毒娘の映画専門家レビュー一覧

毒娘

「ミスミソウ」の内藤瑛亮監督が、2011年に匿名掲示板サイトで話題になったある新婚家族の出来事をモチーフにして描くホラー。萩乃は夫と娘の3人で中古の一軒家に引っ越す。ある日、外出中の萩乃に娘の萌花から、悲痛な声で助けを求める電話がかかってきて……。主人公の萩乃を「ヒメアノ~ル」の佐津川愛美が演じたほか、「シンデレラガール」の伊礼姫奈、ドラマ『ポルノグラファー』の竹財輝之助らが出演。謎の少女“ちーちゃん”のキャラクターデザインを、『惡の華』『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』など思春期の暗部や葛藤を題材にしてきた漫画家・押見修造が手がけている。
  • 文筆家

    和泉萌香

    「幸せな家族」というが、最初っから夫のモラハラ臭全開で全く幸せそうに見えないのはさておき。人間か、人ならざるものか? 警察の半端な介入描写などがあり、謎めいた少女ちーちゃんの設定と、大人たちの対応があやふやな気もするが、とことん凶暴な彼女が母と妻の座についた従順な女性と、過去の事件で傷を負った娘を「いいカンジの家庭」イメージから引き?がし、文字通り家という籠から蹴りだすさまは荒療治がすぎるが楽しんだ。はらわたをぶった斬る一大流血描写も容赦ない。

  • フランス文学者

    谷昌親

    ホラーというジャンルは、きわめて映画的と言えるかもしれない。普段なら気にもとめないシーツや壁、窓や扉が画面のなかでにわかに意味を担ってくるからだ。しかし、ホラーという枠組みは諸刃の剣ともなる。恐怖を抱かせるための表現がどうしても紋切り型となり、既視感を呼び覚ますからだ。内藤瑛亮監督が描きたかったのは、むしろ、後妻として家庭に入った萩乃と義理の娘となった萌花が、ともに抑圧から解放され、自律していく過程であったはずだが、それが背景に後退してしまう。

  • 映画評論家

    吉田広明

    毒娘が暴れまわるホラーかと思いきや(まあそうなのだが)、「家族」なるものの偽善を破壊するパンクロックみたいな映画だった。「家族ゲーム」や「逆噴射家族」を思い出した。無論アップデートはされており、「家族」の中でも強者である親にして父が、「同意」による誘導で家族の弱い成員をソフトに抑圧する様は、「家庭」が温かい居場所であるどころか監獄、また強者が弱者を搾取する構造が変えられない今の日本社会の現状を反映している。もう少し人物たちに陰影があっても良かった。

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