アウシュヴィッツの生還者の映画専門家レビュー一覧

アウシュヴィッツの生還者

アウシュヴィッツ収容所から生還したユダヤ人の衝撃の実話を、バリー・レヴィンソンが映画化。ナチスの収容所から生還したユダヤ人ボクサーのハリーは、米国に渡って生き別れた恋人を探していた。やがて恋人の死を確信し、別の女性と人生を歩み始めるが……。主演のベン・フォスターは、主人公の過去と現在を表現するため、撮影中に28キロもの減量と増量を行っている。
  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    アウシュヴィッツ収容所にて賭けボクシングで勝ち続けることで生き延びたユダヤ人青年が戦後もある目的のためにボクシングを続けた実話という題材は極めて魅力的なのだが、ボクシング映画は名作の宝庫。他のボクシングものと比較すると、本作は肝心のボクシング・シーンの描写が凡庸。ユダヤ人収容所映画もこれまた傑作が多いため、本作の収容所シーンも際立つものがない。悲劇的な実話をいかに映画的にツイストするか、そのクリエイティヴな跳躍が足りない。

  • 俳優、映画監督、プロデューサー

    杉野希妃

    無数の死闘を乗り越えてホロコーストを生き延びたハリー・ハフトの実話を映画化。影、のぞき穴、花火、浴槽……至る所にトリガーが潜み、次々とフラッシュバックする過去があまりに凄惨で言葉を失う。言葉では何も伝えられないと嘆いていた彼が、息子に過去を語るラストに目頭が熱くなった。そこで終わるかと思いきや、移民を受け入れたアメリカへの賛美で締めくくられるのがもどかしい。語り継ぐことの難しさを骨身に染みて感じるからこそ、もう少し親子の対話が聞きたかった。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    強制収容所での主人公の体験は、生き延びた者の罪悪感を強烈に凝縮して表現するための創作のようにすら見えかねないけれど、恐ろしいことにこれは実話なのだ。主人公にボクシングを教えるナチ将校はもちろんのこと、すべての登場人物に厚みがある。非常にシリアスな題材である一方、B・レヴィンソンの演出は、たとえば湖畔の合宿など、何気ないシーンにしみじみとした味わいがあり、彼の80年代の代表作群がそうであったように、いいアメリカ映画を観たなあという気持ちにもさせられる。

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