マリア 怒りの娘の映画専門家レビュー一覧

マリア 怒りの娘

ニカラグア出身の女性監督による初の長編映画。ゴミ集積場の近くで母と暮らす11歳の少女マリア。あるトラブルを解決するため、娘を施設に預け、街へと出かけた母だったが、何日経っても戻らない。母に会いたい一心で、マリアは施設を抜け出し、母を捜す旅へ出る。ニカラグア出身の女性監督、ローラ・バウマイスターによる長編デビュー作。
  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    貧困の惨状、そのなかでの(ときに争いながらの)母娘の絆、少女の怒りと成長をリアルに描きながら、現実と地続きの幻想へと唐突に横滑りしては戻ってくる魅惑的な作品世界。監督が映像の力をとことん信じて撮っていること、および、主演の少女が役柄を深く理解しているさまにまず感嘆させられる。しかもこの少女自身もまた役柄と同様、映画の進行と歩を合わせてめきめきと成長しているようなのだ。ニカラグアの自然の景観も、人間たちの運命への無関心を表現しているかのようで圧倒的。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    中米ニカラグアのゴミ集積場を舞台に、そこに生きる母と娘の物語。二人はその環境から抜け出そうとするが、娘マリアの犯した過ちがより困難な状況を巻き起こす。ニカラグア出身の女性監督による長篇作で、貧困、環境問題、女性の権利、人権など、現在のポリティカル・イシュー満載の作品。ゆえに海外映画祭で高い評価を得ているのだろうが、劇映画としては退屈の極み。内容のポリティカル・コレクトネスを映画作品の出来よりも重視する今の批評の風潮に「怒りの娘」ならぬ「怒りの観客」の気持ちになる。

  • 俳優、映画監督、プロデューサー

    杉野希妃

    冒頭、カラスが飛び交い、子供たちがたむろする広大なゴミ捨て場の引きのショットからして力強い。母親を探し求めるマリアの旅をドキュメンタリーの如くカメラは追い、芝居もカメラワークもリアリズムに徹している。母親との再会で突如マジックリアリズム的世界観が立ち現れるところでは、ラテンアメリカの監督らしい表現だなと胸が高なった。画力に頼りすぎな感はあるものの、少女の怒り、悲しみ、諦念がニカラグアへの監督の想いと重なるようで、強かな意志を感じる貴重な映像詩。

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