ノートルダム 炎の大聖堂の映画専門家レビュー一覧

ノートルダム 炎の大聖堂

「セブンイヤーズ・イン・チベット」のジャン=ジャック・アノーが、2019年のノートルダム大聖堂火災の消火に当たった消防隊の姿を、大規模なセットを実際に炎上させ、全編IMAXカメラによる撮影とVFXの融合で描く。第48回セザール賞視覚効果部門受賞。出演は、「サガン 悲しみよ こんにちは」のサミュエル・ラバルト。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    鍵がないと部屋に入れない。どんどん炎が迫ってくる。唯一鍵のありかを知っている男もパニックになっている。このタイミングで?というぐらいヘマを繰り返す。電車を逃す。自転車もパンクしている。ようやくたどり着いて鍵を取り出すも、パニックでそのやり方が出てこない。電話しても通じない。メールしても返事がない。電源が2パーセント。意地悪なぐらいいろんなことがうまくいかなくて、ハラハラドキドキのし通しだったが、振り返ってみると誰の話だったかわからない。

  • 文筆家/俳優

    睡蓮みどり

    ノートルダムが燃えてしまったというニュースを知ったときの衝撃は、今も覚えている。パリに暮らす人々にとっては、衝撃などというものでは済ませられないものだったに違いない。緊張感が走るものの、死者がいないという結末を知っているのでどこかで安心感を覚えながら見ていた。救助隊の活躍や人間ドラマよりも何よりも燃える大聖堂の姿こそが本作の主人公である。そこには潔ささえ感じる。しかし、火災を分割画面にまでして映すのは個人的に上品ではないと思う。

  • 映画批評家、都立大助教

    須藤健太郎

    想像通りではありつつ、意表を突かれた。面白いのである。たしかに悪趣味であり、ところどころで失笑させられもするが、それも含めて挑発的と言わざるをえない。要は、ノートルダムの炎上こそフランス国民、いや全世界の人々が待望していたスペクタクルだと本作は声高に訴えているのだ。ラストで?燭の炎にクロースアップする手つきに明らかだろう。大規模な鎮火作業にも負けず、消えることのない信仰の火。しかし、これと変わらぬ小さな炎こそが大聖堂を燃え上がらせたのだから。

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