときわ際立っていた。妹のティンカはとても美しく優しかった。選ばれた映画作家だけが勝ち得たミューズとなって、ニナの映像世界を唯一無二の存在にしていた。このたびようやく日本初公開となり、奇跡のようでとても嬉しい。   https://www.youtube.com/watch?v=NB3hKHW3vtM   提供:マーメイドフィルム、Respond 配給:コピアポア・フィルム 宣伝:マーメイドフィルム、VALERIA ▶︎ 異彩を放つアメリカの監督ニナ・メンケス。3作が日本劇場初公開
  •   「あみこ」の山中瑶子監督が河合優実主演で描き、第77回カンヌ国際映画祭の監督週間に出品されることが決まった「ナミビアの砂漠」(日本公開は2024年を予定)。カンヌ版のポスターと予告編、追加キャスト情報が解禁された。     予告編は、エネルギッシュでありながら虚無感も覗かせるカナの姿を映し出す。   https://www.youtube.com/watch?v=qSK-GINJwiM   カナと関係を深めていく自信家のクリエイター、ハヤシを演じるのは『おっさんずラブ』の金子大地。カナと同棲する恋人のホンダ役には「菊とギロチン」の寛一郎。さらに「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」の新谷ゆづみ、『不適切にもほどがある!』の中島歩、「寝ても覚めても」の唐田えりか、「悪は存在しない」の渋谷采郁が出演する。   〈コメント〉 金子大地 いつかご一緒したかった山中監督、そして河合さんを始めとする素敵なキャスト、素晴らしいスタッフさんとこの作品が作れたこと、そしてその作品をカンヌで世界の方に観ていただけること、自分がどれだけ恵まれているかということをつくづく感じます。 カンヌをきっかけに1人でも多くの方にこの作品を観ていただけるかと思うと興奮が醒めません。自分にとって大切なこの作品が多くの人に届きます様に。 宜しくお願いします! 寛一郎 生々しくシュールでシニカル、だけどチャーミング。監督、脚本、役者、スタッフの皆さんが素晴らしく。 今までにあるようでなかった映画になっていると思います。 そして嬉しいことに、この作品がカンヌ映画祭で上映されることが決まったとのこと。 今日の日本の若者の恋愛観や物語の展開に、海外の皆さんがどう反応してくれるのか楽しみです。     ©2024『ナミビアの砂漠』製作委員会 配給:ハピネットファントム・スタジオ ▶︎ 山中瑶子監督×河合優実主演「ナミビアの砂漠」、カンヌ映画祭監督週間に出品