歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡の映画専門家レビュー一覧

歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡

ニュー・ジャーマン・シネマの旗手ヴェルナー・ヘルツォーク監督が、親交のあった紀行作家ブルース・チャトウィンの足跡を辿るドキュメンタリー。チャトウィンが生前歩いた道を監督自ら辿り、チャトウィンが魅了されたノマディズム(放浪)について探究する。ヘルツォーク監督が自らナレーションも担当。チャトウィンの旅の中で出会った人々のインタビューを交えながら、全8章立てで旅の中に自らの生き方を探した作家を追っていく。「世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶」などでヘルツォーク監督と組んできたチェロ奏者・作曲家のエルンスト・レイシグルが音楽を手がける。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    ブルース・チャトウィンという人のことを全然知らなかった。見ているうちにだんだん分かっていくのが面白かった。丁寧な語り口に、監督の亡くなった友人に対する愛情とこだわりを感じる。合間合間に挟まれる監督の過去作の映像が驚きだった。雪山に閉じ込められて55時間じっとしていた話とか、現地のエキストラが暴れ出した話とか。こんなメンドくさいことやってたんだ。思わず笑ってしまう。HIVのネタは、最初にばらしてたら、もっと見方が違ったかもしれない。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    なんて親密で、優しさに満ち溢れているのだろう。ヴェルナー・ヘルツォークが、紀行作家ブルース・チャトウィンの旅した世界を辿る。そこにチャトウィンの声で、時にヘルツォークの声で、チャトウィンの散文の朗読を重ねる。ドキュメンタリー映画において近しい人を撮ることは非常に難しい。このプライベート感さえ窺わせるこの作品からは、とても自然にチャトウィンの魅力が溢れ出ている。思いがけず、他人のラブレターを読んでしまったような切なさがこの映画にはあった。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    ヘルツォークの映画にほとんど親しんでいない。正直にいうと、どう見たらいいのかずっと考えあぐねている。だから、この映画もいまいち?みがたいというのが率直なところだ。これはブルース・チャトウィンについて語るふりをして、実際はヘルツォークの自分語りにほかならならず、「主人公は私ではなく、チャトウィンだ」と何度か監督の口をついて出るのが示唆的だ。取材といっても、その目的はただ話を聞くためではない。ここでは自分の話を聞いてもらうことも取材の一部である。

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