丘の上の本屋さんの映画専門家レビュー一覧

丘の上の本屋さん

イタリアの小さな古書店の老人とアフリカ移民の少年が、年齢や国籍の違いを超えて、「本」を通して交流し、次第に友情で結ばれていくハートウォーミング・ストーリー。“イタリアの最も美しい村”のひとつ、チヴィテッラ・デル・トロントの絶景や、古書店に集まってくるユーモラスで個性あふれる人々、繰り返される日々の暮らし、小さな幸福が観る者の心に染みわたる。古書店主のリベロ役には「フォードvsフェラーリ」「我が名はヴェンデッタ」の大ベテラン、レモ・ジローネ。読書の素晴らしさに目覚めていく少年エシエンには映画初出演のディディー・ローレンツ・チュンブ。リベロ爺さんが少年に提示する「ブックリスト」は、全世界の少年少女のみならず、大人たちに向けても、人生を豊かにするヒントを与えてくれる。ユニセフ・イタリア共同製作。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    少年が公園のベンチでワクワクしながら本を開く。その顔が嬉しさで輝いている。少年と古本屋の主人との交流は本を通して行われる。どんな本を貸してやろうか、考えているときの彼の顔は喜びに満ち溢れている。話はほとんどこの本屋の中で展開する。彼の私生活は描かれない。客とのやり取りの中でどういう人生を送ってきたかがわかる。後半、少年とのやり取りがヒートアップしていく。だんだん難しい本になっていく。少年もいっぱしのことを言うようになる。不意に涙が出た。

  • 文筆家/俳優

    睡蓮みどり

    物語のほとんどがアットホームな本屋さんのなかで繰り広げられる。登場人物たちの背景、人間関係、街の顔などはそこまで深掘りされていないものの、まるで絵本を読み聞かせられているかのような心地よさがある。登場人物たちのキャラクターが典型的すぎることと、ラストで主人公リベロが迎える結末には若干疑問が残るものの、本作を大人になった今どう観るかが問われているような気がした。書物が並んでいるというだけでエネルギーに満ち溢れている。その前では大人も子供も平等だ。

  • 映画批評家、都立大助教

    須藤健太郎

    クリシェの再生産はときに微笑ましくもあるが、基本的には害悪だろう。これまでそう考えて生きてきた。古書店を営む白人の老人に、お金がないから本を買うことができないというアフリカ系の少年。老人は少年に本を貸し、講釈を垂れる。私としてはもうこれだけでかなり嫌悪感を催すのだが、最後に一番大事な本として渡されるのが『世界人権宣言』なのだ。私が君たちに人権とは何かを教えてあげよう? 植民地主義の反省はどこへ行ったのか。悪はいつも善意の顔をして近づいてくる。

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