MEMORIA メモリアの映画専門家レビュー一覧

MEMORIA メモリア

「ブンミおじさんの森」のアピチャッポン・ウィーラセタクン監督が南米コロンビアで撮影した、第74回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作。不気味な爆発音が頭の中で鳴り響き不眠症になったジェシカ。エルナンと記憶について語り合ううちに、ある感覚に襲われる。監督自身が経験した頭内爆発音症候群から着想を得て、記憶の旅路を綴っていく。出演は、「サスペリア」(2018)のティルダ・スウィントン、「バルバラ セーヌの黒いバラ」のジャンヌ・バリバールほか。第94回アカデミー賞国際長編映画賞コロンビア代表作品。第34回東京国際映画祭ガラ・セレクション上映作品。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    発想の元がどこから来ているのか、全然わからない。シリアスかと思いきや、変なユーモアがある。時々あの音が鳴って、びっくりする。何度も忘れた頃に鳴るので、そのたびにびっくりする。主人公の女の人がいつもウロウロしている。誰かと話をしている。記憶についての会話が面白い。いったいどこに着地するのか? 最後のアレもぶっ飛んでる。映画の面白さはいろいろだなと思う。何も起きないようでいて、何かが起きている。発見の喜び。哲学とユーモアが大事と改めて思う。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    ゆるやかに動いてゆく時間の中で完全にフリーズして止まったように見える登場人物たちの表情/無表情に、時々なんとも名づけがたい感情を呼び起こされる。コロンビアの森の中にふとあらわれた精霊のような人間の姿、フェルメールの絵画のような光と暗闇が同居した部屋の中に佇む男女。男の遠く深い記憶を受信し、女は自分の記憶として受け止める。彼女に聞こえ続けているその音は、不穏であるが心地よくもある。決して何も断言できない。けれど、私の記憶は私だけのものではない。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    「脳の映画」という概念を思わず想起する。頭の中で正体不明の音が鳴り響くというジェシカの音探しの旅に付き合ううちに、観客は彼女の頭の中そのものへと導かれていくからだ。いや、個人を超えた大きな記憶を受信するジェシカは映画の擬人化なのだろう。頭の中にだけある、言語を超えた実体のないもの。そんな何かに形を与えるための移動と出会い。音響技師エルナンは、彼女の言葉を頼りに効果音を組み合わせて音を再現していく。まるでこの映画の作業現場に立ち会うようだった。

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