シーフォーミーの映画専門家レビュー一覧

シーフォーミー

雪に閉ざされた豪邸でペットシッターの仕事を請け負った窃盗常習犯の盲目の少女が、視覚障がい者のサポートアプリ<シーフォーミー>を相棒に、夜陰に紛れて屋敷に侵入した極悪非道な強盗集団に立ち向かう新感覚FPSスリラー。盲目の主人公ソフィを演じるのは、視覚障がい者のスカイラー・ダヴェンポート。これまで多くのアニメ作品やビデオゲームの吹き替えを担当したのち、本作で映画初主演の座を掴みとった。サポートアプリを通してソフィの相棒となるケリーを演じるのは、ジェシカ・パーカー・ケネディ。監督は日本、バンクーバー、トロントを拠点に、パフォーマンス、彫刻、映画、デジタルメディアなど多様な表現領域を縦断する日系カナダ人のランドール・オキタ。
  • 映画評論家

    上島春彦

    本作は人間狩り物の変種。代表作に「猟奇島」がある。監禁盲者物でもある。ここでは「狩る」方が盲者というのが効く。彼女は光の方向は感知できる。サポート・アプリを使って目標を探るわけだが、物語設定が疑問。せめて主人公の特技を活かしたかった。彼女に倫理観が欠如しているのもヘン。プロットをひねったつもりだったのだろうが逆効果。悪銭だからちょろまかしても全く構わない、などと主人公が考えたら映画にならない。警察官に対する脚本の非情な態度で嫌な気分もつのる。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    まず真っ先に彷彿としたのが「THE GUILTY/ギルティ」だが、本作も負けず劣らずの秀作。序盤で提示された主人公の元スキー選手としての経歴、窃盗癖、人の助けを借りない頑固さ、ワインなどいくつもの要素が、後の展開にそれぞれ巧妙に絡んでくる。ただ、主人公が目の見えない設定でありながら、彼女の聞いている音にはそこまで興味がないようにも思えた。スリラーに見えてその実、これは「信頼できるガイド」を得て新たな人生を踏み出すための一人の少女の物語でもある。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    本作は盲目の元軍人が自宅に押し入った強盗と相対する映画「ドント・ブリーズ」の陰画のような作品だ。ただし本作のヒロインは「ドント・ブリーズ」のおっさんや座頭市のような超人ではなく、トラウマを抱えた元アスリートの盲女であり、行動は常にビデオアプリや通話相手からの指示に規定されることになる。その迂回がうまくサスペンスに昇華されていない点は気になったが、触覚に訴える演出の数々は一寸先も見えない暗がりの中を生きる我々の時代感覚と共鳴してるように思えた。

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