PLAY!  勝つとか負けるとかは、どーでもよくての映画専門家レビュー一覧

PLAY!  勝つとか負けるとかは、どーでもよくて

「のぼる小寺さん」の古厩智之監督による実話を基にした青春群像劇。不満はないが、何かが足りない。そんなどこにでもいる10代男子、達郎・翔太・亘の3人はひょんなことから、にわかチーム“アンダードッグス”を結成し、【eスポーツ】全国高校生大会に挑むことに。出演は「MOTHER マザー」の奥平大兼、「蜜蜂と遠雷」の鈴鹿央士、「零落」の山下リオ。
  • 文筆家

    和泉萌香

    今回のレビュー4作品はどれも都心部から離れた土地が舞台で、本作は徳島の港町を舞台に、自転車に乗った高校生たちが爽やかに海のそばを駆け抜ける。勝ち負けではなく、得手不得手、できるできない、自分の力ではどうにもならないことがたくさん溢れている世界に生きる少年たちが、互いには干渉しすぎることなくたった一つのことに取り組む姿の描写に加え、eスポーツ会社の大人たちが語るメッセージは、子ども時代を子どもとして過ごさせる優しさに溢れている。

  • フランス文学者

    谷昌親

    観る前は、eスポーツがテーマで映画としてどれだけ成り立つのかと不安視していたが、なかなか見ごたえのある作品になっている。青春映画で力を発揮する古厩監督の演出のたまものであることはまちがいないが、実話の映画化というこの作品で、主要な人物となる高専生3人の絶妙のバランス、そしてなによりも彼らが生活の場としている徳島の風景が魅力的だ。少年たちがそれぞれに問題を抱えながら過ごす日々が、海辺にある小さな町の風景のなかでこそ生き生きとしたものになっていく。

  • 映画評論家

    吉田広明

    優秀だがいつも一人で行動する三年生と、金髪で一見チャラ男だが心優しい二年生を中心に、「仲間」となった彼らがeスポーツに臨む。部活ものの定番ではあるが、個性がバラバラな三人がまとまってゆく過程の背後に、容易に片付かないそれぞれの家庭が抱える問題や、外国人、障害者など多様な参加者たちの描写をさりげなく挟んで世界に奥行きを与え、決して説明的にならず、しかし紋切り型の友情物語、スポーツ物語の多幸的終局を控える慎ましさが好ましい。さすがベテラン監督。

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