ミューズは溺れないの映画専門家レビュー一覧
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脚本家、映画監督
井上淳一
今号三本目の女と女の映画。これが一番心に響いたかも。好きだと同性に告白され、あたし、まだ一度も人のこと好きになったことないの、変でしょ、と吐露させるなんて。唸った。それが表現の問題にも絡む。同じ美術部。相手は才能があるけど、自分は何を描いたらいいか分からない。「人と違ってダメなの?」という自己肯定と「自分に生まれて良かったと思ったことある?」という自己否定が同居する。青いけど、むき出しな感じがたまらない。才能ってあるんだと思う。大切にしてほしい。
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日本経済新聞編集委員
古賀重樹
なにより3人の女子高校生たちを生き生きと撮れている。自意識をもてあまし、他者に苛立ち、ナイフのような言葉で人を傷つけてしまう少女たちを。新人の淺雄望監督は上原実矩、若杉凩、森田想という3人の若い女優を型にはめず、自然な身ぶりと表情を引き出す。少女たちの間に走るピリピリした緊張感、思春期のアンビバレンスを捉える。だから画面から目を離せない。大人たちの造形が紋切り型だし、自分探しの物語も陳腐だが、そんな瑕疵を補って余りある生々しさがある。
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映画評論家
服部香穂里
溺れる者は藁をも?む、どうしようもなく無防備で決定的なダイナミズムの瞬間を捉えた絵画のインパクトが、映画の未体験ゾーンへと導いてくれそうな期待感を高める。しかし、言葉にしづらい気持ちや衝動を、進路に悩むふたりの女子高生のがむしゃらな創作活動を通して発散するさまを丹念に描く前半を経て、他者を理解できなきゃ気が済まない友人の純粋な好奇心を呼び水に、寡黙な人物にまで冗舌に喋らせすぎ、既視感を覚える青春ものへと収束していくのが、何だか歯がゆい。
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