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  • 藤野秀夫

    中学を中退し、94年夏、横浜・蔦座に出演中の新派の山口定雄一座に入り初舞台。1905年から喜多村緑郎の門に入り、東京座『競艶録』の富士雄役で幹部となる。15年9月、井上正夫一座が所属する浅草・みくに座の連鎖劇「塔上の秘密」などに井上や小堀誠らと共演。16年1月、秋月桂太郎の死により、喜多村の推薦で大阪・浪花座に代役として出演したのち、小織桂一郎、福井茂兵衛の成美団に加わり九州などを巡業。翌17年8月、桝本清の紹介で日活向島撮影所に入社、二枚目の立ち役として「白萩」(17)に主演したのを最初に、月に2、3本も出演。当時、向島には立ち役に藤野と山本嘉一、秋月邦武、女形に立花貞二郎、東猛夫、土方勝三郎、五月操、敵役に横山運平、その他に大村正雄、藤川三之助などがいたが藤野は中肉中背で温厚な人柄だったから誰にも愛される正統派の二枚目として活躍。「藤袴」「木の間の月」「さんざ時雨」「手向の曲」「霧の雨」「秋之助とお澄」「雁のたより」「女の誓」(17)、「七色指環」「女気質」(18)などに主演。日活向島の革新映画、田中栄三監督「生ける屍」(18)に助演し、小口忠、田中栄三共同監督「金色夜叉」(18)には女形の衣笠貞之助と共演、田中の「桜の園」(18)にも主演する。さらに「続金色夜叉」「兄と弟」「恋の浮島」(18)、「浮き沈み」「新橋情話」「恋の津満子」(19)、「西廂記」「尼港最後の日」(20)、「露子の一念」(21)、「恋の誓ひ」「涙の家」「罪にさす影」「恋の色染」「浮草の恋」(22)などに主演し、新派劇全盛期を現出する。22年12月、田中栄三の野心作「京屋襟店」に主演、その完成試写後、女優の採用で動揺を来たした東、衣笠ら女形の会社への不満に同調、さらにこうした情勢に乗じた元・日活常務の石井常吉の画策に乗って幹部俳優12人とともに連袂退社、国活の巣鴨撮影所へ入り、年内に完成した「鷲津村の娘」に主演、翌23年は「老僧の恋」、村田実監督「父の罪」や「愛情の極み」に主演。同年6月、国活は解散同然となり日活に吸収される。7月、迎えられて松竹蒲田に入社、野村芳亭監督の時代劇「萩寺心中」に川田芳子と組んで主演し、風格を見せたのに続いて同じく野村の「地獄(焦熱地獄)」に勝見庸太郎、柳さく子と共演。これを完成して数日後に大震災。蒲田の所員の大半が京都へ移ったあとの居残り組を集め、島津保次郎が震災記念映画と銘打って急きょ監督した「十一時五十八分」に主演、続いて同じく島津の明朗喜劇「父(お父さん)」(23)にも蒲田初出演の水谷八重子を相手役として主演。これは焦土の浅草にバラック建てで復興した電気館で封切られ、大喝采を博した。以後、島津の監督では、これも水谷と共演の「蕎麦屋の娘」(24)や「愚者なればこそ」(24)、野村監督では川田芳子と組んで風格を見せた時代劇「萩寺心中」や柳さく子と組んだ「大尉の娘」ほか「山男の恋」「帰らぬ父」「罪なき罪」(24)とたて続けに主演、好評を得る。25年からは年齢のせいから、さすがに主演作は少なくなり、吉野二郎監督で「鬼すすき」(25)、「清水次郎長全伝」(26)、「赤尾林蔵」(27)、池田義信監督で「秋の歌」(26)くらいにとどまるが、蒲田を代表する諸監督に次々と重用され、落ち着いた演技を見せる。ことに島津には多用され、「祖国」「妖星地に堕つれば」(25)、「お坊ちゃん」「妖婦五人女」(26)、主演格で出た「深夜のお客」(28)、「麗人」(30)、「野に叫ぶもの」「生活線ABC」(31)、「歓喜の一夜」(32)、「情炎の都市」(34)、「お琴と佐助」(35)、「家族会議」(36)のほか、3社競作で島津と牛原虚彦が共同監督した井上正夫主演の「大地は微笑む」(25)にも出演。その牛原の監督では、鈴木伝明、田中絹代の「彼と人生」「大都会・労働篇」「山の凱歌」(29)、「進軍」「大都会・爆発篇」「若者よなぜ泣くか」(30)に好助演。また野村監督では「カラボタン」(26)、「秋風燈篭」(27)など、五所平之助監督では井上正夫と共演した「人の世の姿」(28)や「若き日の感激」(31)など、清水宏監督では「美人と浪人」(26)や高田稔主演の「餓鬼大将」「銀河」「有憂華」(31)など。35年には「噫乃木将軍」に主役をつとめ、その後も吉村公三郎監督の「暖流」(39)で病院長・志摩泰英、小津安二郎監督「戸田家の兄妹」(41)で落ちぶれた資産家・戸田進太郎を演じ、40年の「水戸黄門」では坂東好太郎の助さん、海江田譲二の格さんを従えて黄門を堂々主演した。この間の29年1月には栗島すみ子らとともに大幹部に推され、蒲田、大船を通じて俳優陣の長老的存在であった。戦後、52年に大映京都の「乞食大将」に徳川家康の役で、ひょっこり顔を出したが56年2月11日死去。

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