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週末映画ランキングMOVIE RANKING

専門家レビューREVIEW

石門

公開: 2025年2月28日
  • 文筆家  和泉萌香

    (文字で書くのも悍ましいが)生殖ビジネスという世界的な問題を中心におきながらも、距離を保って見つめることで浮き上がってくるのはまだ自分自身も定まらない若い女性の個人的な肖像画だ。淡々としたカメラに「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」(75)を想起。職場や街中での視線、家、無責任な恋人、女の体であり、そしてどこまでも客体化されるということ、終わらない「生きづらさ」を長い時間をかけ窮屈に体感させる。

  • フランス文学者  谷昌親

    思いがけず妊娠してしまった女性の姿を、妊娠期間に相当する10カ月かけて撮影した作品だ。しかも、ヒロイン役のヤオ・ホングイは、前の2作でも同じリンという人物を演じているという。トリュフォーのドワネル・シリーズがそうだったように、ヤオ・ホングイが生きてきた時間そのものの記録ともなっているわけだ。被写体との間に距離を置き、フィックスのワンショットでの撮影をとおして、人物のみならず、人物を取り巻く環境も押し流していく時間が、いやおうなく刻印されていく。

  • 映画評論家  吉田広明

    生まれてくる子を本当に引き取る気があるようにまったく見えない相手を信用していいのか終始疑問が去らないし、淡々と描くことで主人公の状況を体感させようとの意図だろうが、長い割には画に力がないショットのせいもあって、彼らを信じて生むまでの十カ月、宙づりの時間の不安が伝わらない。詮無い比較だが、ダルデンヌ兄弟なら半分の時間でもっと刺さる映画を作っていただろう。中国の子ども事情は知らないが、中国社会を象徴的に示す普遍性にまで達しているようにも思えない。

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TATAMI

公開: 2025年2月28日
  • 映画監督  清原惟

    イラン政府から受けた脅しに立ち向かう柔道の選手とコーチの物語。初めは脅しに屈して政府の言いなりだったコーチの葛藤が、「聖なるイチジクの種」の母と重なり印象深い。しかし、この作品にはパレスチナ人に対して深刻な人権侵害・虐殺を行っているイスラエルの資本が入っており、イラン・イスラム政府を徹底して批判的に描くことで(イラン政府の人権侵害はもちろん深刻だが)、直接ではないがイスラエルの行いを正当化するようにも見えてしまい、観ていてしんどいものがあった。

  • 編集者、映画批評家  高崎俊夫

    女子柔道世界選手権を舞台に、その裏面でうごめく国家間の熾烈な闘いを炙り出す作劇がユニークである。イスラエル選手との対戦を回避するため、イラン政府は選手と監督に対して棄権を強要するのだが、あらゆる卑劣な手段が講じられ、そのおぞましさには?然となる。試合中に満身創痍となったイラン選手の顔面から滴り落ちる血をとらえたカットが鮮烈だ。畳という聖なる磁場がふいに深い象徴性を帯びるのである。この問題作がイスラエルとイラン出身の共同監督であるのが救いではある。

  • リモートワーカー型物書き  キシオカタカシ

    祖国が抱える問題を亡命者が告発した、当事者からの必死の叫び――。ちょうど「聖なるイチジクの種」と重なる主題を持つ紛れもない力作であり、“ザール・アミール監督作品”として観ると一本筋が通っている。しかし“ガイ・ナッティヴ監督作品”として観れば、そもそも物語の前提となった問題における自国の責任に一切触れていないため、「相手を断罪する」一方的にも見える姿勢に矛盾を感じてしまう。鑑賞後にナッティヴ監督のスタンスを探るため海外インタビューを漁ることとなった。

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知らないカノジョ

公開: 2025年2月28日
  • 文筆家  和泉萌香

    この世界、一つの現実ではよりによってパートナーと自分、どちらか一人の成功しか存在せず、自分の存在が相手の幸福に作用するというなかなかにシビアな設定ながら、中島健人、miletふたりの好演で爽やかなラブストーリーとなっている。とはいえ、パラレルワールドでの彼の奮闘っぷりもファンタジー内のファンタジー、といったふうでとんとん拍子に出来すぎかつ、最後もあっけなくハッピーエンドで、「もしも」という言葉のしみじみとした奥行きは希薄。

  • フランス文学者  谷昌親

    ラブストーリーに音楽、そしてファンタジー的要素まで加われば、三木孝浩監督の独壇場となる。実際、それこそさまざまなファクターをそつなくまとめあげる手腕はみごとなものだ。しかし、ファンタジーだとはいえ、「ここで生きるしかない」と作中人物に言わせておきながら、結局はもうひとつの世界への未練を断ち切らせないのであれば、それまでの人物たちの営為はどうなってしまうのか。ハッピーエンドになること自体はかまわないが、そこに至る過程をこそ映画は描くべきではないのか。

  • 映画評論家  吉田広明

    パラレルワールドものだが、どちらの世界にあっても上手くいっている自分を求める主人公の身勝手さが目立って見える。最終的に自分の成功を諦めることで彼女の成功の持続を望むのも、自己犠牲のつもりなのが苛立たしい。彼の書く小説(ラノベの戦闘ものだ)と二人の現実がうまく繋がっているかに見えないし、二つ目の世界におけるステータスの差が大きすぎ、それを繋げるはずの祖母が挿話に留まるなど、構成が無理筋で強引に見える。よって二人とも成功者のエンディングも見ていて白々しい。

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スケジュールSCHEDULE

映画公開スケジュール

2025年3月14日 公開予定

春の香り

悪性脳腫瘍と闘いながら漫画家を目指し18歳で生涯を閉じた坂野春香さんの両親による記録『春の香り 脳腫瘍と闘い、十八歳で逝ってしまった最愛の娘へ』を基にフィクションで描く青春ストーリー。小学生の時に患った脳腫瘍のために普通の学校生活がおくれないハルカは、転入した通信制の高校で初めての恋をするが、脳腫瘍が再発し……。監督は、「メイド・イン・ヘヴン」の丹野雅仁。主人公のハルカを「しまねこ」の美咲姫、ハルカと運命的な出会いをするタクミをボーイズグループIMP.の佐藤新が演じ、フリーアナウンサーの笠井信輔が特別出演。坂野春香さんの生まれ育った愛知県江南市にて撮影。2025年3月7日より東海3県先行ロードショー、3月14日全国順次公開。

STEP OUT にーにーのニライカナイ

ドラマ『TRICK』シリーズなどでタッグを組んできた堤幸彦監督と仲間由紀恵の10年ぶりの再タッグとなるドラマ。沖縄で母、妹と暮らす踊は、ダンススクールのリサに憧れてダンスを始める。やがてリサとペアを組むようになると、ある男が訪ねてきて……。出演は、オーディションで選ばれたSoul、沖縄アクターズスクール所属の又吉伶音。共同監督は、「ミラクルシティコザ」の平一紘。

お嬢と番犬くん

テレビアニメ化もされている同名人気コミックを実写映画化。高校生の一咲は極道一家の孫娘であることを隠し、“普通の青春と恋”をすることを決意するが、彼女の世話役で組の若頭である啓弥が、過保護すぎるが故に年齢を詐称して高校に裏口入学してきて……。出演は、「今夜、世界からこの恋が消えても」の福本莉子、「リボルバー・リリー」のジェシー、ドラマ『推しの子』の櫻井海音。監督は、「恋は光」の小林啓一。

TV放映スケジュール(映画)

2025年3月14日放送
13:40〜15:40 テレビ東京

ダイ・ハード2

20:00〜21:55 BS12 トゥエルビ

蛇鶴八拳

2025年3月15日放送
18:30〜20:54 BSジャパン

男はつらいよ 噂の寅次郎

19:00〜21:30 BS12 トゥエルビ

コナン・ザ・グレート

21:00〜22:57 BS松竹東急

ヴァイブレータ