大コメ騒動の映画専門家レビュー一覧

大コメ騒動

大正7年に富山県の漁師町から広まった米騒動をモチーフにした時代劇。米価高騰に苦しむ主婦たちは、コメの積み出し阻止を試みるも失敗。騒動が地元の新聞に載り、それを見た大阪の新聞社が陳情する主婦たちを女一揆と大きく書き立て、騒動は全国に広まる。「超高速!参勤交代」を手がけた富山県出身の本木克英監督が、日々の暮らしを守ろうとするおかか(女房)たちが声を上げる様子を活写。主演は「白ゆき姫殺人事件」の井上真央。立川志の輔、左時枝、室井滋など富山県出身の俳優が多数揃う。2021年1月1日より富山県先行公開。
  • フリーライター

    須永貴子

    教科書で学んだ「米騒動」を、女たちが起こしていたとは知らなかった。学があって思慮深く、前へ出るタイプではない主人公を、井上真央がへの字口で好演。役柄も芝居も献身的だから、彼女がぎこちなく笑うラストショットに爽やかなカタルシスがある。日本の歴史を変えた102年前の民衆運動を、ポップなコメディに仕立てた本作で、作り手は声高なメッセージを叫んだりはしていない。しかし、日本社会がずっと直面している諸問題を解決するヒントと、我々へのエールが感じ取れる。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    タイトルはどうなのか。それだけ聞いたら、ドキュメンタリーだと思ってしまう。こういう題材を映画化にこぎつけただけでもご立派。なら、タイトルで引き付けて出来るだけ多くの人に見てもらいたい。倒幕の志士たちがテロとはったりで江戸をぶっ壊して作った明治日本のDNAは好戦の昭和日本へ受け継がれていく。その挟間、つかの間の晴れ間のような大正は、江戸が蘇ったかのよう。米騒動は江戸の百姓一揆を思わせる。暴動じゃなく、騒動なのだ。おっかさんたちは本当によくやりました。

  • 映画評論家

    吉田広明

    登場人物の一人が、男が参加しないと世の中は変わらないとして女性の運動を貶めるが、それに対抗する論理が、女は子供を食わせねばならないから、では女たちの闘争が世の中を変えた理由には物足りない。米騒動の何がこれまでと違う運動だったのか、米騒動に対する新たな視点、踏み込みが足りず、単に史実を画に起こしただけで、富山県以外の人が見るに足る映画なのか疑問がある。説明的なフラッシュバック、クライマックスのアクションのチープさ、画に魅力がないのも難あり。

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