マンティコア 怪物の映画専門家レビュー一覧

マンティコア 怪物

「マジカル・ガール」がサン・セバスチャン国際映画祭グランプリ&監督賞を受賞したカルロス・ベルムト監督作。空想の怪物を生み出すゲームデザイナーのフリアンは、パーティーで出会ったディアナに魅かれていくが、彼は原因不明のパニック発作に悩んでいた。第47回トロント国際映画祭コンテンポラリー・ワールド・シネマ部門、第55回シッチェス・カタロニア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門、第35回東京国際映画祭コンペティション部門出品作品。
  • 文筆業

    奈々村久生

    群青いろの新作「雨降って、ジ・エンド。」との相似が妙に腑に落ちる。カルロス・ベルムト監督ならではのトリッキーな作劇と抑制された語り口が効いていて、リアリズムではセンシティブになりすぎそうなところを絶妙なバランスで「表現」にスライドさせている。フィクションの矜持がうかがえるようなラストも見事。同じビターズ・エンド配給で昨年公開された「正欲」もテーマ的には同系譜に属しており、この題材は繰り返し描かれることによって、今後タブーから議論の対象になっていくと思う。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    オタク男の妄想のモンスターがAIの暴走で実体化して悪さするホラーかと思ったら、そんな昔よくあった差別的な話じゃなくて、もっと地味な、つらい恋愛譚だった。異常な(って言いかたを僕はしたくないのだが)欲望をもってしまった者はどうやって幸せになればいいのか。日本の「怪物」は結果的にポリコレの人も反ポリコレの人もそれぞれが考えねばならないことを考えざるをえない映画になったわけだが、こっちの怪物にはできれば一生考えたくなかったことまで深く考えさせられてしまった。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    本作は主人公のとある秘密を隠して物語が進む。その核心に触れないように、話はずっと本題を避けた無駄話が続く。意図はわかるが、そのギミックに付き合わされる観客はたまったものではない。ある種の性的嗜好を持つ人々は、一生その欲望を経験できずに、妄想のままで終わらせなければならない。欲望を行動に移せば犯罪となり、その対象者に大きなトラウマを与えてしまう。それは確かに哀れであるが、もう一人の重要人物もいびつな共依存の欲望の持ち主で、ラストまで気持ち悪い。

1 - 3件表示/全3件