アイアンクローの映画専門家レビュー一覧

アイアンクロー

1980年代初頭のプロレス界にその名を轟かせたフォン・エリック・ファミリーを描く、「炎の少女チャーリー」のザック・エフロン主演の伝記ドラマ。アイアンクローを得意技とする元AWA世界ヘビー級王者フリッツの息子たちは、父の教えに従いプロレスの道に進むが……。監督は、「マーサ、あるいはマーシー・メイ」のショーン・ダーキン。長男ケビン役のザック・エフロンをはじめ、「逆転のトライアングル」のハリス・ディキンソン、ドラマ『一流シェフのファミリーレストラン』のジェレミー・アレン・ホワイトらが世界ヘビー級王者になることを宿命づけられた兄弟の栄光と悲劇を演じる。
  • 俳優

    小川あん

    家族愛=プレッシャー。この相関関係は難しい。それが結果、フォン・エリック家の悲劇のファミリー・ヒストリーとして刻まれてしまうのだ。ただ、映画を通して「悲劇」という言葉の背景にある当人しか計り知れない想いを知ることができる。後の世で兄弟が再会を果たすシーンは、緩やかなカメラワークに温かな自然光が差し込み、本筋より現実味があった。ケヴィンの結婚パーティーで「今だったら家には誰もいない」とちゃっかり抜け出そうとする長年の夫婦の愛が垣間見えるシーンが好き。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    弟がひとり減らされているなど事実とは異なる点も多いようだが、日本の80年代プロレスブームのころの人気レスラーが次々登場するだけでもオールドファンは興奮必至。ロックスターみたいに美しい4兄弟を描き分けながら快調に進行する前半には「ボヘミアン・ラプソディ」的なよさがある。一方、対戦相手を踏みつけるフリッツの表情が大写しとなるタイトルバックは、これが「父の抑圧」の物語であることを宣言しているように見えるのに、後半そのあたりが曖昧になっていくのが不思議。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    70~80年代に活躍したプロレスラーで必殺技“鉄の爪=アイアンクロー”を持つフリッツ・フォン・エリックと彼の四人の息子レスラーたちのプロレス家族の実話映画化。圧倒的な強く正しい父の下で、息子たちはプロレス道を邁進するも、心も体も蝕まれていく。映画は長男ケヴィンを軸に描かれ、彼のエディプス・コンプレックスが物語の通奏低音になっており、フィルム撮影による拡張高いルックも相まって、プロレス版「ゴッドファーザー」といった趣。しかし善悪の彼岸を垣間見せるほどの哲学的深みはない。

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