コットンテールの映画専門家レビュー一覧
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文筆業
奈々村久生
「ぐるりのこと。」の夫婦コンビふたたび。イギリス出身の監督が日本的な家族関係や精神性を再現する試みかと思いきや、物語や登場人物像そのものが監督自身を形成した実体験に深く基づいており、自分の世界観を追求することで必然的に日本的な描写も強化される。その意味で日本映画といっても遜色ない完成度には達している。同時に、リリー・フランキーが体現するある種の日本的な男性像は、当然のごとく女性を美化しすぎているが、それを破壊する木村多江の変貌が見事だった。
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ
奇妙な味わいの映画。その奇妙さが監督の持ち味か、英語で書かれたセリフを日本語に訳して日本人の俳優が演じるからなのか、日本人が演じる日本の家族を東京と英国の田舎でのロケで英国人が演出してるからなのかはわからないが、いやな奇妙さではない。万国共通〈愛する相手が本当に欲しいものを言葉にしてるのに、そのままの意味で聴きとることができない男が勝手に感じてる孤独〉の問題。しかしこの問題はなんで万国共通なんだろうな。と万国の男性が自分をかえりみて頭をかかえる。
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映画評論家
真魚八重子
この映画は“家族再生を描いた”と銘打たれているが、逆に家族間のぎくしゃくとした不仲が明瞭になる作品という印象だ。リリー・フランキーが妻を深く愛していることの表現として、彼の頑固で融通の利かない性格が前面に出される。妻の遺灰をイギリスへ撒きにいく旅も、用意周到な息子にたてついて、フランキーは路線図も読めぬ土地で猪突猛進していく。それが愛ゆえというのは独りよがりで、結局誰にとっても徒労となる。筆者の父も同類だったので、生前の振り回された疲労を思い出してしまった。
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