トリとロキタの映画専門家レビュー一覧
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映画監督/脚本家
いまおかしんじ
ギリギリの生活。冒頭から尋常じゃない緊張が続く。この先どうなってしまうのか。胸が締め付けられる。部屋で嘘をつく練習。ひっかけ問題と笑うトリ。ロキタもトリといる時だけは笑顔を見せる。二人だけの時間がとてつもなく愛おしい。大麻を育てている建物の禍々しさ。閉じ込められるロキタ。めちゃくちゃ不味そうな冷凍食品を食べる。食が進まない。ロキタはスマホのトリの写真を見ながら食べる。何気ないシーンに震える。犯罪でも何でもいいからこの二人に生き延びてほしい。
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文筆家/俳優
睡蓮みどり
不安そうなロキタの視線とじっと見据えるようなトリの視線。ふたりの視線が交差するだけでこの映画を見る価値があるだろう。生活のためにしたくもない仕事をし、ビザのために姉弟だと偽る。嘘や苦しみのなかで垣間見えるトリとロキタふたりの間にある確かなものが煌めくのを感じた。生きるためにするふたりの行動のすべては、しかし生きるためだけではないということにも気付かされる。映画というフィクションを通して見る現実をどのように受け止めるか。
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映画批評家、都立大助教
須藤健太郎
ダルデンヌ兄弟は出来事(アクション)の継起を追い、ショットを積み重ねていくことでしか生じない何かに到達することを目指してきた。とすると、2人の映画が「活劇」の様相を帯びるのは当然の帰結であり、それを現代西欧社会の教訓譚として受け取るだけでは不十分だ。本作では、なによりトリ役のパブロ・シルズの体幹の強さが画面に安定と躍動感をもたらしている。道路を横断するときの走り。飛び跳ねるような自転車の立ちこぎ。ロキタの居場所を突き止め潜入する姿は私立探偵。
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