キェシロフスキの傑作「デカローグ」 キャスト総勢44名で10篇の連作舞台を4月より新国立劇場で上演


クシシュトフ・キェシロフスキの10篇のドラマからなる映画「デカローグ」を基にした舞台が、4月より新国立劇場で上演される。出演者は総勢44名。原作脚本を「カティンの森」(2009年日本公開/アンジェイ・ワイダ監督)の字幕翻訳ほか、ポーランド文学の翻訳で知られる久山宏一が翻訳し、映画・演劇の脚本・演出を手掛ける須貝英が上演台本を執筆。演出は、新国立劇場演劇部門・芸術監督の小川絵梨子と文学座出身の上村聡史の2名が務める。

 


プログラムA(デカローグ1・3のキャスト)
前列左から亀田佳明、高橋惠子、ノゾエ征爾、千葉哲也、小島聖
後列左から、森川由樹、チョウ ヨンホ、浅野令子、鈴木勝大

 

旧約聖書の“十戒”をモチーフに、人間関係とそのさまざまな事情、抗えない運命を描いた10篇からなる連作「デカローグ」(1988)は、ポーランドの名匠クシシュトフ・キェシロフスキによる、当初はテレビシリーズを想定して製作されたヒューマンドラマだ。第5話と第6話はそれぞれ劇場用長篇映画に再編集し、「殺人についての短いフィルム」「愛についての短いフィルム」として劇場公開、1989年にヴェネチア国際映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞した後、各国で劇場公開され、カンヌ国際映画祭をはじめ多くの映画賞を受賞。その後「ふたりのベロニカ」「トリコロール」と続くキェシロフスキが、名匠と呼ばれるきっかけとなった作品。日本では、監督が亡くなった翌年の1996年に劇場初公開された。

 

プログラムB(デカローグ2・4のキャスト)
前列左から亀田佳明、益岡徹、前田亜季、近藤芳正、夏子
後列左から、坂本慶介、近藤隼、松田佳央理

 

先日行われた製作発表記者会見には、高橋惠子、ノゾエ征爾、千葉哲也、小島聖、前田亜季、益岡徹、近藤芳正、夏子をはじめ、すべてのエピソードに出演する亀田佳明ら、キャスト総勢44名中39名が登壇し、作品についての意気込みを語った。

また、10作品それぞれ独立した物語だが、登場人物はワルシャワ郊外の団地の住人たちで、あるエピソードの人物が別の回でも登場するなどといった仕掛けもあり、エピソードをまたいで出演するキャストも多数いる。

 

プログラムC(デカローグ5・6のキャスト)
前列左から亀田佳明、渋谷謙人、福崎那由他、仙名彩世、田中亨
後列左から、斉藤直樹、名越志保、坂本慶介

 

演出家の小川絵梨子は、「いつか舞台でやりたい」と10年ほどまえから構想。「人間は不完全なものであるという前提で、“そういうものなのだ”と、存在自体を肯定している。その上で行った選択が失敗してしまったり、それによって葛藤を抱えたり……といったことが描かれている。そこに人間がいてくれればいいという圧倒的な肯定、人間へのリスペクトを伝えたい」と、舞台化の意図を力強く語った。

 

プログラムD(デカローグ7・8のキャスト)
前列左から亀田佳明、津田真澄、章平、吉田美月、高田聖子、岡本玲、大滝寛
後列左から、田中穂先、堀元宗一朗、笹野美由紀

 

脚本を翻訳した久山宏一は、36年前の1988年にポーランドの劇場で「デカローグ」を鑑賞。テレビ放映の2年後に発売されたシナリオ集を翻訳していくなかで、新たな発見があったという。というのも、1980年から映画人の育成を始めていたキェシロフスキは、3人の若手監督に監督させるつもりだったが、脚本に愛着が湧き自らですべてを監督。であれば、当初書かれた脚本は自分以外の監督が撮ることを想定して書かれたもので、今回の舞台のように複数の演出家が演出するという形は、キェシロフスキの本来の意図と近かったのではないか、と推察。「原型であるシナリオと映像を比べてみる幸福な機会だった」と言う。

 

プログラムE(デカローグ9・10のキャスト)
前列左から亀田佳明、宮崎秋人、万里紗、伊達暁、堅山隼太、石母田史朗
後列左から、笠井日向、鈴木将一朗、松本亮

 

公演はデカローグ1~4のプログラムA・Bが4月13日から5月6日まで、デカローグ5・6のプログラムCが5月18日から6月2日まで、デカローグ7~10のプログラムD・Eが6月22日から7月15日まで、と3カ月にわたる。

すべてのエピソードを見るのは至難の業でもあるが、オリジナルの「デカローグ」を知っていればなお、すべてを見たくもなるだろう。全10篇を見た暁の、達成感以外に何を得られるか、と2人の演出家に尋ねたところ「簡単な言葉になってしまいますが、お客様のなかで長く生きる作品になると思います」と上村。
小川は「一枚一枚の絵自体が素晴らしいけれど、エピソードを1つ、2つ、3つと重ねていくと、これまで重ねたものが実はまた壮大な素晴らしい一つの絵にもなる。お客様自身が体感して、完結させる──キェシロフスキ監督もきっとそのような意図でお作りになったと思う」と語った。

なお、全作制覇は“至難の業”と書いたが、お得なセット鑑賞券も発売されているので、日程、詳細等は公式ホームページをご参照ください。

文・制作=キネマ旬報社

 

「デカローグ」
デカローグ1~4[プログラムA、B交互上演]=2024年4月13日[土]~5月6日[月・休]
デカローグ5・6[プログラムC]=2024年5月18日[土]~6月2日[日]
デカローグ7~10[プログラムD、E交互上演]=2024年6月22日[土]~7月15日[月・祝]
会場:[東京]新国立劇場 小劇場
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