愛のゆくえの映画専門家レビュー一覧
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ライター、編集
岡本敦史
雪国のシビアな思春期ドラマとして始まったかと思えば、大島弓子の漫画『快速帆船』を思わせる展開になり、映画の質感が変幻していくところは面白い。少女の彷徨を幻想的に描く手つきは相米慎二っぽくもある。ただ、一つひとつのセグメントが撫でる程度で通りすぎていくので(特に後半以降)、漠然とした印象が終盤にかけて膨らみがち。監督の自伝的要素が色濃いそうだが、内省を突破する力強さも示してほしかった。主演の長澤樹のインパクトに対し、作品自体の力がもう少し届かない。
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映画評論家
北川れい子
重量感のある北海道の雪深い風景が、大都会で自ら迷子になった少女の支えになっている。自分はまだやっと片足が生えたばかりのおたまじゃくしだ、と呟くもどかしい14歳。雪国生まれの彼女が、母親の死で東京に住む父親に引きとられ、そこから逃げ出してのリアルな体験。その体験には、聖と俗、死、悪意と優しさ、アートに歴史とてんこ盛り、さらに故郷まで続く三途の川?まで登場する。いくつかパターン通りの場面もあるが、幻想をリアル化する宮嶋監督のセンスは素晴らしい。
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映画評論家
吉田伊知郎
新人監督らしい直情的でひたむきな作りには惹かれるが、類型的な設定や台詞に没入を阻害される。悪意の描写も図式的すぎる。監督自身の実体験が多く反映されているようだが、それを客観視する力があれば爆発的な傑作になっていた予感が漂う。終盤の非現実的な飛躍は魅せるものがあるだけに、そこへ至るまでの北海道の雪の冷たさや都会の孤独感の描写にこそ注力してほしかった。長澤樹の無表情は映画を象徴させる力があるだけに、もっと生かせるはず。魅力的な細部が零れ落ちている。
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