mellowの映画専門家レビュー一覧

mellow

「愛がなんだ」の今泉力哉が監督、様々な片思いを綴った恋愛群像劇。好きな花の仕事をする夏目は、姪のさほを預かることに。亡き父からラーメン店を受け継いだ木帆、密かに夏目に憧れる近くの美容室の娘・宏美、常連客の人妻・麻里子らの思いが行き交い……。おしゃれな花屋を営む夏目誠一を『おっさんずラブ』シリーズの田中圭が、廃業寸前のラーメン店を営む木帆を「午前0時、キスしに来てよ」の岡崎紗絵が演じる。
  • 映画評論家

    川口敦子

    祭りの後のシラケの気分にも一段落がついた70年代半ばにかけて、マイケル・フランクスの『アート・オブ・ティー』等々、メロウな曲に浸った時期もあったけれど、その“ほどほど感”に包まれつつ、うっすらとした恥かしさも感じていたなあと、「メロウ」と銘打った映画を見ながらふと、往時の感触を思い出した。いかにもほどほどにすれ違う男女の物語は不快なこともないけれど、他人事のまま通過していく。ともさか、唯野の居る場面だけゆるさが地に足ついていて面白かった。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    以前、グーグルで「エリック・ロメール」と検索すると、今泉力哉監督の顔写真がヒットすることがちょっとしたネタになっていたが、この作品はまさにロメール的。前作までとくらべると一見毒は抑えめ。しかし、天然モテ男・田中圭の所作に、もしかしたらこれは計算ずくなのか、と思わせる含みをもたせることで、ともさかりえ演じる人妻から想いを打ち明けられるシーンなどに読みの幅を与えている(岡崎紗絵演じるラーメン店主も然り)。説明的な雑景ショットの多用はマイナス。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    さまざまの「好き」のヴァリエーションをちりばめる。意外性ありの「好き」だが、そうなのかと納得させるそれだ。田中圭の主人公はちょっと変わった花屋をやっている。自分の「好き」は胸にしまって、独身。やさしい。そういう彼がいくつかの方位から「好き」を引きよせる。我慢していることがある。どう報いられるのか。そこを焦らずに探る感じの今泉監督、オリジナル脚本。彼の作品のなかでも、とくにこれは世界への肯定感がある。岡崎紗絵のつくるラーメンの味、合格だったろう。

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