アステロイド・シティの映画専門家レビュー一覧

アステロイド・シティ

ウェス・アンダーソンが豪華キャストを迎えて贈るコメディ。1955年。隕石が落下してできた巨大なクレーターが観光名所となった砂漠の街アステロイド・シティ。5人の天才児とその家族を招いて科学の祭典を開催中のこの街で、思わぬ騒動が巻き起こる。出演は「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」のジェイソン・シュワルツマン、「ブラック・ウィドウ」のスカーレット・ヨハンソン、「エルヴィス」のトム・ハンクス。
  • 文筆業

    奈々村久生

    W・アンダーソンの映画が「笑える」かどうかというと正直よくわからない。ユーモアありげなルックを伴いつつも、緻密な作為や膨大な情報量が、素直な笑いを許さないことも。ただ、今回はそのいかさまっぽさこそが圧倒的にリアルだった。コロナ禍の隔離生活を彷彿とさせる封鎖地域で、ステロタイプとして擦られすぎた宇宙人像が、人を小馬鹿にしたようにポーズさえとる事態を、荒唐無稽と言えるだろうか? 未知のウイルスで全世界がロックダウンしたのはたった3年前のことなのに?

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    かつてテレビの中と荒野のまんなかにあった古い未来の夢。遠いようで近い核実験のキノコ雲。ヌケがよすぎるウェス・アンダーソン色の青空と砂漠、シンメトリーで安定した広大な画面のまま豪勢にパンして、これCG使ってないというのがまず驚き。天才ちびっこ発明家たちが親たち(DV被害の精神状態を使って役作りをするスター女優も)が見てる前で軍から表彰されてるところにフニャっと訪れるエイリアン。皮肉で奇怪でほぼ無限な「アメリカ」のイメージ連打から見えてくる、家族の寂しさ。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    ウェスの隅々まで作りこんだ箱庭的世界は変わらず。今回は白黒のテレビ番組で映画撮影の裏側を紹介する二重構造もある。トム・ハンクスすらビル・マーレーとすげ替えて変化がない状態で、TV司会者役のブライアン・クランストンは「犬ヶ島」の声の出演に続き、渋くてウェスの箱庭に負けていない。もはやウェスはドラマもないほうが自然という結論に達したように見える。これまでの軽々しい生死は感情の抑揚への抵抗であり、もはや無理にエモーショナルな設定を入れた初期のほうが違和感すら覚える。

1 - 3件表示/全3件