聖なる復讐者の映画専門家レビュー一覧

聖なる復讐者

「美しき野獣」のキム・ソンス監督がK-POP男性グループGOT7のパク・ジニョンと組んだサスペンス。知的障がいを持つ双子の弟ウォルが変死体で見つかり、犯人への復讐のため不良グループのメンバーを追って自ら少年院に入るが、そこでは暴力が横行しており……。パク・ジニョンは復讐心を燃やす兄イルと純真な弟ウォルの一人二役を務めた。他、ドラマ『愛の不時着』のキム・ヨンミン、「不思議の国の数学者」のキム・ドンフィらが出演。韓国の作家チュ・ウォンギュが社会の暗部に光を当てる『Antihuman Declaration(反人類宣言)』シリーズの第2作目『CHRISTMAS CAROL』(原題)を原作にしている。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    シンプルな復讐劇としてはじまった物語が、やがて思わぬ方向へと横滑りしていき、その過程で加害者と被害者の関係性が複雑化されていく。その狙いはわかるものの、プロット上もっとも重要なひねりが、ある登場人物のマイノリティ性をダシにしたものとなっている点は看過し難い。また、別の少年院からの助っ人バンチョンを除き悪役のキャラも立っておらず、たとえ終盤の転調を際立たせるための仕掛けだとしても、ひたすら陰惨な暴力が連鎖する中盤までの展開はあまりにも単調で退屈。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    映画の冒頭から漲っている殺意が良い。卑劣で不愉快な少年院の受刑者や教官の間で振るわれる暴力は、弟を殺した真の犯人を探すというストーリーの面白さをはるかに凌駕するほど、具体的で見るものに強い感情を引き起こさせる。回想という形で、弟が死んだ日の出来事を繰り返し描き出す演出はいささかくどいが、基本的には少年院という閉鎖的な空間に限定した映画の作りはコンパクトで好印象。浴室での肉弾戦もしっかり描かれており、浴室ファイトファンにはおすすめしたい。

  • 文筆業

    八幡橙

    「美しき野獣」から早くも約20年。今回も描くところ隠すところの取捨や時間配分など脚本・演出ともに多少の粗さは否めぬキム・ソンス作品。とはいえ、全篇を覆うどこか懐かしい硬質なムードや、二役を演じたパク・ジニョンの目、および全身に漲る気迫に終始引き付けられた。少年院を舞台にした「トガニ」とも言える弱き者への卑劣な暴力や貧困、社会に潜む格差をも盛り込みながら、「イースタン・プロミス」を思わせるクライマックスへ。オチが読めてもこの濃度、なかなかに得難し。

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