FEAST 狂宴の映画専門家レビュー一覧

FEAST 狂宴

「ローサは密告された」などで社会の暗部を抉ってきたフィリピンの鬼才ブリランテ・メンドーサが贈る家族のドラマ。死亡交通事故を起こした息子の身代わりに、刑務所に収監された裕福な家庭の父親。刑期を終えた彼の帰還を祝う宴の準備が進められるが……。出演は「キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-」のココ・マーティン、「ローサは密告された」のジャクリン・ホセ。
  • 映画監督

    清原惟

    交通事故で夫を亡くした女性が、事故を起こした相手の家族が経営するレストランで働く物語。交通事故で轢いてしまっただけならともかく、その場で助けずひき逃げをしてしまう男たちが、数年の服役(しかも父が肩代わり)によって許されることをハッピーエンドとして描くのは、文化の違いによる倫理観の違いはあるにしても、さすがに理解が難しいものだった。罪の意識が描かれるが、それも教会で懺悔して終わりというお気楽さで、夫をひき逃げした人の店で働く心情も全然わからない。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    メキシコ時代のブニュエルのメロドラマに似た感触がある。交通事故を起こした大富豪の加害者と貧しい被害者という非対称的な構図、さらに父親は息子の身代わりで刑務所に入り、被害者一家は加害者の大邸宅で使用人として働き、事なきを得る。罪過ではなく赦しという絵に描いた善意が瀰漫する日常の水面下で残忍な復讐劇が勃発するという予見(期待?)は裏切られる。クリシェと化してしまった因果律的なドラマツルギーへの異議申し立て、確信犯的な結末というべきか。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    交通事故で男が死に、その妻と加害側の妻の交流が始まる。「フィリピンの鬼才」のことはよく知らないのだが、無意識にカンヌ監督賞作を含む4本を見ていた。政治、セックス、暴力に絡む内容が多いが、ここでは封印されている。代わりにご馳走の映像がくどいくらい挿入されており、家族たちはセックスのごとく恍惚として食べる。キリスト教の強調があり、霊性を帯びたカメラが人の営みを覗いていく。主演のココ・マーティンも初めて知ったが、フィリピンでは「究極のスター」なのだという。不思議な映画だ。

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