暴力をめぐる対話の映画専門家レビュー一覧

暴力をめぐる対話

2018年にフランスで地方都市から瞬く間に全土に広がり、長きにわたり続く市民活動“黄色いベスト運動”。政権への抗議デモと対峙する警官による暴力行為を撮影した現場映像を集め、当事者や有識者らの対話を通じ、公権力へ疑問を投げかけるドキュメンタリー。監督は、ジャーナリストで、フィリップ・ブローとのドキュメンタリー「Prison Valley」で2011年世界報道写真賞のインタラクティブ部門賞を受賞したダヴィッド・デュフレーヌ。2020年第73回カンヌ国際映画祭監督週間選出作品。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    よくこれだけの映像を集めてきたと思う。生々しい暴力描写を延々と写し続ける。居丈高な警官たちが超ムカつく。怒りで体が震える。ホント最低! やられた人たちや擁護している人たちの話だけじゃなくて、警察関係者も発言しているのが良かった。でもやはりと思う。これでは警察が圧倒的に悪者だ。もちろん悪いんだけど。複雑な気持ちになる。映像を切り取るとどんなふうにでも解釈できる。途中で喋っていた風格のメチャクチャあるおばさんが良かった。頭がいいってこういうこと。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    パリで起きた黄色いベストを身につけた市民によるデモと、市民に警察が向ける武器。銃を向けることはもとより暴力は簡単に人間から言葉を奪う。向けられた銃を前に対話は成立するのか。スマートフォン撮影をはじめとした数々の暴動の映像を前に、意味や考察、反論などの言葉が付け加えられていく。特に作家のアラン・ダマジオが「誰かを“暴力的だ”と指摘する正当性を誰が持っているのか」という言葉が残った。“暴力的”なのではなく“暴力そのもの”が映し出される意味を考える。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    ラストショットをどう捉えるべきか。批判を見越したものと思うが、私にはやはり許容しがたい。映されている内容がおぞましいからではない。この直視しがたい映像があたかも結論であるかのように最後に置かれているからだ(このラストへの伏線が作中に仕込まれているためそう見ざるをえない)。この映画は対話であると同時に映像の分析であり、そういう言葉の力に賭けられているように見えた。だが、最後に見せられるのは見る者をただ絶句させる、極めつけのスペクタクルではないか。

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