コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話の映画専門家レビュー一覧

コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話

中絶が違法だった1960年代のアメリカで、女性の選択の権利としての人工妊娠中絶を描いた実話に基づくドラマ。妊娠によって心臓の病気が悪化したジョイは中絶を申し出るが、病院に拒否される。そんななか、違法だが安全な中絶手術を提供する団体に出会う。監督は、「キャロル」の脚本を手掛けたフィリス・ナジー。出演は、「ピッチ・パーフェクト」シリーズのエリザベス・バンクス、「エイリアン」シリーズのシガニ―・ウィーバー。ベルリン国際映画祭コンペティション部門正式出品作品。
  • 文筆業

    奈々村久生

    60年代アメリカを舞台とした物語だが、ノスタルジーとは無縁な16mm映像の等身大レトロルックは、時代劇とは思えない手触りで当時の復刻版かと錯覚してしまうほど。E・バンクスの馴染み方も素晴らしい。特に堕胎に臨む女性の心理、施術室の様子、手順の過程までつぶさに追った描写は秀逸で、数々の映画で感動的にフィーチャーされてきた出産シーンと同じように、今後も描かれていくべきだ。終盤の展開はやや飛躍して見えるが、荒唐無稽な寓話より圧倒的にエッセンシャルな一本。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    彼女はホテルの宴会場で華やかな、つまらないパーティに出ていた。ホテルのすぐ外では反ヴェトナム戦争のデモ。他人の痛みは自分の痛みではない。だが、そう感じてしまった人間を運命は逃さない。堕胎しないと生きていくことができなくなって初めて、この社会の宗教と道徳は堕胎を許さないことを知る。そうなって初めて出会える人がいる。立場が異なる者たちが同じ立場で戦うとき友情が湧く。お元気そうなシガニー・ウィーバーを見て、僕は「嬉しい、また会えた」という気もちになりました。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    1960年代、中絶が違法だった時代のアメリカで、一般の女性たちが自分の身体の権利のために、中絶手術を行う極秘の活動を繰り広げる。主演のエリザベス・バンクスは「コカイン・ベア」の監督もすれば、中流家庭の専業主婦の役もこなす、信頼のできるクリエーターだ。この団体の中心人物がシガニー・ウィーバーなのも、圧倒的な頼り甲斐しかない。良い話過ぎるきらいはあるが、この時代に戻るかもしれない切羽詰まった現状では、初歩的な問題をわかりやすく振り返る映画も必要だろう。

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