しから始まるものでの検索結果

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  •   沖縄戦の戦没者の遺骨を40年にわたり掘り出してきた具志堅隆松さんの活動を追ったドキュメンタリー「骨を掘る男」が、6月15日(土)より東京のポレポレ東中野、大阪の第七藝術劇場、京都の京都シネマで、6月22日(土)より沖縄の桜坂劇場ほかで公開。本予告編と著名人コメントが到着した。     激戦地だった南部を中心に、今も3000柱近くの遺骨が眠るとされる沖縄本島。これまでにおよそ400柱を掘り出した具志堅さんは、自らを“ガマフヤー”と呼ぶ。ガマは沖縄の自然壕、フヤーは掘る人を意味する。 砕けて散乱した骨、茶碗のかけら、手榴弾の破片、火炎放射の跡……。見つけた断片から、兵士か民間人か、どのような最期を遂げたかを推察し、思いを馳せ、弔う。掘ってみるまで埋まっているかはわからない。それでも掘り続ける行為を具志堅さんは、観念的な慰霊ではなく《行動的慰霊》だと言う。 監督は沖縄出身でこれが劇場長編デビュー作となる奥間勝也。自身が生まれるはるか以前に沖縄戦で亡くなった大叔母には、会ったことがない。具志堅さんの遺骨収集に同行し、沖縄戦の膨大なアーカイブ映像に目を凝らし、大叔母の生きた痕跡を探す奥間は、繰り返し自問する。「出会ったことのない人の死を悼むことはできるのか?」。──沖縄の歴史と今を見つめた注目作だ。   https://www.youtube.com/watch?v=Jf4tukjNYvk   〈コメント〉 具志堅さんは、湿った土の中から 残された遺骨を、遺留品を、素手で掘り出してゆく この人は兵隊、この人はおじいさん こっちはお母さんで、こっちは幼い子ども 土色に染まった骨のかけらをくっつけるようにして ひとりひとりの輪郭を浮かび上がらせてゆく そして、これは、わたしの想い及ばない人のために 名前も遺骨も残せなかった人たちのこともまた 同じように悼む ──瀬尾夏美(アーティスト、詩人) 具志堅隆松さんという稀有な人物を導き手に、「失われた時」を探求する記念すべき傑作。遺骨と遺影をめぐる深い思索の末、まだ映像にどんな力が残されているかが触知される。本作を見た後は、沖縄の大地の見え方が決定的に変わってしまうだろう。 ──三浦哲哉(映画研究者) ベルが鳴り、暗転した瞬間、劇場がガマになる。あの湿気を含んだ土の匂い。汗ばむ澱んだ空気。ひんやりした地面の感触。掬い上げられる日を待ち焦がれていた死者たちの時間が,スクリーンから沁み出してくる。 「ああ、ようやく見つけてくれましたね」 「ここに娘も居るんです。どうぞ名前を呼んでやってください」 具志堅さんのアンテナに同期し、観客も聞こえないはずの声を聞き、見えないはずのものを共に凝視する体験。これは映画館でしか起きない魔法だと思う。 ──三上智恵(映画監督、ジャーナリスト) ガマに埋もれたままの骨は「国」に見捨てられて、80年近く地中深く眠る。その骨を40年以上堀り続ける。その「行動的慰霊」行為を5年間撮り続ける。まだ骨が埋もれている土は、米軍新基地建設の埋立工事に使われる。 過去・現在・未来の多層な時間も「埋め込まれ」たこの映画は、だから、「埋められて」見えない骨と時間の意味を問う。 ──太田昌国(民族問題研究家) 砂利とも人間ともつかない土をあてもなく掘り続ける、終わりなき追悼の作業。 暗闇の中、ささやくように骨に語りかけながら冷たい沈黙をすくい上げるガマフヤーの姿に畏怖の念を抱いた。 生きても死しても踏みつけられるのが弱者の定めなのか。そんな条理が認められていいはずない。 ──キニマンス塚本ニキ(翻訳者・ラジオパーソナリティ) どのカットのどのディテイルも、どの言葉も、どの編集の機微も、すべてがゆるがせにできない 尊厳をたたえている。たしきてぃくみそーれー。助けてください。シーンを追う私の眼は、洞窟 の中のガマフヤーのそれになる。死者とともにあるのでなければ、私たちは品位を保ちえないの だ。冒頭からエンドロールまで、涙が流れ止まない。こんなドキュメンタリーを、私は知らな い。 ──池田香代子(翻訳家) 沖縄戦での遺骨混じりの土砂を海に投げ入れてまでして、巨大な軍事基地をつくろうとしている 〈奴ら〉がいる。 その軍事基地が再び戦死者の遺骨を生み出す。民間人、軍人を問わず。戦死者の遺骨の無限再生 産。 言っておくが、他のどの土地の土砂を使おうとも、戦死者を生み出すことには変わりはない。 ガマフヤーの具志堅さんの渾身の手作業は、着実に〈奴ら〉の足元を突き崩している。 ──金平茂紀(ジャーナリスト)   奥間勝也監督メッセージ 具志堅さんはひとりで黙々と土を掘っている。最初はそう思っていた。しかし、どうやらそれは違ったようだ。具志堅さんは、まるで自分が誰かに見られているような感じで掘っていることに気づいた。 沖縄で遺骨収集を続けていれば、何回かに一回は遺骨が出てくる。掘り出した骨を見ながら具志堅さんといくつか言葉を交わすと、やがて、無言で骨を見つめる時間がやってくる。しかし骨は何も語ってはくれない。見続けていると、見ている私たちを骨が見返してくるように感じるときがある。「あぁ、これか」と思った。 だから具志堅さんは自分がとるべき行動をとり続けるのだし、私はこの映画を作りきったのだろう。どうかあなたにも見てほしい。     「骨を掘る男」 撮影・編集・監督:奥間勝也 整音:川上拓也 カラリスト:田巻源太 音楽:吉濱翔 共同製作:ムーリンプロダクション、Dynamo Production 製作:カムトト 配給:東風 2024/日本・フランス/115分/5.1ch/DCP/ドキュメンタリー ©Okuma Katsuya, Moolin Production, Dynamo Production 公式サイト:https://closetothebone.jp/
  •   公開30周年を迎えたディズニーの名作アニメーション映画「ライオン・キング」(1994)。その主人公だったシンバの父であるムファサ王の若き日にスポットを当てた「ライオン・キング:ムファサ」が、12月20日(金)より全国公開される。ポスターと特報映像が到着した。     両親を亡くしてひとりぼっちの幼いムファサは、王家の血を引く思いやりに満ちたライオンのタカ(後のスカー。「ライオン・キング」ではムファサとシンバを罠にはめる)と出会う。運命を模索する両者は、敵襲をかわしながら約束の地を目指すアフリカ大陸横断の冒険を展開。その果てに、驚きの真実に直面する──。 監督は「ムーンライト」(2016)のバリー・ジェンキンス。ボイスキャストはムファサ役に『地下鉄道~自由への旅路~』(2021)のアーロン・ピエール、タカ役に「シラノ」(2021)のケルヴィン・ハリソン・Jr.、後にムファサの妻およびシンバの母となるサラビ役に『ナチ・ハンターズ』(2020〜)のティファニー・ブーンを抜擢。 そして、ムファサとタカを追い詰めるライオンのキロス役をマッツ・ミケルセンが務める。大阪コミコンで来日していたマッツは「日本の皆様こんにちは、マッツ・ミケルセンです。もっとも愛されたディズニー映画の最新作『ライオン・キング:ムファサ』が12月に公開されます。本作でムファサを追い詰める恐ろしいライオン、キロスの声を演じました。そして本日は嬉しいサプライズがございます。日本の皆様へ本作の最初の特報をお届けします。是非、お楽しみください。ミテネ! 12月に皆様にお会いできるのを楽しみにしています」とコメントしている。 さらに、“超実写版”「ライオン・キング」(2019)に続いてプンバァ役をセス・ローゲン、シンバ役をドナルド・グローヴァー、ナラ役を歌姫ビヨンセことビヨンセ・ノウルズ=カーターが担当。シンバとナラの娘であるキアラ役を、ビヨンセの娘であるブルー・アイビー・カーターが務めるのも注目だ。 音楽を手掛けるのは、「モアナと伝説の海」(2017)や実写版「リトル・マーメイド」(2023)に携わったリン=マニュエル・ミランダ。「『ライオン・キング』には、世界屈指の偉大なソングライターたちによる驚異的な音楽のレガシーがあるので、今回その一員になれたことは私にとって恐れ多いと同時に誇りです。ムファサの物語に命を吹き込むためバリー・ジェンキンスと仕事をするのはとても楽しいですし、観客がこの映画を映画館で体験できる日が待ち切れません」と喜びを語っている。 仲睦まじかったムファサとタカは、なぜ別の道を歩んだのか。王家の血を引くタカではなく、なぜ孤児のムファサが王となったのか。サラビを絡めてどんなドラマが巻き起こるのか。“始まりの物語”に期待したい。   https://www.youtube.com/watch?v=OQNiNn9E0uE   「ライオン・キング:ムファサ」 監督:バリー・ジェンキンス 声:アーロン・ピエール、ケルヴィン・ハリソン・Jr.、ティファニー・ブーン、ドナルド・グローヴァー、ビヨンセ、マッツ・ミケルセン、ブルー・アイビー・カーター 原題:Mufasa: The Lion King 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン © 2024 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
  • 中国発のスタイリッシュなリーガルドラマ『マリアージュ・ブラン~嘘つき弁護士の愛の法則〜』のDVD-BOX3が2024年5月8日にリリースされた。本作は『SUITS/スーツ』『グッド・ワイフ』のようにセレブをクライアントにする弁護士を主人公にして現代の中国社会を切り取ったキャッチーな作品。結婚や仕事に希望が持てないと感じる若い世代が増え少子化傾向にあるのは中国社会も同じ。今のアラサー男女はどんな生き方を理想的だと捉えているのか。ラブコメタッチのお仕事ドラマにリアルな社会的テーマを描きこんで国内外で大ヒットした話題作をひも解いていこう。   やり手の女性弁護士と元エリート男性が恋に落ちるまで ドラマの舞台は近代的な高層ビルが建ち並びネオンが煌びやかな夜景を演出する一方、歴史ある西洋建築がレトロなおしゃれさを醸し出す大都市・上海。ハイブランドファッションで身を固めた34歳のヒロイン・秦施は、財閥やセレブをクライアントにする大手法律事務所の離婚弁護士だ。その事務所の代表を務める夫婦が開いた結婚アニバーサリー・パーティーには華やかな正装の人々が集まり、パートナー弁護士になる野心を抱く秦施も営業活動に余念がない。ところが、そんな彼女に想定外のハプニングが起こる。秦施がまだ誰にも紹介していない写真だけの夫、陽華が会場に現れたのだ。 実は秦施は独身なのに既婚のふりをして現在の事務所に就職し、夫も子供も海外にいるという設定でデスクにはネットで見つけた赤の他人の陽華の写真を合成したニセの夫婦写真を飾っていた。その嘘はこの2年間バレずにいたが、本物の陽華が偶然現れたことで秦施は窮地に。突然、陽華にキスしてその場をうまく取り繕った秦施は、陽華にこっそり事情を白状する。もちろん彼から“離婚”の公表を要求されるが、なんとか3日待ってもらう合意を取り付ける。 一方、28歳で実家に引きこもる独身の陽華がパーティー会場にやってきたのは、母親に押し付けられたお見合いのためだった。結局、お見合いをすっぽかしてしまった彼は翌日、母親を騙すためにSNSで“レンタル彼女”を募集する。すると、それに応じて待ち合わせ場所にやってきたのは秦施だった……。   楽しいラブコメ&現代人の生き方を問うリーガルドラマ 本作の主人公・秦施と陽華は現代中国のアラサー世代を象徴したキャラクターだ。秦施が既婚者と偽っているのは、独身女性は結婚や出産をするかもしれない不確定要素があることを理由に敬遠されてしまい、出世が望めないと恩師から説得されたため。もちろん、職場に嘘をつくことには大きな迷いと葛藤があったが、今では仕事で成功するために必要な代償だと割り切っている。一方、陽華は優秀な成績で一流大学を卒業して金融マンとして働いていたがある出来事から退職。エリートたちの出世競争からドロップアウトしてほどほどの収入で自由に生きることを選んだ、近年中国で増えているという“寝そべり族”だ。そんな自慢の息子の凋落に焦りを隠せない母親は結婚さえすれば社会復帰してくれるはずだと考え次々とお見合いをセッティングするが、それにウンザリした陽華は自分の自由を守るため親に嘘をつくことにする。 こうして物語は、利害関係が一致した秦施と陽華がカップルのふりをして同居生活を送るという王道のラブコメ展開へ。ただし、仕事に忙しい秦施に代わって家にいる陽華が“お嫁くん”として家事を担当することになるのが今時の設定で、2人がいつしか本当の恋に落ちていくロマンスが繰り広げられることになる。 なお、このカップルが価値観の違いで喧嘩したり理不尽な社会に対する不満を共有したりする姿は、日本人の私たちにとっても頷けるポイントが多く、誤解やすれ違いを重ねながらも互いにいい影響を与え合って切磋琢磨していく彼らに共感できるはず。さらに、弁護士として口八丁手八丁で生き抜いてきた秦施が女性として真摯にセクハラ案件に立ち向かうことで新たな気づきを得たり、陽華が逃げていた過去の問題と向き合うことで自分の生き方を見つめ直したりする成長ストーリーも見応え十分。現代人の生き方を問う人間ドラマをじっくりと味わうことができる。   トップ女優&若手スター共演で全世界ランキング1位 本作は中国の騰訊視頻(Tencent Video)で配信されると各ドラマランキングで1位をマーク。騰訊視頻の海外プラットフォームであるWeTVではアメリカ、オーストラリアほかで1位にランクイン、全世界ランキングでも月間1位に輝く大きな反響があった。 秦施役を演じたのは、映画「見えない目撃者」やドラマ『永遠の桃花~三生三世~』など多くの作品で知られるヤン・ミー。中国最大のSNSである微博(Weibo)のフォロワー数が1億1000万人を超える彼女はプロデューサーとしても活躍する才女だけに、バリキャリ女性役を嫌味なく生き生きと演じて作品に説得力を与えている。その相手役を務めた陽華役のシュー・カイは『瓔珞〜紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃〜』で日本でも多くのファンを掴んだ若手俳優。共演相手を選ぶ目利き力にも定評があるヤン・ミーのお眼鏡にかなっただけあって、こじらせているが憎めない男性を軽やかな魅力で体現している。 このように示唆に富んだ内容で国内外でヒットした『マリアージュ・ブラン~嘘つき弁護士の愛の法則〜』は、現代の中国社会のリアルと第一線の中国ドラマのクオリティを知ることができる1作。中国の現代ドラマには馴染みがないという人にもぜひ鑑賞をおすすめしたい。   文=小酒真由子 制作=キネマ旬報社 https://www.youtube.com/watch?v=LmdVCT7m-c8 「マリアージュ・ブラン~嘘つき弁護士の愛の法則~」 ●DVD-BOX3/Blu-ray BOX3 5月8日発売(レンタル同時リリース) DVD-BOX3/Blu-ray BOX3の詳細情報はこちら ★封入特典★ ・ブックレット(12P) ※DVD-BOX:全3BOX/各16,500円(税込) 、Blu-ray BOX:全3BOX/各19,800円(税込) ●2022年/中国/全40話 ●監督:リン・イエン(林妍) ●出演:ヤン・ミー(楊冪)、シュー・カイ(許凱)、タン・ジンメイ(湯晶媚)、リー・ザーフォン(李澤鋒)、リー・シャオフォン(李暁峰)、ワン・ゴンリャン(王宮良)、リウ・リン(劉琳)、ワン・ズーシュエン(王子璇)ほか ●発売・販売元:ポニーキャニオン © JOYING MEDIA 2022  
  •   「猿の惑星」の新サーガ第1章として、猿が人類を支配する300年後の世界を描いた「猿の惑星/キングダム」が、5月10日(金)より全国公開。全11バージョンの上映形式[2D(字幕・吹替)/IMAX(2D字幕)/ドルビーアトモス(2D字幕)/ドルビーシネマ(2D字幕)/4D(2D字幕、2D吹替)/スクリーンX(字幕・吹替)/ULTRA 4DX(字幕・吹替)]が決定し、4種のラージフォーマット版ポスターが解禁された。           ウェス・ボール監督は「本作の世界には心を揺さぶられます。実際にこの世界に行って、住んでみたいと思うような美しさがあり、同時に哀愁もあります。なぜなら、ここが人間の過ちが生んだ世界だからです。この美しい緑の水面下にはクールなコンセプトが隠れています」と語る。 すべてを掌握しようとする独裁者プロキシマス・シーザー、そして反旗を翻した若き猿のノアと人間の女性ノヴァ。〈猿〉vs〈猿&人間〉という新たな衝突の先に待つ、驚きの真実とは?   https://www.youtube.com/watch?v=VkOC2qamTVk   Story 今から300年後、地球の支配者となった猿たちは帝国〈キングダム〉を築こうとし、一方で人類は退化して野生動物のようになっていた。 そんな中で若き猿のノアが出会ったのは、人間の女性ノヴァ。彼女は人間の中で“誰よりも賢い”とされ、猿たちに狙われていた。 猿と人間の共存は不可能なのか、誰が生き残るのか──。   ©2024 20th Century Studios. All Rights Reserved. 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ▶︎ 猿が支配する世界で新たな衝突が勃発。シリーズ新章「猿の惑星/キングダム」
  • 太平洋戦争下の広島県呉市に慎ましく生きる人々を描いた名作漫画『この世界の片隅に』。評判を呼んだアニメ映画や実写ドラマに続き、このたびミュージカルとなる。5月9日(木)の日生劇場での開幕を前に、主人公の浦野すずをダブルキャストで演じる昆夏美と大原櫻子、音楽を手掛けたアンジェラ・アキ、原作者のこうの史代が稽古場で対面。作品を語り合った。   [caption id="attachment_37838" align="aligncenter" width="850"] 左から大原櫻子、こうの史代、アンジェラ・アキ、昆夏美。それぞれ手にしているのは原作コミック【新装版】上巻、CD「アンジェラ・アキ sings『この世界の片隅に』」、ミュージカル台本、原作コミック【新装版】下巻[/caption]   大原 今日はお忙しいなか、稽古場までいらしていただきありがとうございます。 昆 お会いできて本当に嬉しいです。緊張していて、うまくお話できるか分かりませんが(笑)。 こうの いえいえ、私こそ嬉しいです。お二人とも、キラキラキラキラされていて。 アンジェラ そうなんですよ。それに二人とも、もうすずさんそのもの。今日は昆ちゃんの稽古を見ていただきますが、どちらも魅力的なので、本番はぜひ両方見ていただきたいですね。 ●原作者に聞く「すず」誕生秘話 昆 私が最初に原作を読んだ時に心打たれたのは、戦争を扱っていながら、常に温かい空気が流れているところでした。「戦争はいけません!」と声高に訴えるのではなく、今の私たちとも変わらない“人の心”に焦点が当たっていて、だからこそ、すずさんの喪失感がより迫ってきたのだと思います。その後も読む度に色々な発見があって、今、特に気になっているのはすずさんの表情。分かりやすく笑ったり怒ったりしている時もあれば、もっと奥深い表情をしている時もあることに気付いて、どう自分の中に落とし込んだらいいかを考えながらお稽古しています。 こうの 確かに、そこは演じる方の解釈によってくるところですよね。すずの個性に昆さんと大原さんの個性が重なった時にどうなるのか、すごく楽しみです。 大原 すずちゃんの個性というところでぜひお聞きしたいのですが、主人公を「ボーっとした」キャラクターに設定したのはどうしてなんですか? こうの そのほうが、この時代と場所に馴染みのない読者でも、物語に入り込みやすいと思ったんです。主人公が最初から呉でチャキチャキ頑張っている人だと、会話の中で状況を説明する隙がないですよね。でもよそから来たボーっとした人が主人公なら、主人公が周りの人たちに色々と質問をして、それに答える形で状況の説明ができるんです。 アンジェラ ああ、なるほど。私もそこはぜひお聞きしたかったのですが、すごくしっくり来るお答えです。 ●ノンフィクションのようなリアリティ アンジェラ すずさんや周りのキャラクターに、モデルはいるんですか? こうの 周作の職業だけは私の親戚をモデルにしていますが、あとは全部創作ですね。 アンジェラ そうなんですね! 初めて原作を読んだ時、私にはまるでノンフィクションのように感じられて、先生ご自身やご家族の体験談なのかと思ったほどでした。 大原 分かります、それくらいみんなリアルなんですよね。私はすずとリンさんの関係性にも惹かれているのですが、リンさんはどんな思いから生まれたキャラクターなのでしょうか? こうの すずに家族とはまた違う、同世代の友達との世界を作ることで、もうひとつの“世界の片隅”を表現したかったというのがひとつ。それから、当時の呉には実際に遊郭があったので、そういう過酷な境遇の人たちをいなかったことにはできない、というのもありました。 大原 ありがとうございます。やはり史実に基づいているからリアルなのですね。 昆 少し話が逸れてしまうのですが、すずもリンも、元素名から名前が取られているんですよね。調べてみたら全員そうで鳥肌が立ったのですが、それはなぜなんですか? こうの キャラクターの名前って、自分の思いつきだと似通ってしまうから、系統立てて考えることが多いんです。最初は呉の地名にしようかと思ったのですが、呉には硬い地名が多いんですね。悩んでいた時、たまたま近くに周期表があったので、これを使おうと(笑)。たくさんある元素の中で「すず」を主人公にしたことには、私が飼っていたインコの「すずしろ」が関係しています。ある時いなくなってしまったのですが、どこかでずっと元気にしていてほしくて、新天地で頑張る主人公にその思いを込めたんです。 昆 そんな大切な思いが込められていたんですね! お聞きできて良かったです。 アンジェラ 本当に。貴重なお話ばかりで、なんだか得した気分です(笑)。 ●オリジナル作品ならではの苦労と喜び こうの 私はディズニーのミュージカルアニメが大好きなので、自分の漫画がミュージカルになるなんて夢のようで、アンジェラさんの歌われたデモテープも感動しながら聞かせていただきました。ミュージカルが出来上がっていく過程を垣間見られるのも刺激的で、これから見学できるのも本当に楽しみなんですが、お稽古で特に苦労されているのはどんなことですか? アンジェラ 今回が初演のオリジナル作品なので、最終形が見えていない難しさはやはりありますね。でもだからこそ、キャストの皆さんと一緒に作れている感覚があって楽しいです。特にすずの二人は、「すずはこういう言い方はしないと思う」といったフィードバックをくれる頼もしい存在で、それを受けて歌詞を変えたりもしているんです。私はこの作品が長く続いていくことを願っているのですが、最初のすずがこの二人で本当に良かったです。 大原 そんな、こちらこそ。アンジーさんが音楽や歌詞を変える相談もさせてくださるので、オリジナルならではの生みの苦しみはありますが、私も楽しくお稽古させていただいています。 昆 アンジェラさんは、強い思いを持って楽曲を作られたはずなのに、私たちの思いを汲んで柔軟に変更してくださるんです。こうの先生の生み出された温かい原作のもと、温かい人たちが集まって、温かい作品を作っている感じがすごくある稽古場です。 こうの 素敵ですね。漫画は基本的にひとりで作るもので、編集さんたちとの縦の関わりはありますが、ミュージカルのようにたくさんの人がいっぺんに、横に関わることがないんです。でも漫画にも、見えていないだけで本当はたくさんの方が関わっていることを、こうしてミュージカルになったことで実感できた気がします。 アンジェラ ミュージカルは、総合芸術なんですよね。私も自分のアルバムを作る時は基本的にひとりですが、今回はみんなとキャッチボールをしながら作っているから、大変ではあっても決して孤独ではない。それがミュージカルの醍醐味なのかもしれません。 昆 もうひとつ苦労しているのは、やはり原作の雰囲気を損なわないようにすること。原作ではどの話にも必ずオチがあって、そこも私の大好きなところなのですが、ミュージカルは2時間半ほどにまとまっているので、クスっとできるエピソードのすべては入っていないんですね。削られている分、温かい雰囲気をベースに置いておく、ということを意識しています。 こうの ああ、なるほど。そこはミュージカルならではの見どころになりそうですね。 ●ミュージカルの見どころ聞きどころ 大原 私から先生に見どころを紹介させていただくなら、すずと周作のデートのシーン。特に《醒めない夢》という楽曲が、二人の可愛らしさがギュっと詰まっていてすごく素敵なんです。演じていて楽しいですし、あのキラッとした空気感を先生にもぜひ味わっていただきたいです。 昆 私は、二度出てくる《この世界のあちこちに》に注目していただけたら嬉しいです。これからどんな物語が広がっていくのか、お客様がまだ知らない状態で一度歌われた曲が、すずさんが自分の在り方を見つけた時に再び歌われる、という構成が大好きなんです。二度目に歌う時には、涙をこらえるのに必死になってしまう楽曲です。 大原 聞くだけで涙が止まらなくなる楽曲が、本当にたくさんあるよね。アンジーさんおひとりから、どうしてこんなにも色々なメロディーや言葉が生まれるのだろうと感動してしまいます。どれも大好きなのですが、特に聞きどころだと思うのは、径子さんの歌う《自由の色》。すずの生き方や考え方が変わるきっかけの曲ですし、お客様一人ひとりが自分の《自由の色》を発見し、救われたような気持ちになれるのではないかと思います。 こうの 《自由の色》は、私もアンジェラさんのデモで聞いた時からジーンと来ていました。 アンジェラ ありがとうございます。今日はキャストの声で聞けますので、ぜひ楽しみになさっていてください。私が注目していただきたいのは、機銃掃射のシーンです。 こうの 漫画では顔のアップで進んでいくシーンだから、どう演じるんだろうと思っていました。 大原 そうですよね。漫画と同じようにはできない分、ミュージカルならではの表現になっていると思います。 アンジェラ 加えて、二人の演技がとにかく素晴らしいんですよ。このシーンあたりから、すずの感情がクレッシェンドしていき、最後には優しくデクレッシェンドしていくのですが、そのすべてが見どころですね。すずの熱量を表現するのは本当に大変だと思うのですが、二人とももう、「圧倒的」「ヤバい」といった言葉しか出ないくらいすごいパワーなんです(笑)。今日の通し稽古は昆ちゃんの回の予定ですが、実際に先生に見ていただけるのが私も楽しみです。 昆 あの、お手柔らかにお願いします(笑)。 こうの 「ハイやり直し!」なんて言いませんから安心してください(笑)。漫画が私の子どもなら、映画化や舞台化作品は孫のようなもの。私には可愛いばかりなんですよ。今日お話して、お二人ともそれぞれにすずだと感じましたので、お稽古も本番も本当に楽しみにしています。     ※通し稽古を見たこうのは「お疲れ様でした。素晴らしい舞台でした。ちょっとジーンときました。ちょっとというか、大分ジーンときました。すごくすずが可愛くて、十数年前にこれを書いていた私に『グッジョブ!』と言いたいです(笑)本当に有難うございました。感動しました」と伝え、カンパニー全員を勇気づけた。   【クリエイティブ&キャスト】 原作:こうの史代『この世界の片隅に』(ゼノンコミックス/コアミックス) 音楽:アンジェラ・アキ 脚本・演出:上田一豪 浦野すず:昆夏美/大原櫻子(Wキャスト) 北條周作:海宝直人/村井良大(Wキャスト) 白木リン:平野綾/桜井玲香(Wキャスト) 水原哲:小野塚勇人/小林唯(Wキャスト) 浦野すみ:小向なる 黒村径子:音月桂 白木美貴子、川口竜也、加藤潤一 飯野めぐみ、家塚敦子、伽藍琳、小林遼介、鈴木結加里、高瀬雄史、丹宗立峰 中山昇、般若愛実、東倫太朗、舩山智香子、古川隼大、麦嶋真帆 桑原広佳、澤田杏菜、嶋瀬晴 大村つばき、鞆琉那、増田梨沙 【東京公演】 5月9日(木)初日〜5月30日(木)千穐楽 日生劇場 【全国ツアー公演】 6月北海道公演 札幌文化芸術劇場 hitaru 6月岩手公演 トーサイクラシックホール岩手大ホール(岩手県民会館) 6月新潟公演 新潟県民会館大ホール 6月愛知公演 御園座 7月長野公演 まつもと市民芸術館 7月茨城公演 水戸市民会館グロービスホール 7月大阪公演 SkyシアターMBS 7月広島公演 呉信用金庫ホール ©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝