ペナルティループの映画専門家レビュー一覧

ペナルティループ

「人数の街」の荒木伸二監督によるサスペンス・ミステリー。恋人の唯を素性不明の男・溝口に殺された岩森淳は自らの手で犯人に復讐することを決意。綿密な計画を立て、完璧に実行したはずだったが、岩森が翌朝目覚めると、周囲の様子に変化はなく溝口も生きていた。出演は「窓辺にて」の若葉竜也、「翔んで埼玉」の伊勢谷友介、「母性」の山下リオ、「ドライブ・マイ・カー」のジン・デヨン。
  • 文筆家

    和泉萌香

    人生という牢獄のなかでいかに生きるか?「恋はデジャ・ブ」はじめ数々の傑作があるループもの。本作は恋人を殺害した男に復讐する一日を何度も繰り返す、というものだが、復讐の方法もターゲットを殺害一択、パターンもほぼ同様、まず復讐とはいえ「殺人」をおこなう主人公の精神面はいかなるものかと注目するも、それへの掘り下げも浅薄、加害者との関係のうつろいもふやけ気味。生や死がどうにも軽く、ただの仮想世界での「ゲーム」的な空虚さが残ってしまう。

  • フランス文学者

    谷昌親

    ループものかとやや腰が引けたが、ちょっと様子が違うと気づいたころには作品世界に引き込まれていた。とはいえ、並のループものとは違うというだけなら底の浅い映画になっただろう。主人公の岩森が黄色いコンパクトカーで走る道、夜の深い闇と暗い水面の反映、工場の庭にそびえる木といったなにげない要素がこの作品に艶をもたらしている。ループが終わったあとに聞こえてくる鳥の声と雑踏の音も魅力的だ。いろいろと仕掛けがありながら隙間が残っているのもこの作品の美点。

  • 映画評論家

    吉田広明

    何度も死(私)刑を繰り返すVRという発想、主人公と犯人が意に反して仲良くなる展開は興味深いが、ただし犯人の動機、贖罪や死刑制度といった問題には踏み込まず、それはそれで選択、映画に「問題」など必要ないのかもしれない。ただ結局何も変わらなかったかのように見える結末はどうか。主人公に内的変化はあったはずで、それを体感するには彼と犯人の時間が、それだけで映画的時間でありうるほど充実すべきで(犯人の絵がそこで生きるのでは)、それ次第で結末も変わってきたはず。

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