リトル・リチャード アイ・アム・エヴリシングの映画専門家レビュー一覧

リトル・リチャード アイ・アム・エヴリシング

ロックンロールの創設者のひとりであるリトル・リチャードの知られざる史実と素顔に迫るドキュメンタリー。アーカイヴ映像や本人、関係者、著名ミュージシャンによる証言映像を交えながら、差別と偏見、栄光と苦悩の狭間で闘い抜いたその魂の軌跡が明らかになる。監督は「プレシャス」の製作総指揮を務めたリサ・コルテス。
  • 映画監督

    清原惟

    恥ずかしながら、リトル・リチャードのことを何も知らなかった。自分が聴いてきた音楽たちの礎を築いた人物と知って、本当に驚いた。知らなかったことを知れるというのは、事実を基にした映画のいいところだと思う。文化の盗用、クィア、人種差別など、重要な議論につながる問題提起があって、今この題材の映画を作ることの必然性を感じる。ただし、映画としての構成、映像のあり方には少し違和感もあり、宇宙的なイメージをCGで表現するところなどは、なんだか余計に感じてしまった。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    ジョン・ウォーターズ曰く「リトル・リチャードは私のアイデンティティの一部だ。私の口髭は彼の真似、オマージュなんだ」には笑った。F・タシュリンの「女はそれを我慢できない」で主題曲を歌う彼にウォーターズや無名時代のビートルズが熱狂したのもむべなるかな。豊饒な映像フッテージを駆使して1950年代初頭、すでにクィアであることを宣言し、差別の壁を破壊し、異形でありつつロックンロールの正統なる創始者としての栄光と悲惨を丁寧に跡付けた出色のドキュメンタリーである。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    ジョージア州の公会堂で若きリトル・リチャードがシスター・ロゼッタ・サープの前で歌い、褒められ、舞い上がった彼は早く故郷を出たくなった—「輝く準備はできてたんだ」。ロックンロールの創造者にして設計者は、後続の白人のように讃えられることなく、自分はプレゼンター役。革命的でパワフル、陽気で孤独、そして黒人でクィアの彼が涙を流す。涙は涙でも喜びの涙。これくらいアーカイヴが残されていると、ほとんど“劇映画的”にドラマティックな“ドキュメンタリー”をつくれてしまう。

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